デザイン思考とは
近年、ビジネスの世界では「デザイン思考」注目されています。
デザイン思考とは、ビジネス上の問題を、デザインをする際に必要な考え方などを利用することで、ユーザーを分析・理解し、問題を明確にさせ、問題解決に導く考え方のことです。
どのように問題を発見するのか、発見した問題をどのように解決するのか、という問題解決までの過程を重視した、思考のテクニックのことを指します。
デザインとデザイン思考の違い
「デザイン」は「設計したことに基づき、実際に形をつくっていくこと」に対して、「デザイン思考」は「問題を解決するまでの考え方やそのプロセス」を表します。
例えば「デザイン」と聞くと、グラフィックデザインやファッションデザインなどを思い浮かべるように、広告や服飾、あるいは美術などの分野で、設計を行う、表現するなどの、創造的な行為のことを指します。
それに対して「デザイン思考」は、デザインを行う過程や考え方を、ビジネスに応用したものです。
デザイン思考を構成する要素2つ
デザイン思考は、大きく分けると「マインド」と「プロセス」の2つの要素によって構成されています。
ここからは、デザイン思考を理解する上で重要な「マインド」と「プロセス」の2つの要素について詳しく説明していきます。
デザイン思考を構成する要素1:マインド
デザイン思考を構成する要素のひとつが「マインド」です。これはデザイン思考の「考え方」を指します。
マインドはさらに「ユーザー目線」「コミュニケーション重視」「作ってみる」「1つのアイデアにこだわらない」の4つに分けられます。
ユーザー目線
デザイン思考では、常にユーザー目線で物事を考えてプロセスを進めていくのが特徴です。しかし、ユーザー目線で物事を考えると言っても、ただユーザーに何が欲しいのを聞き、言われたとおりに実行するということではありません。
ユーザー目線で考えるということは、ユーザーが自ら気づいていない問題を、ユーザーをよりも深く理解することで明確にし、解決へ導いていくことです。これがにより、ビジネスの世界では他社との差別化を図ることができます。
コミュニケーション重視
デザイン思考では、コミュニケーションが重視されます。
デザイン思考の過程においては、構成されるメンバー全員に発言権があり、そのアイデアなども平等に扱われるのが特徴です。メンバーの役職などにとらわれることなく、異なる考えをもったもの同士が積極的に意見を出していくことで、思いもよらない新しいアイデアが生まれる可能性があります。
作ってみる
デザイン思考では「まずは作ってみる」ということを大切にします。
これは、最初から完璧ものを作ろうとせず、まずは試作品・プロトタイプを作成し、実際にユーザーに触れてもらうことが重要という考え方です。実際に触れてもらうことにより、ユーザーの反応を検証し、改善をするができるようになり、これを繰り返すことによって、最終的にはユーザーが満足するものを作れるという訳です。
1つのアイデアにこだわらない
デザイン思考では、決して1つのアイデアにこだわることはしません。なぜなら、1つのアイデアにこだわることは、柔軟性を失い、世の中の流れに取り残される可能性があるからです。
移り変わるユーザーの要望を常に意識し、多くのアイデアを持つことは、ビジネスの世界では欠かすことはできません。多種多様なアイデアも、それぞれ仮説を立て検証することにより、やがて1つにまとめることができます。
デザイン思考を構成する要素2:プロセス
デザイン思考を構成するもうひとつの要素が「プロセス」です。これはデザイン思考の「行動」の部分にあたります。
プロセスはさらに「観察と共感」「問題定義」「アイデアを出す」「プロトタイピング」「検証」の5つに分けられます。
観察と共感
デザイン思考では、ユーザーを徹底的に観察し、共感することから始めます。
徹底的に観察をし、そのユーザーの考えに共感し理解することで、ユーザーの抱えている問題や要望が明らかになってきます。この時に「ユーザー目線で考える」というマインドを決して忘れないことが大切です。
問題定義
観察と共感により問題や要望が出てきた後は、問題定義を行います。これは観察によってあげられた問題をさらに掘り下げることで、本当の問題は何なのかということを定義する作業になります。
この過程で重要なのは、表面的な問題・要望ではなく、ユーザーの真のニーズを明らかにすることです。
アイデアを出す
次に、問題定義の過程で明らかになった問題に対して、どのように対処していくのかアイデアを出します。この過程では、決して1つのアイデアにこだわることなく、より多くのアイデアを出すことに注力しましょう。
どのアイデアを受け入れてもらえるかは、ユーザー次第です。そのため、アイデアを量産することがとにかく重要になります。
プロトタイピング
アイデアが出た後には、プロトタイピングを行います。プロトタイピングとは、量産したアイデアの中から、試作品を作る作業のことです。
この過程で重要なのは、まず作ってみることです。じっくり時間とコストをかけて完璧なものを作ろうとせず、できる限り短い時間で低コストで試作品を作り、ユーザーに試してもらうことです。
なぜなら、試作品を作ることでアイデアが具現化され、その後のイメージがしやすくなるだけでなく、視覚化されることで、初めてアイデアが浮かんでくるという場合もあるからです。
検証
最後に、プロトタイピングを行った後には、検証をする行います。試作品ができ上がったら、ユーザーの反応を検証し、改善を行います。
これを繰り返すことによって、最終的にはユーザーがより満足するものを作りだすことができるという訳です。検証すべき点が多い場合は、優先順位を決めて行うことも大切なポイントとなります。
デザイン思考を導入している企業の事例
デザイン思考は、新たな商品やサービスを開発する場合だけでなく、例えば新事業の開発、働き方の改善や組織の改革、さらには地域活性化まで、実にさまざまなところで活用することができます。
そのため、近年ではさまざまな企業でデザイン思考を導入しています。ここでは具体的に3つの企業を紹介していきます。
任天堂
任天堂のWiiは、日本でのデザイン思考により開発された商品の代表的存在と言えます。
Wiiの開発では、社員の家庭の観察から、ゲーム機があると家庭では親子の関係が悪化していると同時に、鍋を囲んでいる家庭は親密度が高いことなどが確認されましたことから、「家族の関係を良くするようなゲーム機」というコンセプトの元、アイデアを出し、プロトタイピングが繰り返されました。
その結果、今までになかった新しい形のゲームが誕生したという訳です。
サントリー食品
サントリー食品では製品開発・デザイン・マーケティングを、多種多様な部署のメンバーで幅広くチームを構成し作業する、アジャイル型開発技法を行っています。
さらに、商品開発の過程でデザイン思考を活用していけるようになるために「サントリー流デザイン思考ガイドブック」を作成しするだけでなく、実際にデザイン思考について理解し実践するためのワークショップも開催されました。
メルカリ
メルカリでは、デザイン思考のフレームワークを、独自に3つの手法にカスタマイズし実践しています。
その内容とは、「ユーザーを4つのカテゴリに分類し、それぞれの解決すべき問題を見つけだし、プロダクト開発に活かす」「職種を横断したチームづくりを行いチームで情報を共有する」「短期間でアイデアを形にし、検証する」というものです。
メルカリでは、この独自のフレームワークを使い、短期間でアイデアを検証できるという姿勢で全員が動いています。
デザイン思考を取り入れて仕事に活かそう
デザイン思考とは、これからの時代にビジネスの世界で生き残るために、とても重要な考え方です。
新たな商品やサービスを開発する以外にも、プロジェクトの進行を行うときや、働き方の改善が求められる場面など、さまざまな場面でデザイン思考を取り入れることで、今までにない新しいアイデアを取り入れることができるでしょう。
ぜひ、デザイン思考を取り入れて、仕事に活かしていきましょう。