ケイパビリティとは?
ケイパビリティとは、ビジネスでは「企業や組織の強みである部分を見出す考え方」を意味します。企業成長の原動力となる組織的な強みは、経営戦略を立てる際必要不可欠です。
「高い品質」や「迅速に業務を遂行する力」など、自社のケイパビリティを見出す事が出来れば、それらを生かした新たな市場の開拓やサービス展開を目指すことも出来るでしょう。
ケイパビリティを理解して上手に活用できるように具体例も交えてご紹介します。
ケイパビリティの定義
ケイパビリティとは英語で表すと「capability」です。直訳すると、人が保持する「能力」、「才能」、「素質」、「手腕」などを指す意味があります。
ビジネスでは組織がもつ能力や、組織自体が得意とする事柄や価値を概念的に表す言葉として使われます。つまり、ケイパビリティとは「組織力」を意味し、事業を成し遂げるために企業全体で発揮される力を表す言葉なのです。
コアコンピタンスとの違い
コアコンピタンスも企業の能力を意味する言葉として使われます。では、ケイパビリティとの違いは何なのでしょう。
ケイパビリティは企業全体の「組織力」を指しますが、コアコンピタンスは組織が持つ能力の中でも、その能力の核となる部分、「技術力」を指すのです。
ケイパビリティはある業務を進める能力、ある結果を生み出すことができる「能力」、コアコンピタンスは業務を進めるために必要な「技術力」と言えるでしょう。
自社のケイパビリティを理解する方法3つ
企業の成長や新しい展開、またライバル社との差をつけるためにはケイパビリティを理解することは必要不可欠です。では企業がケイパビリティを見極めるために必要なポイントは何でしょうか。
企業に必要なケイパビリティは、それぞれの企業が属する市場でどのようなポジションをとりたいのか、また、どのように成長の仕方を選択するかで大きく変わってくるのです。
自社のケイパビリティを理解する方法1:市場のニーズを読み取る
まずは自社の属する市場での現状や、立ち位置について考える必要があります。ケイパビリティを見出せたとしても、市場でのニーズと合っていなければ成果が期待できません。
なぜ、自社の商品が購入されるのか、市場にはどんなニーズや課題があるのかを明確にしましょう。
自社のケイパビリティを理解する方法2:自社の強さを見いだす
他社との差別化を図るため、自社の強みを見いだします。ライバル社の商品と比べ、自社が選ばれる理由を明確にすること、また自社にしかできない技術やノウハウなどの強みを明確化しましょう。
他社がすでに持っているものであれば、いくら優れていても強みにはならないからです。自社ならではと言える、独自性のあるケイパビリティを見つけ出しましょう。
自社のケイパビリティを理解する方法3:強みを最大化して、戦略に活用する
企業は、自社のケイパビリティを見いだすだけではなく、それを最大化して企業戦略に活用する必要があります。
このように、ケイパビリティを市場で競争優位性を保つために戦略に落とし込むことを「ケイパビリティ・ベースド・ストテラジー」と言います。
ケイパビリティを現場で活かすためには、どんな戦略をどのように実践したらよいかを把握することが必要不可欠なのです。
ケイパビリティを重視した経営を行うために知りたい情報5つ
では、実際にケイパビリティを重視した経営を行うためには、どのようにしたら良いのでしょうか。すでに、自社の強みを打ち出し、戦略を立てて実践してきた企業は多いでしょう。では、どのような違いがあるのでしょうか。
ケイパビリティを重視した経営、従来の経営戦略との違いや戦略の立て方などについて、見てみましょう。これでケイパビリティの重要性や、その戦略の立て方が理解できるでしょう。
知りたい情報1:従来の経営戦略との違い
従来戦略といえば、取り扱う商品をその市場性や価値といった、外的な側面によって自社の順位を高めるといったことを定石としてきました。
しかし、ケイパビリティを活用した戦略では、内的な側面である人や組織といった内的環境を重視し、組織としての強さで優位性を作り出すのです。
つまり、儲かる市場でなく、自社の強みや得意分野を高め、それらを持った戦略が大切だということです。これは重要なので覚えておきましょう。
知りたい情報2:企業の内面を強化する戦略
他社との力関係に注目するポジション・アプローチと違い、組織の内的側面を強化し、組織能力を高めて競争に勝つ、という戦略がケイパビリティです。
これを実現するには、社内の組織において対応や仕組みを構築する必要があります。組織内でスキルや情報システム、プロセスなどにおけるケイパビリティを高め、組織の全体能力を上げる事が、ケイパビリティの実践になるのです。
知りたい情報3:戦略の立て方
ケイパビリティ戦略の立て方のポイントは「会社のケイパビリティを定義する事」、「人材採用・維持」の2つです。ケイパビリティを定義するにあたり、自社の強みを考え、他社に負けないものを生み出すことが大切です。
また、採用した人材にケイパビリティを伝えることで、それが社会に広まるでしょう。企業の価値や優先順位がしっかりと構築されていれば、無駄な投資がなく、必要な人材を採用でき、人離れも減るのです。
知りたい情報4:優位性を開発する方法
優位性を開発するためには、自社のケイパビリティを把握し、他社との差別化をどのように行うかを見極め実践する事が重要です。
たとえば、生産市場においては品質やスピード、サービス市場においてはホスピタリティや施設設備の独自性などを最大限に活かせば、他社との優位性を確立することが可能と言えるでしょう。
知りたい情報5:自社の強みを見つける方法
需要なことは、全てのプロセスで優位に立つ必要はなく、自社の得意な分野においてケイパビリティを高めることです。しかし、同じものがずっと受け入れられるとは限りません。
常に変化する市場ニーズの把握方法を構築することが重要となります。そして、どのようなケイパビリティを優先するべきかを把握し、選択していくことが必要です。新たな展開をさせる場合にも、その価値を見極めていくことが大きなポイントとなるでしょう。
ケイパビリティを活用した事例
競争社会で優位に立つために、時代や環境の変化に合わせたケイパビリティの活用をし、成功を収めた事例があります。
ここでは「ダイナミック・ケイパビリティ」と「ケイパビリティ・ベースド・ストラテジー」の戦略を用いた二社の事例をあげて見ました。早速、活用方法について見てみましょう。
富士フィルム
富士フィルムはダイナミック・ケイパビリティの成功例です。ダイナック・ケイパビリティとは、環境変化に合わせてケイパビリティを変革させる企業自体の能力という定義を持ちます。
富士フィルムは既存の高度な技術や知識資産を徹底的に再利用、新しい知識や技術を開発しました。例えば、写真フィルムの技術を利用して、液晶を保護する特殊なフィルム、また化粧品・医薬品の開発の進出に成功しています。
株式会社ミスミグループ
株式会社ミスミグループはケイパビリティ・ベースド・ストラテジーを活用しました。前述にもあるように、これはケイパビリティを企業の戦略にまで落とし込む行動を意味します。
ミスミグループは金型部品や電子部品などを通信販売いていましたが、そこから、扱いの面倒な安価な細々した商品を効率的に調達・販売するオペレーションに長けていることが強みであると考え、医療用消耗品など新たな商材へと市場を展開したのです。
ケイパビリティについて理解し自社に強みを見出そう
現代は事業の外的環境が目まぐるしく変化する激動の時代と言えるでしょう。このような事業環境の中において、競争に勝ち抜く大きな原動力となるのはケイパビリティを重視した組織づくりです。
ケイパビリティを高める事で、持続可能な競争優位性の確保・向上が可能となります。市場のニーズや自社の評価に改めて目を向け、自社のケイパビリティを理解し、戦略を立て、他社と差別化を図り自社に強みを見出しましょう。