定額残業代とは?定額残業代制を正しく運用する3つの方法

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定額残業代とは?

残業代は本来、「15時間の残業なら15時間分」というように、実際に残業した分が計算して支払われます。このため、給与支給が毎月の場合は、その月の残業時間に応じて残業代が変わります。深夜残業や休日出勤などがあった場合も同じように、時間に応じて手当が変わるのが一般的です。

定額残業代は、深夜残業を含めた残業や休日出勤が一定時間あることを想定し、給与に固定時間分の残業代をあらかじめ含める労働契約のことです。

定額残業代のしくみ

定額残業は「固定残業」や「みなし残業」と呼ばれますが、大きく分けると「固定の残業代を支払うという意味で使われるみなし残業」という意味で使われる場合と、「みなし労働時間制に基づくみなし残業」という意味で使われる場合があります。

同じような制度なので誤解している方も多いですが、「固定残業代」と「みなし残業代」には大きな違いがあります。誤った認識でいると、残業代未払いとなる可能性があるので注意しましょう。

固定残業代とは

固定残業代(固定の残業代を支払うという意味で使われるみなし残業)は、設定された残業時間を超えた場合、企業は超過分の残業代を支払う義務があります。

例えば、「月10時間分の固定残業代」と就労規則で定められており、実残業時間が20時間の場合、企業は超過した10時間分の残業代を支払う必要があります。みなし残業という名に惑わされて残業代は出ないと思い込んでいる人が多いですが、これは労働基準法違反です。

みなし残業代とは

「みなし労働時間制に基づくみなし残業」は、設定された残業時間を超えた場合であっても、企業は残業代は支払わなくてよいことになっています。

例えば、「月10時間分の固定残業代」と就労規則で定められており、実残業時間が20時間の場合、企業は超過した10時間分の残業代は支払わなくてもよいということです。

定額残業代制度の正しい3つの運用方法

定額残業代は職種によっては欠かすことができない残業代の制度ですが、企業で定額残業代制度を新たに導入したり、現行の制度を見直す際は、どのようなことに留意して運用すればいいのでしょうか。

ここからは、定額残業代制度を正しく運用していく方法についてご紹介します。誤った運用方法をしていると、労使間でトラブルになる可能性があるので注意が必要です。

1:定額残業時間と定額残業代を明示する

定額残業代制度を導入する場合、定額残業時間と定額残業代を明示する必要があります。例えば、求人募集の給与欄に「月給○○万円(定額残業代を含む)」と記載されていた場合、定額残業代はいくらなのか、残業はどの程度あるのかなど具体的に分かりません。

そのため、具体的な定額残業代の金額と残業時間を明示して、求人応募者に分かりやすくする必要があります。「月給○○万円(△時間分の定額残業代□万円を含む)」などです。

2:必ず労働者へ周知する

企業が定額残業代を導入する場合は、定額残業代を導入することを労働者に知らせなければなりません。口頭やメールなどで説明するだけでなく、就労規則などの書面で従業員に周知しましょう。

「雇用条件通知書」を作成して配布する場合は、定額残業代と基本給やその他手当をきちんと分けて明示しましょう。

3:定額残業の時間と実労働時間が異なる場合

定額残業で働いていると、定額残業時間と実労働時間が異なることがほどんどです。では、実労働時間がみなし時間を下回った場合と上回った場合、残業代はそれぞれどのような扱いになるのでしょうか。

ここからは、固定残業代を導入していた場合のみなし時間残業代の支払いについてご説明します。

実労働時間がみなし時間を下回った場合

定額残業代制度を導入している企業では、たとえ実際の労働時間がみなし時間を下回っていた場合でも、定額の残業代を全額支払う義務があります。

例えば、「月10時間分のみなし残業代」と就労規則で定められており、実残業時間が5時間の場合も、労働者は定額残業代の全額を受け取ることができます。

残業時間が少なかったからといって、企業は定額残業代を減らすことはできないことを覚えておきましょう。

実労働時間がみなし時間を上回った場合

実際の労働時間がみなし時間を上回った場合は、企業は定額残業代に別途追加して、残業代を支払う義務が生じます。

例えば、「月10時間分のみなし残業代」と就労規則で定められており、実残業時間が15時間の場合、労働者は定額残業代の10時間分と追加の5時間分を全額受け取れることができます。

定額残業代制度を導入しているからといって、どんなに残業していいというわけではないので、企業は注意が必要です。

定額残業代制度の労働者側のメリット・デメリット

定額残業代制度は企業にとって、毎月残業代の計算をしなくて済むだけでなく、残業代が減ることにより経費を削減できるメリットがあります。では、働く人にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

ここからは、労働者側からみた定額残業代制度のメリットとデメリットをご紹介します。就職活動で定額残業代制度を導入している企業を受ける方は、ぜひ参考にしてみてください。

メリット:定時で上がればみなし分だけ得をする

定額残業代制度は、残業の有無に関わらず、固定分の残業代が給与と共に支払われます。

仮に毎日定時内で仕事を終わらせることができれば、たとえ1分も残業してなくても一定時間分の残業代を受け取ることが可能です。労働者はみなし分の残業代を得することになります。

デメリット:残業が一定時間あることが想定されている

定額残業代制度を導入している企業のほとんどは、ある程度の残業があることを見込んで制度化しています。そのため、「定時に上がれば得をするから」と安易に考えていると、働き出してから痛い目にあう可能性があります。

一定時間を超えて働いても、残業代は固定分しか出ないとなると、モチベーションを維持することが難しいです。定額残業代の企業を志望する場合は、事前に入社後の残業代を確認しておきましょう。

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定額残業代の計算方法

定額残業代の計算方法と超過時間分の残業代の計算方法をご紹介します。

◆定額残業代の計算方法
(給与総額-定額残業代)÷月平均労働時間×割増率×定額残業の時間

◆超過時間分残業代の計算方法
(給与総額-定額残業代)÷月平均労働時間×1.25×超過時間

定額残業代は、社会保険労務士の個人サイトなどを参考にすると分かりやすく計算できるのでおすすめです。

定額残業代が計算できるサイト

定額残業代が計算できるサイトをご紹介します。こちらのサイトでは、「定額残業代を毎月支払う場合、いくらに設定すると法定の割増賃金率をクリアするのか」を算出してくれます。

定額残業代で求人募集を出したいと考えている方は、参考にしてみるといいでしょう。

定額残業代制の構築は慎重に!

定額残業代制度の導入は企業にとってメリットも多い制度ですが、リスクも決して少なくありません。

もし誤った認識で定額残業代制度を導入していると、労働者とトラブルになった際に定額残業代が認められないこともあります。その場合、企業には未払い分の残業代の支払い義務が生じます。

定額残業代の導入は、きちんとした認識を持って慎重に行うようにしましょう。

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