ゆとり世代とは?
ゆとり世代とは主に1988年~2004年生まれの年代を指します。
ゆとり世代という名の由来ですが、前世代の詰め込み教育でのやる気の維持が難しい事や、勉強に付いていけなくなる子供達も出てくるなどの、問題を改善するため「ゆとり教育」を導入された世代のことを指します。
ゆとり世代の多くは親と子のみで構成される核家族で育ち、身内以外の大人と関わる機会があまりありませんでした。さらに少子化によって、ゆとり世代は過保護気味に育てられた傾向があります。
ゆとり世代のマイナスイメージ
言われたことしかやらない
ゆとり世代も仕事がなにも出来ないわけではありません。与えられた指示や、仕事マニュアル通りにやればいい仕事はむしろ得意なことが多いです。しかし少しマニュアルから外れた応用力の必要とする仕事は苦手とする傾向があります。
なぜ苦手なのかというと、ゆとり世代にネット社会が急速に発展した事にあり、検索すればある程度の情報はすぐに手に入るのが普通になっていることが挙げられます。分からなければ考える前に調べるのが癖になっているため、調べてもわからないことに対しては弱いのです。
自分から行動を起こすことも苦手です。さらにゆとり世代は自分の意見を主張するよりも、他人がどう思うのか、その意見が正解かどうかを気にするため、失敗を恐れる傾向があります。もともとゆとり教育は、これまでの前世代に当たる詰め込み教育から強制される学習ではなく、自ら考え判断する機会を増やすことを目的とした方針でした。それによって、自ら問題を解決するための能力と他人との協調による豊かな人間性を育むために実施ともいえます。
しかし現実では、協調というよりも他の人と同じであること、他の人と同じようにできないのは恥ずかしい、というような意識が大きくなっています。できない=恥ずかしいこと=避けるべきことでありそのため、自分で考えて失敗するリスクを冒すよりも、誰かに指示されたことをその通りにやる安心感を取ってしまう人が多いようです。
ゆとり世代はストレスに弱い
ゆとり世代はストレスに弱いといわれています。自分に自信がなく、少し強く叱られると心が折れてしまい社会人の中でも「会社をやめい、行きたくない」と言っている人も多いのではないでしょうか。核家族で育った方も多く、身内以外の大人と関わる機会も少なかったため年上の他人との距離感がわからずない。また怒られ慣れていないこともありどうしてよいかわからず、怒っている人をみると委縮してしまうのです。
仕事よりプライベート
ゆとり世代は残業して稼ぐよりもプライベートの時間を大切にする人が多いようです。
それはゆとり世代の親がバブル崩壊後の不景気、就職氷河期と過ごしていたためそれを目の当たりにしているため仕事に夢や希望を持ちにくい傾向にあるようです。なのでいつ倒産したり、クビになるかわからない会社のために尽くすことよりも、自分のやりたいことをやることに重きを置く傾向が強いと言われています。またいつ会社がつぶれても大丈夫なように、どこでも通じるスキルや資格を身に着けたりする人もいるほどです。転職することを目的に入社する新社会人も多くみられます。
ゆとり世代のプラスイメージ
ちゃんと指示を受ければできる
いちいち指示を細かく言わなければ分からないのか…と思うかもしれませんが、誰でも最初は教えてもらわないとできません。「言われたことしかやらない、できない」というのは逆を言えば「ちゃんと支持を受ければできる」ということです。
これはゆとり世代だけの問題ではなく、社会人すべての世代にも同じことが言えるのではないでしょうか。
ITに強い
幼いころからメディアに触れてきているため、ゆとり世代はIT関連にあまり苦手意識はなく、むしろ強みを持っていると言えます。情報社会の発展してきた時代を生きてきたゆとり世代にとって、スマートフォンなどのメディアが身近にありました。詰め込み世代から開始された、IT系の授業での教える側の技術も向上し、安定した知識を得ていること。現代の社会人において複雑化していく情報社会で役に立つ能力とも言えるのではないでしょうか。
現実的な考えをする
仕事に夢を持たない世代と書きましたが、逆を言うと堅実とも取れます。
バブル世代後の不況な時代しか見てこなかったため、高度経済成長のような好景気というものを知らないのです。社会人として会社貢献をするよりは、自身のスキルアップを目指す人も多くみられます。
仕事でも堅実さ、安定さを求めることが多く、冒険をせず、自分にとって良いものを選ぶという志向が強くみられます。
社会人の年代別離職率
生まれ年と就職してから3年目までの離職者数を厚生労働省のデータを元に記入しています。
(2016年度データ)
各世代別の離職率(高卒編)
各世代別の離職率(大卒編)
社会のイメージと違った結果
調べてみると、ゆとり世代の印象とデータに違いがある、と感じたのではないでしょうか。意外にもゆとり世代のの離職率は低く、離職率が高いのは就職氷河期世代となりました。
就職氷河期世代の方は、その名前の通り、就職求人倍率がすごく低かった人達です。高卒で0.5~0.6程度の求人倍率。就職したい人が100人いたら、求人が50~60の求人しかなかったのです。残りの40~50人は就職できませんでした。大卒でも1.0倍を下回っていたそうです。実際に社会人として働いてみたものの、自分のやりたい職種と違う、思っていた仕事と違うなどの壁にぶつかり、離職した人も多いのかもしれません。その点、ゆとり世代は堅実さを求める人が多いため転職などの冒険をせず、堅実に同じ職場で働く人も多いのでしょう。
ゆとり世代から見たゆとり世代
ゆとり世代へのアンケート
アンケート(※)で「ゆとり世代と呼ばれることについてどう思いますか?」と聞いたところ、「嬉しい」・「どちらかというと嬉しい」という人はわずか9.5%、「どちらかというと嫌だ」・「嫌だ」という人は57.7%、「何とも思わない」という人は32.8%でした。
また、「『ゆとり世代』の特徴は何だと思いますか?」と聞いたところ、「打たれ弱い・失敗を恐れる」が17.0%と最も多く、「仕事や仕事上の付き合いよりプライベートを優先させる」が14.7%、「スマホ・ケータイ依存」が14.0%と続く結果となりました。
最後に「『ゆとり教育』を受けた世代で良かったと思いますか?」という質問をした結果、「とても良かった」・「どちらかというと良かった」が27.5%、「どちらかというと良くなかった」・「全く良くなかった」が28.6%、「どちらでもない」が43.9%でした。
社会人68.6%の「ゆとり世代」が「ゆとり」を自覚 している
「自分自身や同世代の人々は『ゆとり世代』だと思いますか?」という質問をした結果は、「『ゆとり世代』だと思う」と回答した人が33.4%、「どちらかというと『ゆとり世代』だと思う」が35.2%、「どちらかというと『ゆとり世代』ではないと思う」が12.9%、「『ゆとり世代』ではないと思う」が18.5%でした。
結果「ゆとり世代」自覚派が68.6%、「ゆとり世代」否定派が31.4%になりました。
社会人でよくみられるゆとり世代の特徴
前項で一般的なゆとり世代の特徴を説明しました。その中の幾つかは、職場における特徴にもなっていました。社会人のゆとり世代の特徴として他にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、2016年4月に実施された「あなたの職場のゆとり世代に当てはまる特徴」についてのアンケート結果(※)をご紹介しましょう。
社会人からのゆとり世代への印象
社会人の中でゆとり世代についてのアンケートをしたところ、こんな答えが返ってきました。
1位:19%「指示したことしか行わない」
2位:15%「言い訳ばかりする」
3位:12%「敬語の使い方を知らない」「全てマニュアル通りで自分の頭を使って考えない」「根拠のない自信」「軽く叱ると直ぐ仕事を休んだり『辞める』と言う」
4位:8%「電話に出ようとしない」「コミュニケーションをとろうとしない」
既に挙がっている項目もありますが、ゆとり世代について、社会人の中においてもこれまで説明してきたマイナスイメージにフィットするような項目が挙がっています。
地道にコツコツすることはしたがらない
ゆとり世代の特徴として、会社で中々結果が出ない、見通しがたたない、日々努力を積み上げることが必要な仕事が苦手です。
興味がなくなる、もしくは途中でやめてしまうという傾向が強いと言われています。
将来、社会人として職場でどのようになりたいのか?という点について見通しを持つ事が困難というのも、ゆとり世代の職場での特徴でしょう。
高度成長期のように、自分のスキルアップが会社内での成長とも考えることができず、そもそも生まれた時からずっと景気が悪く、未来には、明るい見通しを持つよりも、不安の方が先に立つからかもしれません。
上司との付き合い(お酒)をキッパリ断る
社会人において会社では働く仲間とご飯に行ったり、飲みに行くということは、コミュニケーションをとり、お互いを知ることで円滑に仕事を進める事にもつながります。しかし、せっかく誘ったお酒を断られたり、会社の飲み会に出席しない事も多くみられます。
調査によると違う世代とのコミュニケーションに強い不安を感じている社員がとても多いそうです。
ゆとり世代はその苦手意識から、就業時間外のプライベートな時間を割いてまで付き合おうとはしません。社会人として過ごすのではなく、自分だけのために時間を使おうとするのです。
顧客よりも自分のやりたいことを優先
ゆとり世代の職場での特徴としてよく指摘されているのが、指示がないと自発的には動かない、入社して期間が経ってもお客様感覚(新人感覚)が抜けきらない。外からかかってきた電話には、対応の失敗を恐れていることや、自分がやらなくても誰かがやるという気持ちがあり、決して出ないという事もあるようです。
このような行動が、他の世代から「社会人としての自覚が足りない」と言われてしまう原因にもなっているようです。
指示待ち、受け身のお客様感覚
一社会人として顧客のニーズに応えるというより、自分の考えを重視する傾向が強くみられます。
実践する力はないのに自説を自信満々で主張する。
他の人の意見を聞き入れられない視野が狭いところも、ゆとり世代の特徴として指摘されています。
社会人として、良いものを吸収する機会を自ら手放してしまってることもあるのではないでしょうか。
実際にゆとり世代との職場を体験をして
実際に私が社会人として働き、ゆとり世代と呼ばれる年代の女の子と働いていた時の話です。
遅刻をしても事前に連絡を入れない
繁忙期、社員である彼女が入店時間になっても出勤していないことに気付き、電話を入れても着信に出ることはありませんでした。初めはまさか何か事故にでもあったのではないか、と心配していましたが、1時間後に何事もなかったかのようにお店にやってきました。どうしたのかと聞くと「寝坊してしまった」と話します。人間ですので失敗はあります。繁忙期で忙しかったこともあり寝坊も甘い考えかもしれませんがしょうがないことだと考えています。
しかし、実際の問題は何も連絡を入れなかったところにあります。お店には社員だけでなく、多数のアルバイトさんがいます。彼らに時間になっても引継ぎができないため帰れないなど支障が出てきてしまいます。彼女としては、怒られたくない一心で急いで出勤をしてきた、というのが見てわかるのですが社会人として、報連相ができない事は致命的です。
仕事の優先順位をつけられない
お店ではショッピングモールなどの商業施設に入ってることもあり、施設内全体の売り上げとお店の売り上げを他店舗と去年と比較し販促を打つという流れがあります。私が新人の店長だったこともあり、上司のエリアマネージャーが直接私にではなく、彼女に売り上げの動向を見てほしいとの連絡があったようです。ショッピングモールでは営業事務所に売り上げや昨年比が書いてあるファイルがあります。お店が地方店だったこともあり、エリアマネージャーは直接見ることができなかったため彼女に頼んでいたのです。いつまでという期限があったので、前日にできているのか確認を取ったところ、やっておらず先月分の期限分もまだできていないということが判明しました。自分の仕事を把握していつまでに、どの仕事がどのくらい時間がかかるのかというのがというのはわかっているようです。しかし、自分ではやりたくない仕事を後回しにしてしまう癖があるようで期限ぎりぎりになってしまったり、過ぎてしまったりということが出てきてしまうようです。
自身がある、信頼されている事には一生懸命
店長になってから、シフト作成や発注などの仕事が増え、自身がお店に立つとこも少なくなりました。暇な時間帯には事務をしてる事も多く、彼女にお店を責任者として見てもらうこともよくあります。もちろん事務の合間に様子を見に行きますが、彼女自身、長年アルバイトから積み重ねてきたこともあり、自信もあります。むしろ暇な時間には、彼女自らから「お店は大丈夫なので事務をやっていてください」と言ってくれることも多く、とても頼りになる存在です。
同じ社会人として扱ってあげることの大事さ
ゆとり世代の彼女と働いてみて感じたことは、彼女の行動や考えをよく見ていれば働くのは苦ではないということでした。遅刻はするしその後も連絡を入れることはなかったですが、それを取り返そうと一生懸命に働いてくれてるのも受け取れました。一社会人としてみるとまだまだ未熟な面も多いですが、同じ仲間としてコミュニケーションをしっかりととることができればとても心強い味方になってくれました。ゆとり世代だからと壁を作ることなく、一人の人間、部下としてほめるところはほめる。ダメなところは注意をする。自身がついてきたものは思い切って任せてみる事で、彼女自身にもより自信が付き、自ら行動するなど、社会人としてもレベルアップしていけるのではないかと思います。
ゆとり世代と決めつけず同じ社会人としてしっかり扱ってあげることが大事なんだと感じました。
ゆとりだからと決めつける前にすること
好きでゆとり世代になったのではない
ここまでの説明からも、どうやらゆとり世代は社会の状況などから多くの影響を受けていることが分かります。そして、「好きでゆとりになったのはない」という若者の意見も頷けるかもしれません。しかし社会人において、会社の上司など、ゆとり教育以前の大人からみれば「努力が足りていない」「甘えている」「だらしがない」などと見えてしまうのもきっと事実なのでしょう。 時代は日々急速に移り変わっています。今ではすでにゆとり教育は廃止されて、「脱ゆとり」世代なるものが生まれてきています。ゆとり世代とは日本の教育方針の変更によりほかの世代にはない環境で育ってきました。なので社会人になっても、ほかの世代に理解されにくい世代とも言えます。
社会人としてはまだまだ、でも認めてほしい
指導者となる社会人と、指導を受ける新社会人では生きてきた時代の風潮が違いすぎてお互いに理解できない部分が多く出てくるのも当然のことです。しかしだからといって「これだからゆとりは…」などと決めつけて評価してしまってはうまくいきません。ゆとり世代の全員が全員、ネガティブな特徴を持っているわけではありません。 指導者側も新社会人側も、「ゆとりだから」と決めつける前に彼ら、または自分たちがどんな風に考えて、何ができるのかをしっかり確認しましょう。「ゆとり」という枠にとらわれず、一人の上司と部下として歩み寄っていくことが大切です。
ゆとり世代と働く社会人として読んでおきたい著書
“ゆとり世代”を即戦力にする50の方法 井上健一郎(著)
この本はゆとり世代を理解するための本だと言えます。なぜなんでこんなことをしてしまうのか、事例を交え丁寧に書いてあるのでゆとり世代が理解できない、どう近寄ればいいかわからない社会人の方にお勧めです。
池上彰の「日本の教育」がよくわかる本
情報量が多いながらもわかりやすく、ゆとり世代や、日本の教育方針について書いてある本です。今までの日本の教育方針や教科書の制作過程、いじめ問題、給食に至るまでの歴史を学べる一冊です。社会人が読んでも面白く、持っておきたい著書です。
見ればわかる!社会人常識学習
社会人に大切なモラルやマナーが見れるDVDです。
ゆとり世代の社会人の方に見てほしいとても勉強になるDVDになっており、実際の職場シーンで直面しそうな場面を組み込んだ学習プロセスを採用しています。 受講者はこの学習プロセスに沿って、必要な知識やスキルを効率よく習得可能です。
好印象を持たれる「身だしなみ」についても紹介するなど内容もパワーアップしています。 企業の教育担当の方はもちろん、これから新社会人になる学生の皆さんにもわかりやすい内容になっています。
この他に「見ればわかる!社会人常識学習(女性版)もあります。
おすすめ著書
“ゆとり世代”を即戦力にする50の方法 井上健一郎(著)
池上彰の「日本の教育」がよくわかる本 池上彰(著)
見ればわかる!社会人常識学習
同じ社会人として働く上で
ここまで「ゆとり世代」の特徴、社会の中での考え方や、社会人のゆとり世代が持っている、自分たち自身のアンケート結果を書かせていただきました。
「ゆとり世代」という言葉が独り歩きし、悪いイメージを持たれながら社会人として生きてくのはとても悲しいですね。
日本の教育方針に振り回された彼らは、この日本社会において被害者なのかもしれません。
これを読んで、少しでもゆとり世代への理解が深まるといいなと思います。
そして、ゆとり世代の方は社会人として生きていくために、自分達が特殊な教育方針のもと育ってきたことを理解して下さい。
違うからと壁を作るのではなく、お互いに歩み寄る努力ができれば良い関係を築けるのではないでしょうか。
【参考文献】
http://wwwhttp://raorsh.com/yutori(Raorsh)
http://www.lisalisa50.com/research20160428_5.html(リサーチリサーチ)
http://the5seconds.com/generation-educated-latitude-5487.html(5セカンズ)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/15-2/(厚生労働省)
※【調査概要】
有効回答:首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)在住で20歳〜28歳の男女688名(学生は除く)
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査期間:2016年4月12日(火)〜4月19日(火)