役職定年制とは?
サラリーマンであるならば、役職定年制という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。役職定年制とは、部長や課長などの役職にについている社員が、ある一定の年齢に達すると役職を外れる制度のことです。
役職についている社員にのみ適応される制度なので、管理職定年制度とも呼ばれます。役職定年制について詳しく見ていきましょう。
役職定年年齢って何歳?
役職定年制の年齢に法的定めはありませんので、役職定年の年齢を何歳にするかは企業によって異なります。つまり、企業側が役職定年制の年齢を自由に決められます。一般的には、定年の数年前に設定する企業が大半です。
例えば、60歳が定年の企業であれば55歳程度、65歳が定年であれば60歳程度を役職定年の年齢に定める企業が多いと見受けられます。
役職定年後の仕事って?
役職定年後は、役職を離れるのですから管理職ではなくなります。役職定年後の仕事もやはり企業によってさまざまで、平社員と同じような仕事内容になる場合もあれば、スキルを活かして指導係などを行う場合もあります。
管理職を担ってきたとあれば、多くのスキルや人脈を持っているでしょう。役職定年制で役職を離れたとしても、その実績は企業にとって戦力になります。その経験を活かせるポジションにつくことが多いでしょう。
役職定年後は給与減額?
役職定年をした後は、役職につくことによって支払われていた役職手当がなくなるので、給与は減額になるケースが多いです。しかし、指導係など新たなポジションについた場合は、結果として給与は以前と大差の無い場合もあります。
役職定年後の給与も企業によってさまざまですが、役職手当がなくなる分は減額になると考えておけば、慌てることもないでしょう。
役職定年制のメリット・デメリット
多くの企業で取り入れられている、役職定年制にはどんなメリットがあるのでしょうか。給与が減額になることなどを考えると、デメリットしかないのではと考える人もいるでしょう。
役職定年制にはどんなメリットやデメリットがあるのか、メリットを3つ、デメリットを2つあげてみました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
役職定年制のメリット3つ
それではまず最初に役職定年制のメリットを見ていきましょう。役職定年制には会社側にとって大きなメリットがあります。どんなメリットがあるのか、役職定年制のメリットを3つご紹介します。
役職定年制のメリット1:人事の新陳代謝の促し
時代の移り変わりが速い現代社会では、社会の流れに追いつくのも一苦労です。培われてきた技術や知恵も必要ですが、企業としては組織の若返りも重要な課題です。
企業によって管理職のポストは限られています。いくら優秀な人材とはいえ、同じ人物が長く同じ役職につくことで変化のない企業になってしまう恐れがあります。
役職定年制を取り入れることで、人事の新陳代謝を促し企業の若返りを図ることができるのがメリットです。
役職定年制のメリット2:若手の育成
役職定年制の大きなメリットのひとつが、若手の育成につながることです。役職定年制で次の世代にバトンタッチすれば、40代か50代で管理職につくことができます。若い段階で管理職につくことで、多くの経験をすることができます。
また、前管理職が定年せずに社内にいるので、不安なことや分からないことがあればすぐに相談できるというメリットもあります。若手が管理職になっても、指導できる体制が整っています。
役職定年制のメリット3:総額人件費管理
年齢が上がるにつれ給料がアップする、年功序列型の賃金形態は日本経済独自のものです。能力そのものではなく、年齢による昇給制度は労働者にとっては安定ですが、会社にとっては必ずしもよい制度とはいえません。
年功序列型の賃金形態は、年齢が上の従業員が多い会社では人件費を圧迫します。一定の年齢に達した管理職はそれなりの役職手当が発生します。役職定年制を導入することで、人件費の総額を抑えるメリットがあります。
役職定年制のデメリット2つ
人件費の削減や若手の育成になり、企業としてはメリットの多い役職定年制ですが、デメリットもあります。役職定年制の導入を考えるのであれば、デメリットになる部分もきちんと考えなければなりません。
では、役職定年制にはどんなデメリットがあるのか2つご紹介しますので、見ていきましょう。
役職定年制のデメリット1:役割変更後の意欲低下
管理職にまで上りつめた人なら、今までバリバリに仕事をこなしてきたでしょう。組織の上に立つことは責任感を伴いますし、プライドも持っているはずです。管理職で忙しく働いていた人が役職を離れると、仕事に対する意欲がなくなってしまうことがあります。
管理職ではなくなっても変わらないモチベーションで仕事をしてもらうことは、役職定年制を導入するうえで大きな課題といえます。
役職定年制のデメリット2:賃金低下による意欲低下
役職定年制のもうひとつのデメリットは、賃金の低下による意欲の低下です。お金がすべてではありませんが、仕事に対するモチベーションを上げる大きな要素であることは確かです。
役職を離れて賃金が下がると、必然的に仕事に対するモチベーションも下がってしまいます。役職定年で賃金が下がることが分かっていても、給与明細ではっきりと賃金が減額しているのを目にしてしまうと、やはり意欲がわかなくなるという人は多いです。
役職定年制のデメリットに対する改善策3つ
メリットもある役職定年制は、企業にとっては取り入れたい制度のひとつです。しかし、役職を離れた社員の意欲低下は企業としても避けたいところです。
役職定年制を導入するには、デメリットに対する対策をしっかり立てることが大切です。デメリットに対する改善策さえきちんとしておけば、役職定年制をうまく活用することができるでしょう。
では、役職定年制のデメリットに対する改善策を3つ見ていきましょう。
役職定年制のデメリットに対する改善策1:定年前のキャリア啓発
役職を離れたとはいえ、今まで培ってきた知識やノウハウなどは企業にとっても大きな戦力であることは変わりません。
「あの人がいるから任せられる」といった取引先との信頼関係もあるでしょう。そういった知識や人脈を活かした、後進の指導など次のキャリアを啓発することが必要です。
資格取得のための支援やスキルアップのための休暇制度など、社員にやる気を持ってもらう制度を設けることを考えて見ましょう。
役職定年制のデメリットに対する改善策2:処遇への納得性の確保
納得のいかない人事には不満が噴出し、仕事のモチベーションを下げます。役職定年制を導入するには、社員へのしっかりとした説明が必要です。どれだけ納得して役職定年を受け入れてもらうかは、企業側の努力にかかっています。
役職定年後の役割や賃金に納得してもらうためには、合理的でなければなりません。きちんと明確に説明ができ、社員から納得性の確保ができるような制度であることが役職定年制の大前提です。
役職定年制のデメリットに対する改善策3:活躍の場の確保
役職定年を迎えて役職から離れると、「自分はもう必要ない」と感じてしまう人が多くいます。必要とされないと感じれば、仕事に対する意欲が低下するのも当然です。役職から外れた後も、活躍できる場を確保しましょう。
それまで培ってきた知識を活かした専門職としての活躍や若手に対する指導係りなど、管理職でなくても活躍できる場所を作ることは、役職定年制を導入するうえで欠かせません。
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役職定年制度導入事例2つ
役職定年制は主に大手企業で導入されている制度です。これから役職定年制を導入しようとしているなら、実際に役職定年制を導入している企業の例を参考にしてみるのもよい手です。役職定年制を導入している企業の例をご紹介します。
役職定年制度導入事例1:富士通株式会社
富士通株式会社では、役職定年制と同時に管理職向けのキャリア支援を行っています。役職定年前からキャリアを考える場を設け、社内外において活躍できる場を醸成しています。
キャリアカウンセラーによるカウンセリングなども行われ、キャリア開発室という部署も設けています。その手厚いキャリア支援により、富士通株式会社では役職定年が浸透しています。現在では、50歳前半で積極的な転身をする社員が増えています。
役職定年制度導入事例2:日本電気株式会社
日本電気株式会社では、定年後の再雇用も行っており、これとあわせて役職定年前研修を行っています。役職定年前に自分の能力やニーズを知ることで、今までとは別のキャリアへの道も模索してもらう取り組みです。
また、転職を希望する社員にはセカンドキャリア支援制度を設け、有給での能力開発休暇や資格取得の金銭的補助などを行っています。
役職定年制のメリットとデメリットを知ろう
役職定年制は企業の若返りを図り、人件費の削減などメリットもありますが、社員の働く意欲を下げたり、簡単に社員を切るというようなマイナスイメージを社員に植え付けてしまうといったデメリットもあります。
役職定年制のメリットとデメリットを知って、しっかり対策を取れば企業にとっても社員にとってもメリットのある制度であることは間違いないでしょう。