客引きに気をつけよう
「可愛い子、そろってますよ! 1時間3000円ぽっきり!」 「お姉さん、ホストクラブって行ったことある? 少し覗いてみない?」 など、夜の華やぐ繁華街を歩いたことがある人ならば、1度はこんなふうに声をかけられたことがあることでしょう。 客引き――。 好奇心や性欲を煽る巧みな話術と、屈託のない笑顔で店へと誘い入れる方法、正確に言えば営業手段、それが客引きです。
様々な被害報告があるにも関わらず、それはニュースで取り上げられるほどなのに、客引きは決してなくなることはありません。 それはなぜか? ここでは客引きに焦点を当て、様々な客引きの区分の説明、客側・経営者側からの見解、客引きに引っかかる人の心理、そしてもしぼったくりに遭ってしまった時の対処法などを詳しく解説していきます。
客引きとは
客引きと聞くと、キャバクラやガールズバー、ホストクラブなど魅惑的な店を連想しがちになりますが、居酒屋やバーやカラオケ、もっと言えば絵画なども客引きはあります。 この同じ客引きという行為なのですが、実は違いがあります。
客引きは風営法で違反?(風俗店の客引きとそれ以外での区分)
客引き行為は、「風営法」で規制されているもの、そして「迷惑防止条例」で規制されているものがあります。 つまり客引きは、法律上ではふたつに分類されているということです。 風営法は風俗店、迷惑防止条例は風俗店以外の店、が対象となります。 ちなみにアダルト系の店やキャバクラはもちろん、ゲームセンターやパチンコ店、雀荘なども風俗店と見なされます。 また居酒屋も風営法上の「深夜酒類提供飲食店」と呼ばれ、該当します。
風営法の詳細
客引き行為は風適法第二十二条により、以下の行為を禁止しています。 一 当該営業に関し客引きをすること。 二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。 当該営業とは、そのものに関することという意味なので、ここでは風俗店を指します。 わざわざ項目を分類しているのには意味があり、
「一 当該営業に関し客引きをすること」だと、これは「営業に関し」と限定してしまっています。 すなわち、「社長、もう一杯どうですか?」と声をかけられた時点では、店を特定していないので(すなわち誘引になっていないので)、この処罰には該当しません。 ただ話しかけた、と判断されるのです。 ということから、次の補足的項目があり、 「人の身辺に立ちふさがり」 「又はつきまとうこと」 これを禁止しますと謳っているのです。 すなわち店名を出さなかろうと、これをすれば処罰に該当すると。
ただ、「一 当該営業に関し客引きをすること」に関して詳しく述べると、最後には特定の店に誘うことになるのが当然です(そうしないと客引きの意味がありませんよね)。 つまり絶対に処罰の対象となるのが当たり前なのですが、実はここが微妙なところなのです。 それは、 「よし、3000円ぽっきりだから行こう!」 と営業対象者が思った場合、もっと言えば、対象者自らが立ち止まり、その客引きの話に耳を傾けた場合、風営法が曖昧になってしまうのです。 これについては、下記項目の「法律に引っかかる客引きと引っかからない客引きの区分」で詳しく述べます。
迷惑防止条例の詳細
公衆の場において迷惑をかける暴力的不良行為を防止し、住民の平穏な生活の保持を目的として存在するのが迷惑防止条例です。 47全ての都道府県にあり、内容は微妙に違えど、「迷惑行為を防止する」という基礎的な部分はどこも同じです。 例を挙げれば、 「この通りにおいて、チラシ・ティッシュ配りや客引き等の行為を禁ずる」 という看板が立て掛けられているのは、迷惑防止条例に基づくものです。
業種を分類(風俗店か、そうでないか)していませんので、あらゆる営業が禁止されるということになります。 コンタクトレンズのチラシ、接骨院のティッシュを配っていても、禁止区域では罰せられるということです。 ひいてはここでお分かりになるように、客引きは、風俗法においては、「風俗店」と「風俗店以外のもの」で分けられるのですが、迷惑防止条例においては、その線引きはありません。 客引き行為は、迷惑防止条例においてはどんな業種だろうと同じ、すなわち広範にわたって違反になるということです。 補足すれば、風俗店に関しては、 「風営法、及び迷惑防止条例において処罰を銘ずる」 というパターンもあるということです。
法律に引っかかる客引きと引っかからない客引きの区分
「人の身辺に立ちふさがること、又はつきまとうこと」 これは風営法で禁止されていますし、明らかに迷惑と見なされるので、迷惑防止条例に該当すると言えます。 ですが先述した通り、自ら立ち止まり、耳を傾けた時点で、どちらも違反にはならなくなってしまう現象が起きます。 立派な営業方法であり、客引きが役立つ情報・きっかけの提供者となるのです。
それがクリーンなお店ならなおのことです。 つまりどんなに問題視されようと、客引きがなくならない原因はここにある、と言えます。 だから客引きはケースバイケースとなり得る可能性が高く、今もひとつの営業手段として存在し、巧みに法律をくぐり抜けることに成功しているのです。
客引きはぼったくり?(ぼったくり店と正当な店の区分)
客引きを続ける店が多いのは利益が大きいこと、声をかけることにより店へと足を踏み入れる人がたくさんいるからでしょう。 当然、客引きをきちんとした形で使い、クリーンな営業している店も存在します。 チェーンで展開するカラオケ屋の客引きに、眉をひそめる人は少ないでしょう。 ですが、よくよく考えれば、悪質か悪質ではない客引き(店)か、その判断もやはり難しいのです。
明らかにぼったくり、そして明らかにクリーン、こういった分かりやすい店ばかりじゃないのが現状なのです。 悪質寄りだけど払えない金額ではない、という店も数多くあります。 「こんなものか」 「まあ楽しかったし、しょうがないか」 と客に思わせる雰囲気であり、料金ということです。 ようするに、「これは悪質な客引きを使っての悪質な店ですよ」と判断できない、そんな方針で営業している経営者も数多くあるということです。 客の受け止め方を上手く利用しているのです。
客引きの多い地域の特徴
繁華街と言われる場所に客引きは必ずいます。 出張で訪れた、次に行くお店を探しているなど、「楽しい情報」を待っている人がたくさんいる立地です。 新宿歌舞伎町 秋葉原 札幌すすきの 福岡中州 と有名処を挙げてみましたが、どこの地域だろうと、「遊びに行こう!」と考えた場合において選択肢に上がる繁華街には必ず客引きはいます。
提供できる情報の数が多ければ多いほどいる、と考えて間違いないです。 加えて言えば、性欲を刺激するネオンが建ち並ぶ場所において、客引きは特に多いです。 客引き側にしてみれば、 「まさかこの時間に観光じゃないよね? 帰り道でもないよね? 店を明らかに探しているよね」 と営業対象者を分別しやすい場所とも言えます。
客引きに引っかかる人の心理
これは好奇心であり、下心であり、そして勢いでしょう。 客引きに引っ掛かりやすい人は、警戒心や注意力よりも、それらが勝っているのです。 そしてさらに客引きのトーク術により、心底にある、それらの感情を煽られ、お得感を強調され、店に訪れるというパターンです。 いい言い方をすれば、「素直」「人生の楽しみ方を知っている」、 悪い言い方をすれば、「単純」「人を信用しすぎ」 と言えます。
客引きに引っかかりやすい人が気を付けるべきこと
客引きに声をかけられたくない、あるいは自我を抑えたいと思う方は、風俗法に基づき、下を向き、立ち止まることなく早足で歩けば、まず声はかけられません。 これは客引き自体も、「風俗法」であり「迷惑防止条例」を知っているからです。 それでもなぜか客引きに話しかけられてしまうのなら、店に訪れてしまいがちならば、心の奥底に、もう一段階、ガードを作っておいてください。
最後の砦というべきもうひとつのガードです。 詐欺に関しては、詐欺をする人は絶対に怪しい恰好はしていません。 爽やかな恰好をしています。 一方、ぼったくり店という詐欺行為に関しては、店自体が分かりやすいほど怪しげです。 健全なイメージは絶対と言っていいほどありえません。 賑わい、華やかさ、それとはほど遠いです。
客引きは明るくとも、店は怪訝さを抱くのが断然多いです。 料金表さえも見当たらない店内です。 つまり、腰かける前に、 「引き返すのなら今! まだ間に合う!」 という最終選択ラインが存在しています。 客引きの絶妙なトークにより、そこで楽しむぞ! とすぐに断定するのではなく、とりあえず店を覗く、というもうひとつのガード、心構えを必ず作っておいてください。 怪しげならば電話がかかってきたフリでもして、立ち去りましょう。 そこで腕ずくで止めてきたら110番でOKです。
客引きにもし遭ってしまったら
適正な金額で営業し、客引きを営業手段と真摯に考えている店にとっては迷惑な話ですが 客引き=ぼったくり というイメージはあります。 また、どんなにぼったくり店が摘発されようと、それは氷山の一角で、まだまだ不当な店は事実、存在します。 そんな氷山の一角にもし遭遇してしまった場合、ようするに不正な金額を請求されてしまった場合、大抵、プライドや恐怖や諦めからお金を払う人がほとんどのはずです。 「俺なら警察に助けてもらう!」 と思う人もいるかと思いますが、実は電話をしたところで助けてくれないのが現実なのです。 民事不介入を盾に双方で解決してください、と言われてしまうのがオチなのです。
詐欺、脅迫と訴えても、認証がないと被害届は受理できない、と言われてしまいます。 警察は店に強制的につれていかれるのを防いではくれますが、店に入り、一杯でも飲んだら助けてくれないということです。 ですが、110番しても意味がないとは言いません。 警察内部で店側の人間と話し合うという流れは、よくある、「社員証、免許書のコピー、ATMへ直行」というような展開になることを防げることができるからです。 とりあえず110番、もっと言えば弁護士に連絡、そう頭に入れておきましょう。 仮に自分で解決する、ということならば、冷静さとふてぶてしさ、そして話術が必要です。
その中で大事なことは、 50万円の請求を0円にすることは困難 ということだけは覚えておいてください。 飲み食いしたのは事実なのですから。 請求金額の不当さを伝えたいのがこちらの思いなので、 いくらで妥協させるか、納得させるか、 これがキモとなります。 最低限に抑えて帰ること、これを念頭に置いておいてください。 また、 「民事裁判を起こしてください」 というのも手です。
こちらが訴えるのではなく、店に訴えさせる、つまり正当な料金という証明を店側にさせるということです。 面倒臭い人、それを向こうに植え付けて逃げる手段です。 まあ面倒なことを防ぐ1番の方法は、法律を無視して客引きしている人は、怪しげな店と直結している可能性が高いのでついていかない、です。
客引きに問題があれば営業が停止になる
店側としても「外営業」と言うべき、客引きには気を付けなければいけません。 今はSNSの時代なので、おかしなことをすればすぐに拡散されてしまう可能性があります。 あるいは最後に勝つのは証拠の有無なので、客引きの段階から録音なり録画なりをしている人もいます。 知らなかったで済まされないのが法律の世界です。 客引きもひとつの営業手段と考えるのならば、気を付けて行ないましょう。 特に脱サラして店を開業した! 頑張るぞ! という健全な野望を抱いた人は、1度の失敗が命取りとなります。
客引きには気をつけよう
「客引きに引っかかるのは人生の勉強のひとつ」 と考える人もいるかもしれません。 逆に、 「絶対に信用しない!」 と思っている人もいることでしょう。 どちらが正しいとは言えませんが、どちらも過剰に偏りすぎた考えは危険と言えます。 失敗はしないほうがいいですし、逆に殻に籠もっている状態ならば、人生はつまらないものになります。 適度な警戒心と勇気・勢い、そのバランスを気にしながら、日々の生活を充実したものにしてくださればと考えます。