労働者名簿とは
労働者名簿とは労務に関する法定帳簿のひとつです。企業が労働者を雇う際に作成しなければならない、いわば従業員名簿のことです。
労働者名簿を作ろうにも、労働者名簿がどういったものなのか分からなければ作成の仕様がありません。法律で定められている、労働者名簿とはどんなものなのか見ていきましょう。
労働者名簿は法定三帳簿の1つ
労働者名簿は法定三帳簿と呼ばれる帳簿のうちのひとつです。法定三帳簿とは、労務に関係する帳簿で「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つのことです。
従業員の素性や労働状況を知るために重要な書類であるといえます。労働基準監督署による監査が入った場合などにも、確認されることが多いので、企業としては必ず備えておかなければならない書類です。
労働者名簿設置義務のある企業とは
労働者名簿は法定三帳簿のひとつ、とお伝えしましたが、すべての企業が設置しなければならないのでしょうか。結果から言うと労働者名簿を設置しなければならないのは、従業員を雇っている企業です。
企業の規模には関係なく、たとえ一人でも従業員を雇っているなら労働者名簿の作成が義務付けられています。これは、個人事業主であっても同じで、従業員を雇用していれば労働者名簿の設置が必要になります。
労働者名簿の対象者とは
次は労働者名簿の対象者を見ていきましょう。労働者名簿の対象者は、雇用している従業員すべてです。正社員やパート・アルバイトなど雇用形態に関係なく、雇用していれば労働者名簿の作成の対象になります。
たとえアルバイトであっても、労働者名簿の作成が必要です。ただし、日雇い労働者の場合は、一時的な契約とみなされるため、労働者名簿の作成義務はありません。
労働者名簿に記載する事項7つ
労働者名簿は法律で定められている書類のため、記入すべき項目や保存期間などが細かく決められています。労働者名簿に記載するべき内容も、労働基準法第107条・労働基準法施行規則第53条によって定められています。
労働者名簿のフォーマットは、各企業のオリジナルで構いませんが、記載する内容はきちんと法律に沿っていなければなりません。では、労働者名簿に記載しなければならない事項を7つ見ていきましょう。
労働者名簿に記載する事項1:氏名・生年月日・性別
氏名・生年月日・性別は、従業員の情報を知る上で基本的な事項です。最近では結婚しても社内ではそのまま以前のように旧姓を使用している場合もありますが、氏名は本名を記載します。
また、結婚や離婚で苗字が変わった場合は、速やかに労働者名簿を更新してください。氏名も性別も基本的には、戸籍上の情報を記載しましょう。性別もプライベートな問題ですが、公表するかは別として労働者名簿には戸籍の性別を記載します。
労働者名簿に記載する事項2:住所
ケガや病気など従業員に万が一のことがあったとき、企業としては従業員の住所は知っておかなければなりませんので、住所も必須事項です。
一人暮らしをしているなどの理由で、住民票と実際の住所が異なる場合があります。実際に連絡を取れる住所が必要なので、労働者名簿には現在居住している住所を記入しましょう。ここに記載された住所を基に、交通費などの支給を行います。
労働者名簿に記載する事項3:業務の種類
労働者が従事している業務の種類を、大まかでもいいので記載します。例えば、経理事務・営業・総務など行っている業務の種類を記載してください。
少人数の企業で一人で複数の業務をこなす場合は、主に行っている業務をいくつか羅列で記載すれば問題ありません。どうしても分類できない場合は、記載しなくても法律違反にはなりませんが記載するほうが望ましいです。
労働者名簿に記載する事項4:履歴
履歴とは入社以前の学歴などのみなさんがよく履歴書等に記載する履歴のことではありません。総務部から経理部へ異動になった、支社へ転勤になったなど、社内での履歴がを記載します。
異動や配置転換などの履歴がない場合は、現在所属している部署を記載しておきましょう。例えば、営業部なら営業部所属と記載し、移動などがあった場合には書き足していけば履歴になります。
労働者名簿に記載する事項5:雇用年月日
労働者名簿に記載する雇用年月日は、採用が決定した日付ではなく実際に雇用した日付を記入します。入社日と理解してもらっても問題ありません。
いつから会社の従業員となったのか、この項目を見ればはっきりします。雇用以前の従業員の動向について、企業は責任が無いということになります。また、この日付によって、いつ年次有給休暇の発生するのか明確になります。
労働者名簿に記載する事項6:退職年月日と理由
雇用年月日と同様にいつまで従業員であったのか、はっきりさせるためにも退職年月日の記載は明確にする必要があります。従業員の自己都合による退職の場合は理由の記載は必要ありません。
会社都合の退職の場合は、なぜ解雇したのかをきちんと記載する必要があります。後々トラブルにならないように、解雇に至った理由をきちんと書いておきましょう。
労働者名簿に記載する事項7:死亡年月日と原因
労働者が在職中に亡くなったした場合は、亡くなった年月日と原因を記載しなければなりません。病死なのか、就業中の事故なのか、場合によっては労災になることもあり、亡くなった原因は重要になってきます。
また、従業員の退職や解雇、亡くなった日から3年間は、企業は労働者名簿を保管する義務があります。そういったことからも、亡くなった年月日を正確に記載することが必要になってきます。
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労働者名簿の履歴の書き方について
労働者名簿に記載するべき事項の一つとして履歴がありますが、どこまで記載しなければならないという法律の定めはありません。どこまで記載するかは企業側の判断になります。
とは言っても、何も分からないのでは不安になります。このように書いておけば安心だ、という履歴の書き方についてご説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
労働者名簿の履歴の書き方1:学歴について
履歴書であれば、小学校・中学校・高校・大学の順に入学と卒業の年月を書きますが、労働者名簿の履歴では義務教育は省略して、高校から記入する企業が一般的です。
履歴は最終学歴が分かればどのように記載しても問題ありません。履歴書のように細かく記載するか、最終学歴のみを記載するかは各企業が必要に応じて判断してください。
労働者名簿の履歴の書き方2:職歴について
履歴の職歴について、入社前の職歴を記載する必要があるのかと疑問に感じる方もいるでしょう。入社後の異動などによる履歴はいいとして、職歴を記載する理由はあるのでしょうか。
例えば、経理で採用した従業員が以前は営業の仕事をしていたとします。職歴が分かっていれば、営業への配置換えを検討することもできます。職歴は無いよりあったほうが便利で、知っていて損はしません。
労働者名簿の履歴の書き方3:本籍について
実際に連絡が取れるならば、住所は本籍と異なっていても問題ありません。引越しなどで、本籍と現住所が違うといった例は珍しくありません。
企業側が従業員の本籍まで把握する必要はありませんが、従業員が多い大企業などでは本籍を知ることで、同郷の従業員同士を組ませることができるなどメリットもあります。ただし、必ずしも記載しなければならない項目ではないことを覚えておいてください。
労働者名簿の履歴は事実確認の手段や判断基準となる
労働者名簿の履歴は、従業員に万が一のことが起こった場合に企業側を守る大切な証拠となりえます。
例えば、従業員に不幸が起こった場合、労災なのかそうではないのかの判断基準になりますし、犯罪者を雇い入れてしまった場合に、それを知っていたか知らなかったかなどの確認にも利用されます。
雇っている労働者のことをよく知るためにも、会社を守るためにも、労働者名簿の履歴はきちんと記載しておくべきものといえます。