行動経済学
行動経済学とは、人間の心理的・感情的側面に即した分析を行う経済学のことで、2002年にダニエル・カーネマン氏がノーベル経済学賞を受賞しています。
買い物で必要のない物を買ってしまうなど、人は必ずしも合理的な行動をとるとは限りませんが、行動経済学はその謎を解き明かしてゆく実用的な経済学と言えるでしょう。
行動経済学を知ると、ご自身の行動を見つめ直すのにはもちろん、マーケティングにも活かすことができます。
行動経済学の意味・概要
行動経済学は、人には感情があるため、必ずしも合理的な行動をするわけではないということに着目した、新しい経済学です。
誰しも理屈に合わない非合理的な行動をしてしまった経験があることでしょうが、そのような例について考察することで、非合理にも法則を見出す、言わば非合理の理論化をできるのが行動経済学です。
行動経済学を学ぶことは、ビジネスにはもちろん、日々の生活にも大いに役立つことでしょう。
行動経済学と一般的な経済学との違い
一般的な経済学では、人は合理的な行動をとるものと考えられてきましたが、行動経済学では、その例外に注目しています。
自身の経済的な利益の最大化を唯一の行動基準とする人ばかりであれば一般的な経済学で事足りるのでしょうが、実際の人には感情があり、行動する時の心理も考慮することが必要です。
行動経済学は、従来の一般的な経済学に心理学的な要素を取り入れた経済学だと言えるでしょう。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例5つ
マーケティングで消費者を動かしたいのであれば、どうすれば消費したくなるかという心理を知る必要があり、これには行動経済学を学ぶことが役に立ちます。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例として「アンカリング効果」「プロスペクト理論」「サンクコスト(埋没費用)」「おとり効果」「現在志向バイアス」の5つを見ていきましょう。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例1:アンカリング効果
行動経済学の「アンカリング効果」とは、先に持っていた印象的な情報が基準(アンカー)となり、その後の行動に影響を与える効果のことです。
買い物をする時「5,000円です」と言われるより「定価10,000円のところ、今ならセール価格で半額の5,000円です」と言わるほうが、買いたくなる人が多いでしょう。支払うのは同じ5,000円なのに「定価10,000円」という情報がアンカーとなりお得だと感じさせます。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例2:プロスペクト理論(損失回避性)
行動経済学の「プロスペクト理論」とは、損失回避性のことで、新たな利益よりも損失の回避を優先する傾向があるという理論のことです。
例えば「コインを投げて表が出たら100万円をプレゼント」と言われればやってみようと思う人が多いでしょう。
ですが「ただし、裏が出たら借金100万円を負います」という条件が加われば、100万円がもらえる可能性は同じなのに、止めておこうと思う人が多い傾向にあると言えます。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例3:サンクコスト(埋没費用)
行動経済学の「サンクコスト(埋没費用)」とは、「沈んでしまったコスト」という意味で、すでに支払って戻ってこないコストのことであり、このコストが気になって現在の行動に悪影響を及ぼすことを指します。
例えばギャンブルで1万円負けて「ここで止めれば1万円損してしまうから負けを取り戻さなければ」と結果10万円負けた場合、1万円をサンクコストと考えて止めておいたほうがよかったと言えます。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例4:おとり効果
行動経済学の「おとり効果」とは、おとりの選択肢を加えることで、狙いの選択肢を選択しやすくさせる効果のことです。
例えば食事のメニューで「並1,000円、上2,000円」と書いてあるよりも「並1,000円、上2,000円、特上3,000円」と書いてあるほうが2,000円の選択肢を選ばれやすくなるのがおとり効果です。3,000円のメニューはおとりで、実際には選ばれる必要がありません。
行動経済学の理論をマーケティングに活かす例5:現在志向バイアス
行動経済学の「現在志向バイアス」とは、将来より目先の利益を優先してしまうバイアス(偏り)のことです。
例えば「今すぐもらえる1万円」と「1年後にもらえる10万円」のどちらかを選ぶとしたら、「1年後にもらえる10万円」の方が得なのだろうと思いつつも「今すぐもらえる1万円」に魅力を感じてしまうのが「現在志向バイアス」と言えます。
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その他の行動経済学の例5つ
マーケティングによく使われる行動経済学の例5つを見ていただき、これらがさまざまな場面で使われていることにお気づきいただけたでしょうか。
挙げればきりがない程、私たちの身近には行動経済学の例を見つけることができますから、ぜひご自身でも行動経済学の例を探してみましょう。
ここではもう5つ、例をご紹介しておきます。
その他の行動経済学の例1:フレーミング効果
行動経済学の「フレーミング効果」とは、データの見せ方など判断に使われる枠組(フレーム)を変えることで、判断に影響を及ぼす効果です。
例えば「年間の費用が5,000円かかります」と言うよりも「費用は毎月コーヒー1杯分です」と言うほうが払えそうだという気持ちを高めることができるでしょう。フレーミング効果を使えば、どちらも同じ費用なのにここまで印象を変えることができます。
その他の行動経済学の例2:ハーティング効果
行動経済学の「ハーティング効果」は、人が他の人と同じ行動をとろうとすることです。
例えば行列のできている店はおいしいのだろうと考えた人が行列に並び、どんどん行列が長くなることがありますが、これは「ハーティング効果」と言えるでしょう。周りと合わせるのを良しとする傾向が高い日本ではなじみ深い理論でしょう。
その他の行動経済学の例3:確実性効果
行動経済学の「確実性理論」とは、確実性の高いものを選択することを優先する理論です。
例えば「10人に1人の確率で10,000円が当たります」というキャンペーンよりも「全員に1,000円をプレゼントします」というキャンペーンを選択するのは、確実性理論によるものと言えるでしょう。
せっかく魅力的な商品を用意しても、確率が低いからどうせ当たらないだろうと考えられてしまうと、企業としては期待はずれとなります。
その他の行動経済学の例4:ギャンブラーの誤謬
行動経済学の「ギャンブラーの誤謬」とは、自身の経験や主観によって、合理的な判断を見失うことです。
例えばコイン投げを何度かしているうちに「いつも裏が連続で出た後には表が出ているから、そろそろ次あたり表だろう」などという判断をしてしまうのは、ギャンブラーの誤謬です。
冷静に確率論を使って合理的な判断をするならば、これまでに出た面は関係なく、次に出るのはそれぞれ1/2の確率で表か裏です。
その他の行動経済学の例5:現状維持バイアス
行動経済学の「現状維持バイアス」とは、「プロスペクト理論」と近い考え方で、手に入れた物を失うのを避けて現状を維持することを優先するバイアスのことです。
例えば定番商品を長く愛用しているユーザーが、新商品が発売されても定番商品を使い続けたいと考えるのは現状維持バイアスと言えます。新商品の売り上げを伸ばすには、こうしたユーザーの心理も踏まえてマーケティングを行う必要があるでしょう。
行動経済学について理解を深めよう!
行動経済学が私たちの生活や経済活動と切っても切れないものであることがお分かりいただけたでしょう。普段の何気ない行動も「これはアンカリング効果だな」と、行動経済学の理論をもとに見直してみると多くの例が見つかり面白いでしょう。
行動経済学はとても身近で、実用的かつ人間的な学問であり、相手の求める事を理解するために役立ち、仕事だけではなくあらゆる人間関係においても大いなる助けとなることでしょう。