マネジメントの意味と使い方|リスク/セルフ/サプライチェーン

マネジメント

「マネジメント」とは

ことばの意味

マネジメント、すなわちmanagementという英語をそのまま日本語に訳すと「管理」という意味になります。しかし、日本社会における「管理」は統制や保全という意味・イメージになり、ビジネス上のマネジメントは、少しニュアンスが異なります。

マネジメントとは「組織目標を達成するために与えられた人、物、金、時間、情報(技術)といった経営資源をいかに効率的に活用して組織の成果をあげていくかを考えること」という意味です。

従来はマネジメントといえば企業を対象としたもの、とされていましたが、現在では病院・学校・教会・NPOなどあらゆる組織に対して、その組織に応じたマネジメントが必要と考えられています。

P.F.ドラッカー

ビジネス用語における「マネジメント」の意味を最初に定義したのは、マネジメントの父とも呼ばれるP.F.ドラッカーです。ビジネス界に最も影響力を持つ思想家として知られ、死亡後10年以上が経過した現在も経済誌で競うように特集が組まれたり、ビジネスマン必修のスキルとして、各社でドラッカーの思想と手法についての教育が続けられています。

特に著書「マネジメント 基本と原則 エッセンシャル版」(ダイヤモンド社)は世界で最も読まれたマネジメントの教科書として有名です。

ドラッカーはマネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しています。また、著書『チェンジ・リーダーの条件』によれば、マネジメントとは「ものの考え方」であり、次の7つの意味を指すとも定義しています。

ドラッカーってどんな人?

ドラッカーはユダヤ系オーストリア人経営学者で、1909年ウィーンに生まれ、2005年11月11日アメリカ・クレアモントの自宅にて老衰にて死去しました。

東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化などにいち早く警鐘を鳴らしました。さらに「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」など、さまざまなマネジメントの理念を生み出し、意味づけをして発展させました。

1943年にアメリカ国籍を取得、2002年アメリカ政府から大統領自由勲章を授与されました。

辞書・広辞苑での意味は

マネジメントを辞書でひくと、どのような意味として記載されているのかまとめました。

・広辞苑
マネジメント:管理。処理。経営。経営者。
管理:管轄し処理すること。良い状態を保つように処置すること。とりしきること。

・大辞泉
経営などの管理をすること。経営者。管理者。「有数マネージメント」

・チェーンストア用語集
数字と状態とについての目標を達成する努力。数字を計画したとおりに変化または安定させられる技術または能力。機会損失を最小にする技術。

「マネジメント」の使い方の例文

「マネジメント」の例文

マネジメントという言葉は、次のように使います。

・「マネジメント」の成熟度は一般的に、個別の活動から有数ダウン、組織的な活動へと発展するにつれて深まっていきます。

・技術部門を強化するためには、ミドル層の「マネジメント」の強化が不可欠です。

・働き方改革のカギは現場の「マネジメント」にあります。

「ビジネス・マネジメント」の例文

ビジネス・マネジメントとは、企業マネジメント、経営管理論の意味です。例えば次のように使います。

・企業環境の急激な変化に対応し得る、新たなる「ビジネス・マネジメント」の開発が強く迫られています。

・マーケティング、経営効率、経営戦略、財務状況の4分野から、各社の「ビジネス・マネジメント」レベルを分析しました。

・「ビジネス・マネジメント」学部では、マネジメントの基礎知識と情報スキルを身につけ、即戦力としてビジネス社会で活躍する力を習得できます。

「〇〇マネジメント」の例文

マネジメントの意味は多岐にわたるため、ビジネス・マネジメントのように、多くの場合は前に言葉を追加して○〇マネジメントと管理対象を明確にします。例えば次のように使います。

・あらゆる組織にとって「有数・マネジメント」の機能は不可欠です。

・「ナレッジ・マネジメント」を成功に導くカギは人間系の改革です。

・「ダイバーシティ・マネジメント」の端緒として、女性が働き続けることのできる環境整備に推進してきました。

次の章よりさまざまなマネジメントの種類とその意味、使い方をご紹介します。

「リスク・マネジメント」と「サプライチェーン・マネジメント」の意味と使い方

リスク・マネジメント

日経BP社ITProは、リスク・マネジメントの意味を「プロジェクトで発生する可能性がある事象を把握して、プロジェクトの成功を阻害しないように対策を講じること」と説明しています。

リスク・マネジメントとは、リスクを「発生する確率」と「被害の大きさ」から優先順位をつけ、回避策や起きてしまった場合の対処法や規範を計画・明文化・徹底する行動という意味です。

経営活動には数多くのリスクが存在します。例えばシステム開発プロジェクトであれば、「開発の遅れ」「品質の低下」「完成の遅れ」などがリスクです。一般的にも人的リスク、品質リスク、サイバーセキュリティリスク、風評リスク、事故災害リスクが代表とされ、それぞれにマネジメントが必要です。近年では情報セキュリティの観点からも重要性が着目されています。

「当社では巨大地震による電気供給停止を災害リスクマネジメントの対象にする」というように使います。

サプライチェーン・マネジメント

Supply Chain Managementの頭文字をとって、SCMとも呼ばれます。SCMとは企業が取引先との間の資材調達や受発注、物流、在庫管理などをITを活用して一貫管理する経営手法という意味です。

SCMでは将来的な需要を予測して、調達・生産量を調整し、調達先から販売店店頭までの在庫を最適化することで、在庫回転率を向上させて経営数値を最適化します。特に販売当初は爆発的に売れるが徐々に落ち着くような売れ方をする商品の生産・販売管理に適した管理技法です。デルコンピューターが成功事例として有名です。

企業内にとどまらず、複数の企業間でデータを共有・活用するという意味で新しい手法であるとして2000年頃にブームとなり、大手メーカーを中心に大規模なIT構築および導入がされました。

サプライチェーン・マネジメントの導入により、在庫金額の15%の削減を実現した、というように使います。

「デマンドチェーン・マネジメント」の意味と使い方

デマンドチェーン・マネジメントも企業横断型のバリューチェーンの最適化を意味します。サプライチェーン・マネジメントがメーカー主導であるのに対して、消費者から得られる販売情報(POSデータなど)が起点となり、小売店主導で行われるのが特徴です。Demand Chain Managementの頭文字からDCMとも呼ばれます。

SCMが効率の向上を目的としているのに対し、DCMは商品開発、商品構成設計、MD計画、販売促進といった「何を作るのか」、つまり有効性の向上に意味を成すとされていて、両者は密接に関係しています。

アスクルのビジネスモデルの根幹はデマンドチェーンマネジメントにあり、消費者の需要予測をもとにして在庫管理を行っている、というように使います。

「キャリア・マネジメント」の意味と使い方

キャリア・マネジメントとは、キャリア=仕事にまつわる「生き方」をマネジメントすること、という意味です。キャリア・マネジメントには、個人による自身のキャリアのマネジメントと、組織による組織の構成員のキャリアのマネジメント、の二つの面があり、双方をバランスよく行うことが重要とされています。

日本企業において従業員の能力開発は、終身雇用の前提から階層別・入社年次別の集合研修でじっくりと人材を育てる教育と、計画的な人事異動で自然にリーダーを生む教育手法が主流でした。

しかし、成果主義や入社ルートの多様化、評価制度の複雑化をもとに新たなプランの構築が必要になりました。このため、組織におけるキャリア・マネジメントとは、「組織目標に必要な人材を常に確保するための人材戦略」と意味付けられています。

キャリア・マネジメントの効果により、優秀な若手人材の流出を防ぐことに成功した、というように使います。

「タレント・マネジメント」の意味と使い方

キャリア・マネジメントと類似の思想に「タレント・マネジメント」があります。タレント・マネジメントとは、組織が構成員一人一人のタレント(才能・資質)を把握して、適性に見合った人材育成、配置、教育、採用などを通して、戦略的かつ統合的に企業経営に反映する人事の仕組み、という意味です。

適材適所を経営者を含む全社横断視点で行うことで、構成員一人一人のパフォーマンス向上を図るとともに、次世代リーダーや優れた人材を養成することを目的としています。終身雇用制が崩れて人材流動の大きくなった現在、どのようなタレントが社内のどこにいるのかを一気通貫で把握することは、経営スピード向上に大きな意味を持ちます。

「タレント・マネジメントを取り入れた先進の人材育成システムを構築した」のように使います。

「ホスピタリティ・マネジメント」の意味と使い方

ホスピタリティは「思いやり」「おもてなし」という言葉で認識され、サービス業に必要な要素とされてきました。けれども、成果主義や業績主義の結果としてギスギスした職場環境を生み、ストレスで仕事を離れなければならない人が増えている現代、「お互いの立場の違いを受け入れて共生すること」と幅広い意味に変わってきています。

そのような中、ホスピタリティ・マネジメントとは、ホスピタリティを人材育成のみならず、経営戦略・事業戦略にも取りいれるという意味です。社員がやりがいを持って活き活きと働く環境を作ることで、組織目標に必要な人材を常時確保する戦略と意味付けられます。

「ホスピタリティ・マネジメントを取り入れた職場リーダー研修を行うことで、女性主体の組織全体のパフォーマンスが劇的に高まった」というように使います。

「セルフ・マネジメント」の意味と使い方

セルフ・マネジメントは自己管理、すなわち自分で自分を統制することで、自分の精神的・肉体的に安定した状態を維持し、さらにその状態をより良くするための行動という意味です。似た言葉にセルフ・コントロールがありますが、セルフ・コントロールは欲望や感情を抑えることであり、前進を目的とするセルフ・マネジメントとは意味が異なります。

日本の労働者人口が減少を続けるなか、組織目標の達成には、組織の構成員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮して生産力を向上させることが必須です。このために、セルフ・マネジメントが大きなカギを握るとして、注目されています。

「優れたリーダーは往々にしてセルフ・マネジメントに長けているという特長を持つ」というように使います。

「チェンジ・マネジメント」の意味と使い方

変革を遂げるために新しい経営手法やITソリューションを取り入れると、現場混乱などで生産性がいったん大きく落ち込みます。チェンジ・マネジメントとは、この落ち込み幅を極限まで小さくし、さらに一刻も早いV字回復を図るための計画・行動の意味です。

チェンジ・マネジメントでは組織構成員一人一人へ変革の目的を説明する行為を通じて、「新しい取り組みが善をもたらすものであり、自身の責務に大きな意味をもつものである」という意識を組織の末端にまでいきわたらせます。さらには導入後の定着を早めるための運用設計も重要な実施項目です。

あくまでも「人」に目を向けて心理的なアプローチをとることが、このマネジメントの特徴です。

「チェンジ・マネジメントを導入したプロジェクトは、導入しなかったプロジェクトに比較し、目標達成率が6倍高いといわれる」というように使います。

マネジメント力を向上させて価値ある人財になろう

マネジメントは、マネジメントの父P.F.ドラッカーによれば「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」の意味です。あらゆる組織、経営課題に対してマネジメントが必要と考えられています。

マネジメントはその管理対象によって、リスク・マネジメント、サプライチェーン・マネジメント、キャリア・マネジメントなどの名称が付けられています。その種類は無数に存在しますが、どれも「組織に成果を上げさせる」という目的により行われています。

セルフ・マネジメントを通じて自身のスキルを向上させ、組織に成果・価値を提供できる人財を目指しましょう。

タイトルとURLをコピーしました