イノベーションのジレンマとは?意味と事例3選をご紹介

業務改善

イノベーションのジレンマとは?

近年、つぶれるはずがないと思われていた巨大会社が新興の小さな会社によって業務の縮小や、本業で立ち行かなくなる事例が増えています。

このようなケースを説明する理論がイノベーションのジレンマです。

イノベーションのジレンマとは、業界有数になった企業が次代の業界のイノベーションに立ち後れて首位から追われてしまう、あるいは業界から姿を消してしまうという状態のことです。

意味

イノベーションのジレンマの意味は、革新的な技術やビジネスモデルで業界を支配した企業が、次世代のイノベーションに乗り遅れて業界への支配力を失ってしまうという事例を説明する考え方です。

大きなイノベーションでそれまでの業界の地図を塗り替えた企業が、イノベーションの成功に頼り、あるいはとらわれて、新しい技術への正当な評価ができなくなってしまい、その結果新興企業に覇権を奪われてしまうことをいいます。

提唱者

イノベーションのジレンマの提唱者はアメリカの経済学者のクレイトン・クリステンセンです。

クレイトン・クリステンセンはブリガムヤング大学経済学部、オックスフォード大学経済学部卒業後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得し、コンサルティング会社やホワイトハウスで実績を積みました。

1992年にハーバード・ビジネススクール教授となり、これまでの研究をベースにイノベーションのジレンマの理論を提唱しました。

「イノベーションのジレンマ」に陥る原因

もともと革新的であったはずの企業が業界の新しい大きな流れに乗ることができず、市場の支配力を失ってしまう事例は数多くみられます。

現代のように情報技術の進化に代表される技術革新のスピードが速い時代では、覇権が数年しか続かない事例も増えています。

ここでは、イノベーションのジレンマが発生してしまう原因について分析していきます。

1:短期的利益を求める顧客や株主の意向を優先する

勝ち組の企業に対し、ステークホルダーからは多くの要求にこたえることを期待されます。

イノベーションを起こして参入した時点にはなかった、顧客からの現在の技術の熟成に対する要求や、確実に短期的利益を提供してほしいという株主などの要求が会社の動きを方向づけます。

新たな技術、ビジネスモデルを導入するリスクをステークホルダーが望まないため、成功した企業は革新的な技術をタイムリーに取り入れることができません。

2:小規模市場では大企業の成長ニーズを満たせない

市場を支配した企業は、その市場で上げるべき求める利益目標をすでに大きくとってしまっています。

新規参入企業の事例を知っても、その市場規模が現在の企業の要求する規模を満たすことができないのであれば、その新規のイノベーション技術を軽視してしまいます。

大企業は自分の身体を満足させる利益を取り続ける必要があるので、新規技術に優れたイノベーション性を見出しても、小さな市場に参入することが難しくなります。

3:未だ存在しない市場は分析しにくい

イノベーションの事例を目の前で見せられても、それが自社のメインコンテンツとなる産業にどのように影響してくるかを理解するのは難しいです。

IoTやビッグデータなど、新しい革新技術は、まだそれがどのような市場を形成するかがわからないからです。

事業を進める時に精緻な分析に基づいて事業計画を立てている大企業にとって、現在存在していない、これから起こる新しいイノベーションを事業計画に織り込むのは困難です。

4:既存事業が成功しすぎて新規事業に臆病になる

既存事業が成功し過ぎてしまうと、現在の成功を維持するために、冒険をして現在の利益を減らすリスクのある新規技術に参入する決断ができなくなります。

録画技術のビデオテープから磁気ディスク、光学ディスク、磁気メモリへの変化の事例を見ても、抱えている既存の技術やコンテンツの資産にしがみついて、新規技術に追随できず、イノベーションのジレンマに陥った企業を多く見ることができます。

5:既存事業の技術力と市場ニーズは必ずしも相関関係にない

市場を支配している既存事業について、その延長での画期的な技術革新を進めていっても、それが市場のニーズに合わなければその技術革新は利益を生み出しません。

音楽の事例で言うと、CDなどによる音楽の提供は、無料の動画サイトなどによって市場が消滅する危機に陥っています。

CD音源の品質を上げていってもこの構造は変わりません。

市場は高い音質ではなく、音質が悪くてもすぐに安価に手に入るものを求めているからです。

イノベーションのジレンマに陥った事例

最近は特に日本企業においてたくさんのイノベーションのジレンマの事例を見ることができます。

一時は世界の中でも高い革新性と技術力を誇っていた日本企業が、なぜイノベーションのジレンマに陥り、新たなイノベーションに乗り換えることができなかったのでしょうか。

日本企業が陥ったイノベーションのジレンマの事例を見て、原因を探ってみましょう。

事例1:テレビ

テレビは高度成長期に3種の神器の一つとして、新しい物を出せば売れるという状況が続いてきたため、テレビを作る大規模な工場をいくつも作ってきました。

しかし映像の楽しみ方が大画面で高画質の映像を見ることから、移動中などに小さな画面で情報収集として見る方向に変わってしまいました。

テレビの事例では、利用者ニーズの変化をキャッチできず、間違った投資を進めてしまったことがイノベーションのジレンマの原因です。

事例2:ガラケー

携帯電話は当初個人の持てる電話として普及してきましたが、日本企業は日本国内のみを考えていました。

世界規模の市場に向けた個人で持てるパソコンの代替としてのスマートホンが日本市場に入ってきたときに日本企業はそれに対抗することができませんでした。

ガラケーの事例では、将来の市場規模を把握できず、対応するべき方向性を誤ったことがイノベーションのジレンマの原因です。

事例3:カメラ

カメラは携帯電話やテレビより長い歴史を持っていますが、同じイノベーションのジレンマを繰り返してきています。

カメラのデジタル化が始まった時も、当初の画像は解像度が低く、プロだけでなく家庭用としても不十分だと言われていましたが、あっという間に画質も利便性もフィルムを超えてしまいました。

カメラの事例では、新しい技術の性能面の軽視から参入のタイミングを失ってしまったのがイノベーションのジレンマの原因です。

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イノベーションのジレンマを深く知るためにおすすめの書籍

イノベーションのジレンマは比較的新しい考え方ですが、実際にこの考えに関わる多くの事例があり、これからの企業運営を考えていく上でイノベーションのジレンマの理解は欠かせません。

イノベーションのジレンマの考え方は、実際の事例と合わせて考えると理解しやすいです。

ここでは、事例を多く含んでいるイノベーションのジレンマの解説書をご紹介します。

1:日本のイノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマの提唱者であるクレイトン・クリステンセン教授の教え子である玉田さんが著した本です。

テレビ、携帯電話、カメラなどの日本企業が陥っているイノベーションのジレンマの事例がたくさん載っており、その処方箋までが提案されています。

イノベーションのジレンマの説明もわかりやすく、入門書としても使える一冊です。

理論は分かったが、具体的にどうすればいいの?に応えた一冊。イノベーションは常に現場から起こる。

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2:マンガと図解でわかる クリステンセン教授に学ぶ「イノベーション」の授業

わかりにくいと言われているイノベーションのジレンマとイノベーションへの解を合わせて、図解と事例を使って理解しやすく表現した本です。

イノベーションの基本理論から破壊的イノベーションの戦略、日本企業の事例などがまとめてあり、入門編として読めば、イノベーションのジレンマの大筋を理解できます。

イノベーションについて、わかりやすくマンガと図解で紹介している書籍です。これを読めば、イノベーションについての最低限度の知識は十分に手に入ると思います。

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3:イノベーションのジレンマ 増補改訂版

クレイトン・クリステンセン自身の書いた「イノベーションのジレンマ」です。

アメリカで驚きを持って迎えられた本書に、時代の変化に基づく更新と組織作りについて新たに追加された改訂版です。

「イノベーションのジレンマ」は、事例も豊富に含まれているイノベーションのジレンマの解説書の決定版と言っていいでしょう。

イノベーションに伴う製品の性能向上と、企業の栄光盛衰をまとめた一冊。どんなに時代が流れようとも変わることのないモノづくりに関するルールが書いてあるため、モノづくりをやっている人には必ず読んでほしい。

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イノベーションのジレンマは優秀な企業にこそ陥りやすい

技術革新の性質から、現在成功している大きな企業ほど陥りやすいのがイノベーションのジレンマです。

誰も想像し得なかった企業の没落の事例を見て、何を考えなければならないのか、どのように行動すればいいのかという方法論を持つ必要があります。

イノベーションのジレンマがなぜ起こるか、どうすればいいのかを知って、これからの世界の技術革新に対応していきましょう。

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