地政学
地政学とは、20世紀に始まった国家学の形態の一つで、民族や国家の特質を、主として地理的空間や条件という観点から説明しようとする学問のことをいいます。
地政学という言葉が初めて使われたのは、スウェーデンの学者であるチェレン(ヒェレン)という人物です。
地政学の成り立ち
現代の地政学につながる重要な影響を与えた人物が、アメリカ海軍軍人であるマハンです。マハンが発表した海軍権力史論では、海という地理的な空間の支配が世界への支配的影響力となることを説明しています。この論文から地政学が発展していったと考えられます。
また、第2次世界大戦時、ヒトラー率いるナチスドイツが地政学という言葉を用いて、自らの行動を正当化するために、地政学の概念を利用したことでも知られています。
現代における地政学
現代における地政学は、地政学が誕生したと考えられる19世紀から2世紀を経て21世紀の現代も、国際政治や経済を見るための重要な指針とされています。現代での地政学においても、先にご紹介したマハンの海軍権力史論の考え方が生かされています。
日本における3つの地政学リスク
ここからは、日本における地政学リスクについてみていきます。地政学におけるリスクは、政治、経済にも影響を与えかねません。近年は、とりわけ国際情勢も緊迫した状況が続いています。
日本をとりまく地政学リスクを知ることによって、日本が抱える問題点が浮かび上がってきます。以下で、日本が抱える3つの地政学リスクについてみていきましょう。
日本における地政学リスク:朝鮮半島情勢
最初に挙げる日本が抱える地政学リスクは、朝鮮半島情勢です。北朝鮮による核開発の発展によって地政学リスクが高まっています。北朝鮮によるミサイルの発射は、日本のみならず韓国、さらにはアメリカにとっても脅威であり、緊張が高まっています。
日本も北朝鮮の挑発的な行動によって、限定的ではありますが、経済市場に影響を受けることがあります。北朝鮮は核放棄にむけての動きは見せていますが、油断できない状況にあります。
日本における地政学リスク:シリア情勢
日本における2つ目の地政学リスクとしてシリア情勢が挙げられます。シリアでは、民主化を求めて始まったデモが、アサド政権によって鎮圧されて以降、紛争として続き、戦闘が繰り返されている状態です。多くの難民が周辺の国へ逃れています。
アサド政権を支援するロシアと、反政府派を支持するアメリカが対立を深めています。テロが頻発する危険で不安定なシリア情勢は、日本にも地政学リスクを与えているといえるでしょう。
日本における地政学リスク:ヨーロッパ情勢
日本が抱える地政学リスクの3つ目として、ヨーロッパ情勢が挙げられます。ヨーロッパでは、イタリアとスペインの政局の混乱と、イギリスがEU離脱という問題を抱えています。その影響は日本も避けることはできません。
リスクを回避しようとする流れから円高傾向になり、企業業績に悪影響を与えかねません。また株安傾向も心配されます。株安になると企業や家計の経済が圧迫されることになります。
株価・金利・為替・原油価格にどのような影響がある?
ここからは、地政学リスクが、株価、金利、為替、原油価格に与える影響についてみていきます。世界のどこかで紛争が起これば、世界経済にも影響を及ぼす可能性が高いと言ってよいでしょう。
戦争、紛争、テロなどは、政治的な対立などは、地政学リスクにつながります。以下で、具体的にどのような影響を及ぼすのかみていきましょう。
株価への影響
地政学リスクが高まることによって、株を持つことにリスクがあると考えられ、リスク回避のために株が大量に売られるため、結果として株価が下がることになります。
投資家にとって、地政学リスクは不安材料になりやすく、地政学リスクが高まれば、すぐにでも株を手放そうとする傾向があります。
金利への影響
地政学リスクが高まることによって、安全な資産とされている先進国の債権が大量に買われます。その結果、金利が低下するという影響を受けます。金利が低下すると日本経済にも深刻な影響がでます。
為替への影響
為替への影響は、安全な通貨とされている日本円、アメリカドル、スイスフランなどが大量に買われる傾向があります。特に日本円は、安全資産として定評があり、ちょっとした地政学リスクでも買われています。その結果、円高を引き起こし、日本経済にも影響を及ぼします。
原油価格への影響
原油とは、石油やガソリンなどに加工される前の状態の油のことをいいます。現代社会には原油はなくてはならないものです。日本では石油はほとんど輸入に頼っている状態です。
中東などの資源が豊富な産油国に関係する地政学リスクが高まると、原油の供給量が不安視され、結果的に原油価格が上昇するという影響を受けます。
また世界のどこかで戦争が起きれば、大量の石油が消費されることになります。その結果原油価格が上がります。
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地政学的な観点からの今後の海外リスクへの影響
ここからは、今後の海外のリスクを地政学的な観点から見ていきます。近年、日本企業の海外進出がスピード感をもって行われています。海外でのリスクは、海外進出をしている日本企業にも大きな影響を与えます。細かく分けて5つのリスクがありますので、以下でご説明いたします。
海外リスクへの影響:事業中断リスクの多様化・拡大
近年、日本企業の海外進出が広がってきています。そうした中で海外で起こるリスクは、事業を中断するリスクにもなりえます。
海外で起こるリスクとしては、世界的なテロの拡大、自然災害、感染症の広がりなどが挙げられます。そうしたリスクは、日本企業の中断を拡大させる危険性をはらんでいるといえるでしょう。
海外リスクへの影響:国別・地域別からグローバル化への進展
近年、世界的にテロの脅威が広がっています。世界のあちこちでテロが頻発し、もはや安全な場所などないといっても過言ではありません。
アジアや欧米諸国、アメリカなど全世界で、テロ事件がいつ、どこで発生しても、おかしくはありません。こうした背景を踏まえて、テロに対する対策は、地域限定ではなく、グローバルな視野で取り組んでいく必要があります。
海外リスクへの影響:極右化・大衆迎合政策の拡大
近年、欧州では、極右政党が急激に支持率を伸ばしています。その背景には、長期的な視点で見た政策よりも、大衆迎合的な政策が広く受け入れられているという側面があります。
このような状況は、社会が不安定になるばかりか、外交問題にも発展しかねず、日本企業も影響を受ける可能性があります。
海外リスクへの影響:世界的な社会の不安定化
1つの国が不安定な状況に陥ると、連鎖反応的に周辺の国にも影響を与えるというリスクがあります。
不安定化が、暴動やテロに発展する可能性も否定できず、海外進出している日本企業にも影響を与えるでしょう。政治的に不安な状況にある国があれば、注視していく必要があります。
海外リスクへの影響:世界情勢の不安定化に伴なう地域紛争の拡大
1つの国が不安定な状況に陥ると、周辺国に飛び火し、地域紛争の拡大につながるリスクがあります。特に注意が必要なのは、イスラム教が急速に広まっている地域です。
イスラム教は、近年、過激な思想を持つ人が増加しているため、他の民族と一触即発な状況になる可能性は否定できません。こうした地域に進出している日本企業は、情勢を冷静に見定める必要があります。
日本における地政学リスクについて理解を深めよう!
ここまで、地政学リスクについて、いろいろな角度から掘り下げてきました。日本周辺のみならず、世界的にみても緊迫した状況は続いています。地政学リスクがあると、為替、原油、金利、株価など影響を受けやすく、日本経済は悪循環に入ってしまいます。
地政学リスクについて、理解を深め、日本をとりまく状況について考えるようにしましょう。