顧客ロイヤリティとは
顧客ロイヤリティとは、消費者がある特定の商品やサービスに対して抱く、継続的な愛着心や信頼の事を指します。英語の「忠実」「誠実」「忠義」などを指すロイヤリティ(Loyalty)に由来しています。
顧客ロイヤリティが向上すればするほど、その商品やブランドに対する信頼度が大きいと言え、ビジネス展開での飛躍的な向上のきっかけになり得ます。以下で顧客ロイヤリティとは何かを丁寧に見ていきましょう。
心理的ロイヤリティ
心理的ロイヤリティとは、顧客ロイヤリティを構成する一つの要素で、顧客が特定の商品やブランド、サービスに対する愛着や信頼を、良いイメージやプラスの感情として抱いている事です。一言で言うと「好き」ということです。
信頼して愛着を持ち、顧客の価値観や自己表現に一致している、などといった心理的ロイヤリティが高ければ、顧客ロイヤリティの高さにもつながるとされ、顧客ロイヤリティ向上の要とも言えます。
行動的ロイヤリティ
行動的ロイヤリティとは、顧客ロイヤリティを構成するもう一つの要素で、ブランドや商品を繰り返し購入・消費するのみに留まらず、友人や他人にもその商品やサービスの良さを広めようとするなど行動することです。
安い類似品に走らず、その商品を注文して入荷されるのを待ったり、企業に商品の改善点など建設的な意見をすることも含まれます。心理的ロイヤリティが向上することで、行動的ロイヤリティが高まります。
顧客満足との違い
顧客ロイヤリティと顧客満足(Customer Satisfaction)の違いは、顧客満足は1回だけでも完結するのに対し、顧客ロイヤリティは、繰り返しの利用やリピート購買など長期的に継続して利用されることに大きな相違点があります。
また、製品やサービスその物に対して使われる顧客満足に対し、顧客ロイヤリティは製品やサービスその物のみならず、ブランドや企業イメージを含めた全体を指します。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット7選
顧客ロイヤリティを向上させることで、一言で言うなら営業効率が上がり、売り上げの向上にもつながるという大きなメリットがあります。
細かく言うと、
1.リピート率の向上
2.解約率の低下
3.顧客単価の向上
4.口コミによる拡散
5.顧客1人当たりのコストの削減
6.新規サービスの展開
7.スタッフのモチベーション向上
といった7つのポイントがあります。具体的に見ていきましょう。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット1:リピート率の向上
顧客ロイヤリティを向上させることで顧客は長期にわたり、または繰り返し気に入った商品やサービスを購入・利用してくれます。
製品やブランドそのものに深い愛着を感じているため、満足度も高く、また競合他社へ心変わりする率もかなり低いので、そもそも乗り換えの必要を感じていません。
新規の顧客開拓には時間とコストを要することを考えれば、リピート率を向上させることは、売り上げの向上につながるということになります。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット2:解約率の低下
顧客ロイヤリティを向上させると、顧客はもともと製品やサービスそのものを気に入っているので、解約率や返品率も低いといったメリットがあります。
「顧客離れを5%改善することで利益率を25%改善することができる」という5:25の法則に基づき、解約率の低さは収益率の向上に直結します。ともすると返品や解約は、SNSなどで製品や企業へのイメージダウンになりかねませんが、そのリスクも抑えられます。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット3:顧客単価の向上
顧客ロイヤリティを向上させることで、顧客はもともと商品に対する信頼度がある上、ブランドイメージや企業に対する親近感もあるため、同社の他の製品やサービスを利用してもらえる機会が創出されます。
顧客ロイヤリティの低い客に比べると、購入金額に1.3倍も差があるという調査結果があるほどです。その際には、顧客が求めている商品を提案するようにすると、更なる顧客ロイヤリティの向上に繋がります。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット4:口コミによる拡散
顧客ロイヤリティを向上させることで、顧客による口コミを拡散してもらえるメリットがあります。
顧客ロイヤリティが高い人は、自分が利用する製品やサービスに愛着を持って信頼しているので、製品やサービスに自信があり、それを利用していることを伝えたいという心理的欲求に駆られます。
また、家族や友人などの親しい人による口コミは、信頼性が高く、かつ現実的なので効果絶大です。SNSも口コミと同等の働きがあります。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット5:顧客1人当たりのコストの削減
顧客ロイヤリティを向上させることで、顧客1人当たりのコストが削減できるメリットがあります。これは販売コストが「新規顧客は既存顧客の5倍かかる」という1:5の法則によるもので、顧客ロイヤリティ向上が売り上げ向上の要と言えます。
また、ビジネスでよく使われる「2割の要素が全体の8割を生み出す」という、パレートの法則(別名2:8の法則)もあり、ロイヤリティの高い顧客を集めれば収益増が望めます。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット6:新規サービスの展開
顧客ロイヤリティを向上させることで、新規サービスの展開に広がるメリットがあります。顧客ロイヤリティの高い顧客は商品やサービスに対する知識も豊富で、経験に基づいた意見も多く持っています。
それらを活用して、新商品やサービスの開発に展開させることが可能です。また、ロイヤリティの高い顧客を新商品のモニターとして活用したり、意見交換を行うなどして商品開発に参加してもらうこともメリットになります。
顧客ロイヤリティを向上させるメリット7:スタッフのモチベーション向上
顧客ロイヤリティを向上させることで、クレーム対応などの心理的・時間的な悪影響を抑えられ、商品やサービス提供時の顧客からの良い反応で、プラスの影響をスタッフにも与えてもらえます。
スタッフのモチベーションがアップすることで、より良い商品やサービスの提供となって、顧客のロイヤリティもさらに向上し、良い循環を生み出せます。また、スタッフの人材確保や育成、企業イメージの向上にも良い影響を与えます。
顧客ロイヤリティを向上させる方法7選
顧客ロイヤリティを向上させる方法としては以下のとおりです。
1.顧客の声を正確に把握して数値化する
2.収益指標と掛け合わせながら分析を行う
3.顧客リストを作成しランクごとの施策を行う
4.カスタマーエクスペリエンスの改善を行う
5.心理的ロイヤリティを重視する
6.SNSを活用する
7.カスタマーサービスの質を高める
売り上げや業績の向上に役立ててみてください。
顧客ロイヤリティを向上させる方法1:顧客の声を正確に把握して数値化する
顧客ロイヤリティを向上させる方法の第一は、顧客にアンケートを取って数値化し、現状を把握することです。顧客ロイヤリティを測る指標として、商品やブランド、企業に対する顧客の愛着や信頼の度合いを数値化するNPS(ネットプロモータースコア)が用いられます。
従来の顧客満足度とは違い、業績との相関性が高く、アメリカの多くの有名企業で活用され、近年、日本の企業でも導入が浸透しつつあるといわれています。
顧客ロイヤリティを向上させる方法2:収益指標と掛け合わせながら分析を行う
顧客ロイヤリティを向上させる方法として、収益指標と掛け合わせながら分析を行いましょう。顧客ロイヤリティ向上が顧客の継続的な購買意欲を高め、収益を上げるというのが理想的な形です。
顧客をさらに分類し、ヒアリングやアンケートを基に顧客の収益データを紐づけて分析し、ロイヤリティ向上が収益のどの部分に関連するのかを明らかにします。これにより、収益向上を狙い、さらにリスク回避のヒントにもなり得ます。
顧客ロイヤリティを向上させる方法3:顧客リストを作成しランクごとの施策を行う
顧客ロイヤリティを向上させる方法として、前出のNPSなど顧客ロイヤリティを数値化した指標を使い、顧客リストを作成、ランクに分類してそれぞれに合わせた施策を行いましょう。
ランクによって課題が顕在化するはずですから、課題が見えたら、それぞれランク別のきめ細やかなアプローチを行い、収益向上に結びつける対策を取ります。顧客リストは継続的に更新することも大切です。
顧客ロイヤリティを向上させる方法4:カスタマーエクスペリエンスの改善を行う
顧客ロイヤリティを向上させるには、カスタマーエクスペリエンスの改善を行いましょう。カスタマーエクスペリエンスとは、「顧客経験価値」とも言われ、商品やサービスを使用した際に感じる満足感や効果などの心理的・感覚的価値のことです。
具体的には商品の香りや味、デザイン、サービスの質など、これらの改善を行うことによって、改善しない場合、平均20%と言われる損失をカバーできる可能性があります。
顧客ロイヤリティを向上させる方法5:心理的ロイヤリティを重視する
顧客ロイヤリティを向上させるには、心理的ロイヤリティを重視しましょう。顧客は心理的ロイヤリティが向上すると、商品やサービスのリピート購買や継続的利用を行います。
これが家族や友人に商品やブランドを勧めたり(口コミ)、好意的な情報をSNSで拡散するなど、行動的ロイヤリティに至る動機となります。このようなファンの心理的ロイヤリティを大切にし、維持・継続するための展開を活かしましょう。
顧客ロイヤリティを向上させる方法6:SNSを活用する
顧客ロイヤリティを向上させるには、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用すべきです。SNSによって企業はダイレクトに顧客とつながることができ、商品やサービスの使用感などの感想を直接、リアルタイムに、そしてより詳細に知ることができます。
SNSで知り得た情報を基に、商品の改善や開発に活かすこともできますし、対応によっては、企業のイメージを向上させるのにも役立ちます。
顧客ロイヤリティを向上させる方法7:カスタマーサービスの質を高める
顧客ロイヤリティを向上させるには、カスタマーサービスの質を高めましょう。ロイヤリティのある顧客はもともと商品やサービスを提供する企業に対して、期待を持っています。
顧客の期待値がどれくらいなのかを把握し、顧客が期待する半歩先行くサービスをベストなタイミングで提供すると、顧客の満足度は高まります。また、顧客からの正直な声を集めて、アフターサービスや独自の解決策を作成するなど、質の向上に努めましょう。
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顧客ロイヤリティ向上成功企業3選
顧客ロイヤリティを向上させて実績をあげている企業が、チューリッヒグループ、湘南美容クリニック、ソニー損保の3社です。この他にもすでに多くの有名企業が、顧客ロイヤリティの向上により、収益増の成功を収めています。
前述の3社が実際どのように顧客ロイヤリティを向上させて成功に導いたのか、見てみましょう。
顧客ロイヤリティ向上成功企業1:チューリッヒグループ
全世界170か国以上に保険を提供するチューリッヒグループは、カスタマーエクスペリエンスの改善でロイヤリティ向上に成功しました。以前は市場調査を行って全体的な傾向を把握するのみでした。
しかし、NPSを導入して本質的な課題をあぶり出し、SNSやコールセンターなどさまざまな手段で、集めた顧客の声をリアルタイムで分析、問題点に優先順位をつけて効果のあった施作を共有し、顧客ロイヤリティを向上させました。
顧客ロイヤリティ向上成功企業2:湘南美容クリニック
湘南美容クリニックは、2013年に導入した顧客満足度調査に加え、2016年からNPSも導入し、顧客ロイヤリティを追求する施策を行って顧客ロイヤリティを向上させました。
一部顧客へのアンケート実施、毎月各院のPNSスコアをランク付けなど、各院で切磋琢磨できる環境を作りました。その結果、施術別・医師別のNPSスコアを出して問題点を明確にし、顧客満足度を高めて、顧客ロイヤリティ向上に成功しました。
顧客ロイヤリティ向上成功企業3:ソニー損保
競合が多く、会社の乗り換えが容易なダイレクト型保険で、ソニー損保は顧客ロイヤリティを追求する体制を整え、業界有数クラスを維持し続けています。
それには全社でNPSを導入して顧客の理解に努め、顧客アンケートを実施し、ロイヤリティの低い顧客には直接ヒアリングなどの対策を行いました。顧客の要望に耳を傾けて信頼関係を築くことで他社への乗り換えを防ぎ、継続契約となる顧客ロイヤリティを向上させました。
顧客ロイヤリティとは何かを知り仕事に活かそう
顧客ロイヤリティの高い顧客は、商品やブランドを愛してくれる「お客様」という以上に重要な存在です。顧客ロイヤリティの高さは収益増に結びつくだけでなく、SNSで好意的に商品を推奨し、商品開発のヒントや改善点を与えてくれる、副次的な作用を多く持つ得難い存在です。
NPSなど顧客ロイヤリティを数値化した指標を用いて分析することで、収益アップへのヒントとし、ビジネスチャンスに活かしましょう。