ゲーミフィケーションとは
近年、「ゲーミフィケーション」という言葉が用いられるようになり、今後、ますますこの概念が重要になっていくのではないか、と考えられています。そこで、本記事では、「そもそもゲーミフィケーションとは何ぞや」といった定義の説明から始まり、その具体的な事例や実用例を紹介し、さらに深く学んでいきたい人のためのオススメ書籍を紹介していきます。
「ゲーミフィケーション」の定義
それではまず、言葉の定義を確認してみましょう。Wikipediaでは、以下のように紹介されています。
読者の皆さんが、ゲームに疎い方であっても、「スーパーマリオ」「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」といった、著名なゲームタイトルは耳にしたことがあるのではないでしょうか。あるいは、最近では、多くの方がスマートフォンを持つようになり、「パズル&ドラゴン」「モンスターストライク」といったタイトルをプレイしている方も多いでしょう。
こうしたゲームは、当然ながら、「プレイヤーが熱中し、楽しめる」ように作られています。例えば、ドラゴンクエストというゲームでは、プレイヤーが操作する主人公のキャラクターは、敵であるモンスターと戦うことで、「経験値」というポイントと、「ゴールド」というお金を入手します。「経験値」というポイントが一定水準たまるごとに、主人公のレベルは上がっていき、新たな魔法や技が使えるようになるなど、どんどん強くなっていきます。また、「ゴールド」を貯めて、お店で強力な武器や防具を購入し、装備することでも強くなります。このように、主人公が強くなっていくことで、主人公は、さらに強いモンスターが待ち受ける世界やダンジョンへ冒険の旅を進めることができるようになります。この一連のプロセスに、プレイヤーは熱中し、楽しんでいるのです。
このような、「プレイヤーを熱中させ、楽しませる」ようにできているゲームシステムを、「顧客を自社のサービスに熱中させ、楽しんで利用させる」ように、実際のサービスにおけるシステムに落とし込むという思想が、ゲーミフィケーションです。
ゲーミフィケーションの例
それでは、各企業が、ゲームシステムをどのように実際のサービスに落とし込んでいるか、具体例を紹介していきます。
ニコニコ動画の公式サービスである「ニコニコミュニティ」
オンラインゲームでは、しばしば「ギルド(『ギルドメンバー』という仲間同士で運営する組合)」というものが存在します。プレイヤーは、ギルドに参加し、ギルドメンバーと連帯することで、ともに協力して冒険し、強大なボスに挑んだり、獲得したお宝を山分けしたり、チャットで会話して楽しんだりすることができるようになります。
そして、ギルドにはレベル・ランクが存在します。ギルドのレベル・ランクは、所属人数や、どれだけ強大なボスを倒した実績があるか、などの観点から評価され、決定されます。そして、一般的には、ギルドのレベル・ランクが高くなればなるほど、ギルドに所属できる人数の上限が増えるなどの恩恵を受けることができるようになります。そして、より上位のレベル・ランクに位置するギルドになればなるほど、そのギルドに所属すること自体が名誉と扱われるようになり、強力なプレイヤーが加盟を希望するようになります。それによって、そのギルドメンバー達は、より強大な敵に挑むことができるようになりますので、みんな自身の所属するギルドのレベル・ランクを高くしようというモチベーションを高く持って、ゲームプレイに熱中するようになります。
こういった、オンラインゲームでの仕組みを利用したのが、ニコニコ動画による公式サービスである「ニコニコミュニティ」です。オンラインゲームにおけるギルドと同様に、ニコニコミュニティにもレベルが存在します。そして、ニコニコミュニティは、ニコニコ生放送という、オンライン生放送サービスと連結していて、コミュニティレベルによって、ニコニコ生放送で利用できる権限に差をつけています。こうしたギルド形式の仕組みを導入することにより、運営者は、ユーザーのロイヤリティを高めようとしているわけです。
自分の生活をクエスト化する「じぶんクエスト」
著名なロールプレイングゲームである「ドラゴンクエスト」のタイトルにもある通り、ロールプレイングゲームでは、「クエスト(もともと英語で「探求・探索」の意)」という形で、プレイヤーにミッションが課されることが多々あります。例えば、「聖水(というアイテム)を3つ集めて、道具屋に届けよ!」というクエストであれば、プレイヤーは、モンスターを倒したり宝箱を開けたりと、何らかの方法で聖水を3つ入手し、道具屋に届けることで、クエストをクリアすることになります。
じぶんクエストというアプリでは、観光地などで、企業が提供しているキャンペーンをクエストに見立て、ゲーム感覚で観光してもらうという試みをしています。例えば、京都の事例でいうと、「◯◯寺をお参りせよ!」「△△屋で、名物の抹茶パフェを食べよ!」みたいな形で、各観光地や企業でのキャンペーンがクエスト化され、ユーザーはそれをゲームのような感覚で楽しむことができるわけです。
サイコロを振ってポイント獲得できる「肌ポリーEX」
スマートフォンでプレイできる、いわゆる「ソーシャルゲーム」というオンラインゲームでは、「ログインボーナス」というシステムが実装されていることがほとんどです。ログインボーナスとは、「1日1回、オンライン状態でゲームを起動してプレイしてくれたら、ゲーム内で利用できるポイントやアイテムをプレゼントしますよ」というシステムです。このシステムが、プレイヤーに毎日ゲームを起動させる大きな原動力となっているのです。
この「ログインボーナス」という仕組みそのものではないのですが、考え方が応用されているのが、化粧水などで有名なドクターシーラボによる「肌ポリーEX」という、簡単なゲームサイトです。肌ポリーEXでは、「1日2回」という制限つきで、無料でサイコロを振ることができ、結果によっては、ドクターシーラボの通販サイトでの買い物に利用できるポイントを得ることができるというシステムです。「1日2回、無料でサイコロを振るチャンスがもらえる」というのがミソで、ソーシャルゲームにおけるログインボーナス同様に、このシステムが、ユーザーに毎日ドクターシーラボの通販サイトを訪れさせる原動力となっているわけです。
ゲーミフィケーションを使った教育
ここまで、ゲーミフィケーションのビジネス利用の事例を紹介しました。以下では、教育面でどのようにゲーミフィケーションが使われているか、その事例を紹介していきます。
アニメキャラクターが色々と教えてくれる「すらら」のオンライン教材
現代では、いじめなどの問題を発端に、学校へ通うことが困難になり、学習がス有数してしまう子供がいます。また、そういった子供の中には、学校への登校だけでなく、そもそも外出することを拒絶するようになってしまい、学習塾へ通うこともできなくなっている子も存在します。すららというベンチャー企業のオンライン教材では、そういった子供でも楽しく学習していけるよう、学習教材にゲーム性を持たせる工夫をしています。教材の中では、アニメ絵のかわいらしい女の子キャラクターが多数登場し、やさしい口語体で教材の説明をしてくれます。そのキャラクターは、問題に正解すれば一緒に喜び、ほめてくれます。逆に、問題に間違った場合は、どこを間違ったかの指摘や、正解するためのポイントを、やさしく解説してくれます。
また、このオンライン教材の中でも、ロールプレイングゲームでお馴染みの「レベル」「レベルアップ」という仕組みが取り入れられ、子供が達成感を感じながら学習を進めていけるようなシステムになっているという点も、大きな特徴です。
なんでも無料で学べるオンライン学舎「KHAN ACADEMY(英語サイト)」
KHAN ACADEMYは、2006年にサービスを開始し、オンライン環境さえあれば、誰でも学習できるサービスとして話題を集めたサイトです。学べる内容は多岐にわたり、数学、科学、工学、コンピューターサイエンスやプログラミング、歴史、芸術、経済学など、様々です。具体的な学び方ですが、このサイトから、YouTube上にアップされている講義動画を視聴することができるので、それを見ながら学んでいくという形になります。このサイトでは、Knowledge Map(知識マップ)という学習システムを採用しており、特定の学習をきちんと修了して初めて、次の知識を得られる、という仕組みを採用しています。これは、「◯◯拳という技を覚えないと、超◯◯拳は覚えられない」というような形で、ゲームでもしばしば用いられる仕組みです。この意味で、ゲーミフィケーションを採用している教育サイトと言えるでしょう。
ほとんどの動画は英語で提供されていますが、一部、数学の講義については日本語対応しています。また、2017年3月現在、YouTubeのシステム上で、日本語字幕のキャプションに対応している動画も多数ありますので、英語が理解できてなくても、講義にトライできる環境が整いつつあります。
ゲーミフィケーションに関する本
ここまで、ビジネスや教育上でのゲーミフィケーションの利用例を紹介してきました。以下では、ゲーミフィケーションに興味を持った方が、更に理解を深めていけるような、オススメの書籍を紹介していきます。
ゲーミフィケーション―がビジネスを変える
日本人によって書かれたゲーミフィケーション本の中で、おそらく最も早く書かれ、また多くの方に読まれてきた書籍かもしれません。本記事では、ビジネスや教育でのゲーミフィケーションの利用例を数例紹介しましたが、更に多くの事例を読むことができます。
ゲームにすればうまくいく 〈ゲーミフィケーション〉9つのフレームワーク
こちらもまた、日本人によって書かれた著名なゲーミフィケーション本です。とにかく噛み砕いて書かれており、読みやすいのが特徴です。ただ、既にある程度ゲーミフィケーションの理解を深めてしまった方などは、初歩的過ぎると感じてしまうかもしれません。
ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義
世界的な名門MBAである、アメリカのウォートン・スクールでのゲーミフィケーション講義内容がまとめられた書籍です。大変よくまとまっており、さすが名門MBAの講義という感じです。
周りのゲーミフィケーションに意識を向けてみよう!
いかかでしたでしょうか。ご紹介してきたように、現在ではゲーミフィケーションは様々な分野で応用がされています。みなさんも日常の周りにあるゲーミフィケーションに少し意識を向けてみてはいかがでしょうか。