擬似相関とは?
「擬似相関」とは簡単に言えば、2つの事柄の間には何の関係性もないにもかかわらず、目にはみえない要因によって、さも関係性があるかのように思われることです。
擬似相関は、よく考えると違うということがわかっても2つの事柄の間に意味があり、さも関係があるように見えてしまいます。
きちんと情報をよりわけて、根拠のある話なのかどうか、ということを見ぬく目が必要ということになります。
相関と因果の違い
相関関係と因果関係はどちらも影響を与える、という意味では同じように思えるかもしれませんが全くの別物です。
相関関係とは「xの値が多いときはyの値も多い」傾向にあり、グラフにするとxもyも同じように数値が上がっていきます。
因果関係とは「xが原因となってyという結果になった」ということでグラフにはなりません。例えば「原因→ご飯をたくさん食べた」から「結果→お腹がいっぱいになった」などです。
擬似相関の例8つ
擬似相関の例は意外と身近にあります。
身近にある例としては「このサプリメントで○キロ痩せた!」「○○予備校に通ったら○○大学に合格した!」というものです。
実際にサプリメントを飲んで痩せる人もいるでしょうし、予備校に通って志望校に合格した人もいるでしょう。ですが他にもいろいろと努力をしているはずで、その総合的な努力の結果、成功したということもありえます。
ではほかにどのような擬似相関の例があるでしょう。
擬似相関の例1:アイスクリームの売り上げと溺死事故
これは、アイスクリームの売上が上がると溺死事故が増えるという擬似相関の例です
気温が高くなると、冷たいものが食べたくなりアイスクリームやかき氷の売上が上がります。また海や川などに出かける機会が多くなるのも気温が高くなる時期です。
この2つはどちらも気温の高さが原因ですが、アイスクリームの売上と溺死事故には直接の関係はありません。
似た例で「ビールが売れるほど水難事故が増える」という擬似相関もあります。
擬似相関の例2:猫が顔を洗うと雨が降る
猫のひげは周囲を判断する“センサー”の役割を持っています。雨が降る前には湿気が多くなり、その湿気でひげのセンサーの感度が落ちることを防ぐために、ひげを拭うしぐさをする可能性が高くなります。
実際には「あとから雨が降るかもしれない」から「猫がひげを拭う」というのが正しいのでしょう。
「相関関係はあっても因果関係がないこと」として使われやすい例です。
擬似相関の例3:女性の社会進出と少子化
働く女性にとっては、なんとも言い難い擬似相関の例です。そもそも日本の出生率は昭和40年代終盤には低下をしており、この時代に日本女性の社会進出が進んでいたとはいえません。
このことを考えてみても、「女性の社会進出」と「出生率の低下」は相関関係にはない、ということがわかります。
反対に、出生率が下がり子育ての時間に余裕ができたので女性の社会進出が進んだ、という説もあります。
擬似相関の例4:趣味が盆栽という人ほど、お金持ちである
これは年収など、収入に関する擬似相関の例で、盆栽は少し前までは、高齢者に多い趣味でした。また年齢が高ければそれだけ貯金なども多いはずだ、という通説からできた擬似相関です。
この場合、「盆栽」と「お金持ち」の2つの事柄に共通するのは「年齢が高い」ということです。
反対に、「貯えが多い」から「盆栽を楽しむことができる」ということも考えられるのです。
擬似相関の例5:風が吹けば桶屋が儲かる
このことわざの意味は、
1:強風が吹くと砂埃がおきる
2:砂埃が目に入って盲目になる人が増える
3:その人達が生活のため三味線弾きになる
4:三味線には猫の皮が必要なので、猫の数が減る
5:猫が減るので鼠が増えて桶を齧る
6:傷んだ桶を新しい物に代える
7:結果、桶屋が儲かる
というものです。
一見すると因果関係のようですが、1から7までのどれか一つでも抜けると因果関係は成り立たないので、擬似相関の例としてあげられます。
擬似相関の例6:お金持ちほど朝型である
これも収入に関する擬似相関の例で、例4の盆栽とお金持ちの擬似相関と似ています。
年齢が高くなるほど、早寝早起きになる傾向があり、例4で述べたように年齢が高いほど貯蓄も多い、という前提に基づいています。また実際に「朝早くから働いているので収入も多い」という因果関係も当てはまることもあります。
「収入や貯蓄と相関関係にあること」は「年齢とも相関関係がある」場合が多いのです。
擬似相関の例7:靴のサイズが大きいと算数の問題の正答率があがる
小学生を「無作為」に100人選び出します。その100人に算数の問題を解いてもらい答え合わせをします。
その後、正解率が高かった小学生の身体的特徴を調べると「身長が高く足のサイズが大きい」小学生の成果率が高かった、という結果が出ました。
ですが、ここで注意したいのは「無作為に選んだ」という点で、無作為に選ぶということは年齢を考慮しないということです。
高学年になると正解率が上がるのはある意味当たり前です。
擬似相関の例8:コウノトリ飛来数が増えると赤ちゃんの出生率があがる
欧米の統計でいわれる擬似相関の例です。
もちろん、コウノトリの飛来数と赤ちゃんの出生率に因果関係がある、ということはありません。考えられるのは、9ヶ月前の天候が原因でコウノトリの飛来数が増えたとも考えられますし、同時期の世界情勢や経済状況が関係しているのではないか、といわれています。
この2つ以外の「第3の要因」が隠れていることで、たまたま相関数値が高くなってしまった、という結果になったのでしょう。
擬似相関の例をもっと知ろう!おすすめの本4冊
擬似相関を使用している例は、テレビなどのCMや本の宣伝文句などでもよくみかけます。なかには、その宣伝文句によって本来の目的とは全く違うものを購入させようとするものもあります。
そのような例を見破るためにも参考にしたい本を紹介します。
1:「原因と結果」の経済学
慶應義塾大学総合政策学部准教授の中室牧子氏とハーバード公衆衛生大学院リサーチアソシエイトの津川友介氏の共著の単行本です。
8章からなり、それぞれの章で擬似相関の例をあげて解説をしています。
「根拠のない通説にだまされないために」も、この本はおすすめです。
2:データ分析の力因果関係に迫る思考法
シカゴ大学公共政策大学院ハリススクール助教授の伊藤公一朗の著書で、「広告が売り上げに影響したのか?」など、因果関係の分析に焦点をあてています。
因果関係をきちんと見極めると、ビジネスなどでも判断基準に迷いがでにくくなります。
また、難解な数式は使用せず、具体例を使って解説をしています。
3:本物のデータ分析力が身に付く本
1500人に講習をしてきた5人が共著という形で、ワークショップにおけるセミナー内容を1冊にまとめた本です。
7章で構成されていて、目次だけをみると難解そうに思えますが、レヴューをみても「実践的に使える」など高評価の1冊です。
表紙にも書かれているとおり、「大阪ガスのデータ分析専門部隊が長年積み上げてきたノウハウの一部」を使用していおり、難しい理屈などは分かりやすく解説しているので実践向きの1冊です。
4:統計データはおもしろい!
さまざまな研究所で主任研究員や立教大学の兼任講師を務めてきた本川裕氏の著書です。
世界の国別や日本の県別、男女別など、収集データには特に制限や傾向をもたせず、現代社会のおける興味深いテーマを中心に、相関図やデータのグラフの見せ方などを解説している1冊です。
擬似相関の例を知ろう
人間は自分や知り合いの回りで起きた事柄から、さもそれが一般的であるかのように解釈をして、他人に話すことがあります。ですが、本当に一般的なのかどうかは、十分に「検証」をしなければなりません。
擬似相関の例をきちんと知ることが、裏側に隠れているかもしれない事柄を見極めることに繋がってきます。