上手な部下の叱り方と褒め方
勤務してそれなりの年数がたつと、人の上に立ち、場合によっては部下を叱り、また褒めることも出てきますよね?叱り方や褒め方にもどうやらコツがあるみたいですよ。今回は部下を叱るとき・褒めるときのポイントについて、考えてみましょう。
部下の叱り方のポイント
叱るということは怒ることとはちがいます。同じことだと考えている方もいるかもしれませんが、このふたつには大きな違いがあります。怒るというのは感情に任せて、ただ一方的に部下を責め続けるような行為です。いっぽう叱るのは、「部下の行動をよい方向に変えていくためのフィードバック・提案」としての意味があります。
叱るのは、部下に対してどうあるべきかを提示し、今後どう行動を改善していくかを提案することでもあるのです。これが部下をのばす効果的な叱り方ということになります。
理論立てて話す
上手に部下を叱るのには、理論立てて話すことが大事です。部下が何かミスをしたときには、つい感情的になってしまう方も多いでしょうが、ここはぐっとこらえて、論理的に話をしましょう。
どうして叱っているか理由をわかりやすく
部下を叱るのは、その人が成長することをうながすためです。叱られている側が素直に受け止められるように、反省しやすいような叱り方をこころがけましょう。叱っているのは「ミス」についてで、部下の性格まで悪いと言っているわけではないことを明快にします。罪を憎んで人を憎まずといったところでしょうか?
叱った後にきちんとフォロー
部下を叱ってから、その部下がきちんと反省し、行動をあらためているかどうかをチェックします。叱ったことで、部下が行動を改善していたら褒めてあげ、評価しましょう。ただ叱られるだけでは、部下もやる気をなくしてしまいます。
しかしまたミスをくりかえすようであれば、もう一度叱ることになるでしょうが、このときは二度目ですし、多少感情的になるのはやむを得ません。何度話しても直せないのなら、その仕事が部下に向いていないのです。そう判断しましょう。
部下のために、という視点で
部下に「ストレス発散で叱られているのでは?」と思われたら、元も子もありません。部下の立場になったときに、ここで叱っておかないとためにならない、重要なことだから今後のことも考えて叱るのだ、という目的やバックグラウンドがあることも含めて、部下に話します。
公平さを守る
上司も人間ですので、当然部下の中でも好き嫌い、ウマが合う合わないもあるでしょう。ですが部下の叱り方では、この点に注意して、叱るときに不公平になっていないかというのを常に考えます。同様の失敗をしても、叱られる人とそうでない人がいるのでは、明らかにおかしいし、不公平ですよね。もし自分が同じような叱り方をされたら、きっと嫌なはずです。
部下の性格・気質をよく知る
その部下がどういうタイプ・性格なのかを見極めることも重要です。叱られて伸びる人か、叱られると落ち込む、反抗するタイプなのか?を観察しましょう。
自分に置き換える
自分が部下だったら…と考えてみてください。そうすれば、おのずとどんな叱り方がよいのかも見えてくるのです。「自分ならこういう言い方をされたくはない」「こんな叱り方は嫌だ」と思う言い方をしないように気をつけましょう。
教師の叱り方に学べ!
学校の先生は「人を育てるプロ」ですね。叱る・褒めるということを避けて通れない職業でもあります。教師の方々はどんなことに気をつけて、叱り方をこころがけているのでしょうか?
生徒たちは叱られることが嫌いではない
実は生徒たちは、決して叱られることを拒否しているわけではないのです。いけないことをしたら叱られるのは当然とわかっており、「きちんと叱ってほしい」と思っているのだとか。教師に叱られることで、生徒たちは自分の存在を確かめ、先生が自分を見てくれていることを実感するのです。では教師の方は、ふだんどんな点をおさえて生徒を叱っているのでしょうか?
愛情を持って本気で厳しく叱る
教師の叱り方のポイントは次の4つに分かれます。
・ルールや道徳違反には公平に対応する
・どこがよくないかハッキリとさせ、本気で厳しく叱る
・愛を持っておそれずにタイミングよく叱る
・生徒たちをしっかりと見守り、注意するべきことを見過ごさない
このように見ていくと、部下の叱り方のポイントとも共通することが多いと思いませんか?
部下の褒め方はどうすればいい?
さて部下の褒め方ですが、褒めるときはどんなことを気をつけるべきでしょう。特に日本人は褒めることが下手・苦手な民族であるようです。褒めることこそ、部下を大きく育てる大事な仕事とも言えます。
長所の発見メモを作る
人間は得てして短所ばかりに目が行きがちで、長所はなかなか目につきづらいものなのです。そこで「長所を発見するメモ」を作って、部下のいいところを見つけるように、日頃から努力します。部下のいいところ・美徳をメモしておくことで、褒め言葉としても使えますし、洞察力を養うこともできます。部下との会話でもこれを活用すれば、会話も盛り上がることでしょう。
ささいなことでも褒めてあげる
上司は自分のものさしで考えてしまうため、「このくらいできて当然だ」と部下のことも見てしまいます。部下の能力にマッチしたものさしで考え、褒めるべきところはちゃんと褒めてあげるようにしてください。
大きな結果だけですと、褒める機会も少ないので、小さなことでも褒めるようにし、具体的にどこがよかったのかを言いましょう。「早くできたね」「文章がわかりやすくていいね」など、どんどんすすんで褒めるようにします。
結果だけでなく途中経過も褒めよう
上に立つ人は、結果がよければそれでOKという考え方ではいけません。たとえ失敗や未完成など悪い結果だったとしても、その過程を認めることが重要です。失敗して落ち込んでいる部下がもしいたら、「今回の結果は残念だったけど、○○ががんばったのはよくわかっている。これで成長できたんだから、また次回がんばろう」などと励まします。
褒めるときはタイミングよく
褒めるときは、タイミングを間違えてはダメです。見つけたらその場ですぐに褒めると効果もバツグンです。部下は嬉しくなってモチベーションも上がることでしょう。たとえその場に上司がいなかったとしても、あとで報告を受けたときに、「報告で聞いたけど」と切り出して、褒めるようにします。褒め忘れていた…とあとから思い出したら、そのときにすかさず褒めるようにしてください。
ねぎらう言葉も忘れない
外回りの営業から部下が戻ってきたら「ありがとう、お疲れ様」というねぎらいの一言をかけるようにしましょう。寒いときは「寒い中ごくろうさん」暑いときは「この炎天下の中大変だったな」などとやさしく声をかけます。上司の何気ない言葉で、部下はがんばろう!と思えるのです。ねぎらう言葉はいくら多くてもかまいません。なるべく口に出すようにしましょう。
褒め言葉にプラスアルファ
褒めるのが不得意な人は、ただ褒めることだけ考える人が多いようです。褒め言葉だけ単独で使おうとすると、結構むずかしいので褒め言葉に何かプラスすると言いやすくなりますよ。
【褒め言葉+課題】
褒める言葉に追加して、ここまでできたのだから、次は〇〇もやってみようと言ってみます。課題を出されれば、自分の成長を認めてもらったという実感も沸いて、部下も励みになりますね。
【褒め言葉+激励】
褒める言葉に続けて、「次も頑張ってね」「期待しているよ」などの言葉をかけます。これも自分が評価されているという思いが強くなり、部下の成長につながることでしょう。
叱り方の本も参考に
アンガーマネジメント 叱り方の教科書
筆者の安藤氏は、「アンガーマネジメントコンサルタント」という肩書を持ち、怒りの上手なコントロールの方法についても著書があります。本著では叱り方のコツを解説し、人を叱る意味について説明しています。
上手な叱り方をマスターしよう
人間には感情があり、その日の機嫌もあるので、怒るのではなく冷静に「叱る」という作業は、奥深くむずかしいことでもあります。常に自分が叱られる側になったら…ということを推測し、相手の気持ちも配慮して、叱るようにしましょう。飴とムチではありませんが、叱ると褒めるもバランスよく使ってください。褒めすぎでもよくないですし、その逆もしかりです。適度なバランスで部下を伸ばし、育ててあげましょう。