クライシスマネジメント(危機管理)とは
昨今のIT技術の進化や企業経営のグローバル化、業態の細分化に伴い、想定されるリスクも多様化しています。また、ビジネスコンプライアンスへの世論の厳しい目もあってクライシスマネジメントの必要性はさらに高まっているといえるでしょう。
この記事ではクライシスマネジメントとはどういったものかを解説し、実行のポイントや具体的な事例をご紹介します。
クライシスマネジメントの意味と定義
クライシスマネジメントとは、企業や組織の存続が危ぶまれる事案に対しての対応手段や解決プロセスを制定しておき、不測の事態に備えることを指します。
例えば事前に示したサービス内容と導入後のサービス内容の食い違い、自社製品の初期不良といった構造的な問題だけでなく、世界情勢の突発的な変化や天災による予期せぬ事態に対しても包括的な問題の解決・収束手段が求められます。
クライシスマネジメントの目的
クライシスマネジメントの目的とは、顕在化した問題を早急に沈静化し、拡散を抑えることです。情報の伝播速度が速くビジネスコンプライアンスに対しても厳しい目が注がれる現代社会では、問題解決能力も企業の信頼性を左右する重要なファクターです。
場当たり的な対応、具体性に欠ける解決策の提案ではユーザーの信頼を失いやすくなるでしょう。
クライシスマネジメントとリスクマネジメントの違い
リスクマネジメントとは、問題を発生させないように手段を講じること、つまり予防に重点を置かれて制定されています。対してクライシスマネジメントは、問題発生後の対応プロセスを制定しています。
もちろん、「問題を起こさないこと」が組織に取って第一義ですが、より複雑化し、相互依存的な現在の企業形態では事前のケアだけでは限界があり、そうした意味でクライシスマネジメントの重要性は増す一方です。
クライシスマネジメントに必要な3つのポイント
クライシスマネジメントを適切に行う大前提として、事後対応がいかに重要であり、対岸の火事ではないことを組織が共通して認識しているかが重要です。
適切なクライシスマネジメントにはリスク認知・リスク評価・リスクコミュニケーションを日頃から意識し、実践しておく必要があります。以下、3つのポイントに分けて見てみましょう。
ポイント1:リスク教育
第一段階として、リスク認知方法を組織全体で教育しておく必要があります。過去の事例、傾向から考えられるリスクを洗い出し、不確実性を除外して検討することが重要でしょう。
生産性を重視するとどうしても低確率のリスクを切り捨ててしまいがちですが、ゼロではないリスク全てに対応フローを提示し、マニュアル化しておくことで対応の迅速化、統一化が可能です。
ポイント2:早期発見
クライシスマネジメントにおいて重要なポイントの一つが顕在化する前に問題を早期発見することです。そのためにはリスク評価が重要です。
発生したときの被害の範囲、発生する確率、重要度からリスクを段階的に分け、対応優先度をあらかじめ決めておく必要があります。範囲が広く発生確率が高く深刻な影響を与えるものから順番に管理者を配置するなどの対応を講じておくべきです。
ポイント3:広報
問題発生時に企業のイメージを決定付けるのが、ユーザー窓口となる広報部です。広報にはポジティブな情報を浸透させるのと同時に、ネガティブな情報に対し正しく処理する能力が求められます。
組織が発生した問題に対してどのように考え、どのような解決方法を持っているのかをユーザーに明確に示すことが、ユーザーが個別に情報を手に入れ拡散しやすい現代の情報社会では重要な姿勢です。
迅速な対応
クライシスマネジメントでもっとも必要になるのが迅速な対応です。可能であればユーザーが問題を認知する前、天災などの予測不能な事例では問題発生直後が望ましいでしょう。
対応時期が遅れれば遅れるほど、「問題をなかったことにしようとしたのではないか」とユーザーに不信感を与え、求められる対応への要求も厳しくなります。迅速に対応するために、リスクマネージメントとクライシスマネジメントの一本化が求められます。
誠実な対応
初動対応が遅れてしまった場合などでは、企業に対する要求水準も必然的に高くなります。こうなるとより誠実な対応が求められるでしょう。最悪の場合内部情報を公開しなければ沈静化しない事例も存在します。
ここでの誠実な対応とは、何に対して謝罪しているのかを具体的に示すことです。よく問題に対しての解決を説明しないまま代替案、次善策を表明するケースがありますが、多くの場合反対に信頼度を下げてしまうことになります。
正確な対応
クライシスマネジメントでは、ユーザーがどの部分を問題としているのかを正確に把握していることも重要です。結果そのものより、なぜそのような問題が起きたのかということを可能な限り表明しなければなりません。
また、リスクマネジメントとの連携も必要です。未然に防止するシステムが組織にあったのか、あったとして備えは十分だったかということを組織が正確に把握していたかを説明する責任があるからです。
今後の対応策
クライシスマネジメントの締めくくりとして、具体的な今後の対応策を示す必要があります。問題発生以前、あるいはそれ以上のサービスを提供するための施策を提示できれば、より早急な問題の沈静化が可能です。
もちろん改善案を持っていないからこそ問題が発生しており、構造改革は組織の現状不可能であるという見方もできますが、だからこそ恒常的なクライシスマネジメントの組み込みが必要になります。
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クライシスマネジメントの事例5つ
クライシスマネジメントには色々な種類がありますが、今回は情報管理体制・不正アクセス・内部通報窓口・反社会的勢力・防災クライシスマネジメントの事例5つをご紹介していきます。
事例1:情報管理体制
情報管理体制における想定されるリスクは、データの流出、必要な情報を正しく管理するという意味では誤った情報の記載、または管理情報の齟齬です。
情報流出の被害の多くは人的な過失です。問題の性質上企業は公表を遅らせてしまいがちですが、遅れるほど信頼性の失墜と共に対策予算も爆発的に跳ね上がります。流出経路の早急な特定による責任所在の顕在化が基本的なクライシスマネジメントとなるでしょう。
事例2:不正アクセス
高度情報化社会にあって深刻化するのが不正アクセスです。不正アクセスの主な目的は2つあります。データや金銭を盗み出すことと、個人データ乗っ取りによる被害の拡大です。
この場合、セキュリティシステムの修正と関係各社・公的機関との早急な連携が求められます。また、ユーザーへの注意喚起の意味でも一刻も早い問題の発表が必要になります。ある程度ダメージは避けられない事例です。
事例3:内部通報窓口
被害を最小限で食い止めるという観点から、内部通報窓口は非常に重要な機関です。問題の規模や重要度が小さいうちに社内で共有する制度を敷いておくことで、外部流出の危険を減らすことができます。
つまり、問題発生から実際の影響が出るまでの段階を細分化し、組織に自浄作用を持たせておくことが目的です。
事例4:反社会的勢力
反社会的勢力の圧力により、企業が不公平なサービスを提供し続けてしまうといった事例は、現在でも多く存在しています。「問題を隠しておきたい」という企業の体質を突いた手法であり、クリーンな企業イメージを保とうとするほど泥沼にはまりこむ事例です。
このような問題に対してのクライシスマネジメントは、自社も傷を負う覚悟で毅然と対応する誠実な態度が求められるでしょう。
事例5:防災
地震大国である日本において、防災も重要なクライシスマネジメントといえるでしょう。初動対応のわずかな遅れによって、二次被害による犠牲者がネズミ算式に増えていくことを深刻に受け止める必要があります。
災害発生時の避難ルートの確保、各自治体との日常的な連携、指揮系統の確立、連絡手段をより多く用意するなど、多彩かつ臨機応変な対応が求められます。
徹底したクライシスマネジメントを行っていきましょう
この記事では、クライシスマネジメントの意味や定義、必要なポイントや事例をご紹介してきました。緊急性を要する事案ほど組織の体質があらわになり、また世間も注目しています。
ネガティブなイメージの拡散を防ぎ、健全な企業体質を保つために、効果的で徹底したクライシスマネジメントを行っていきましょう。