4大監査法人とは|準大手監査法人とは|監査法人の主な業務

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監査とは

監査とは、組織や個人の行動や成果が合法でかつ社会的な約束事に違反していないかどうかをチェックすることです。そして、監査の役割は、その行動や成果が問題ないものであることを広く一般世間に向けて証明して見せることです。

組織である一般の会社では、社内の部署や個々の社員が不正を働いていないかどうか、決められた業務から逸脱した業務を行っていないかどうかをチェックするため、独自で監査が行なわれるのが普通です。

監査法人とは

監査法人とは、5人以上の公認会計士が集まった法人で、企業などが会計上で不正を働いていないかどうか、適正な会計処理を行っているかどうかをチェックし、株主や取引関係者らにその企業の財務処理や会計処理に問題がないというお墨付きを与えることを業務としている法人です。

規模や資産が大きな企業は、財務処理や会計処理が複雑になるために、また間違った処理をして信用を無くさないために、監査法人に会計監査を依頼します。

4大監査法人とは

日本における4大監査法人とは、世界のbig4と呼ばれる会計事務所と提携しているEY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらたの4有限責任監査法人のことをいいます。いずれも大手監査法人の定義「上場企業100社以上を監査し、かつ常勤の監査業務従事者が1000人以上の監査法人」に該当します。

big4とは、EY(ロンドン)、Deloitte(ニューヨーク)、KPMG(アムステルダム)、PwC(ロンドン)です。

EY 新日本有限責任監査法人

4大監査法人のEY新日本有限責任監査法人は、日本初の有限責任監査法人となった監査法人です。2018年6月決算での資本金は9億9300万円で売上髙は989億4100万円です。従業員は2018年3月31日時点で5595名で内公認会計士は2660名です。

当該監査法人は、オリンパスの粉飾決済を見逃したとして、2012年金融庁から業務改善命令を受け、2015年には東芝の粉飾決済を見逃し行政処分を受けました。

主な顧客

あらゆる業種の企業を顧客に持ちますが、特に不動産・建設業界に強く、有価証券報告書によると、1億円以上の監査報酬を受け取る不動産・建設業界の企業は、三菱地所、積水ハウス、長谷工コーポレーション他10数社あります。

比較的弱いとされる情報・小売・商社業種の分野でも、1億円以上の監理報酬を受け取る企業にフジ・メディアHD、Jフロントリテイリング、丸紅ほか10社ほどあります。

有限責任あずさ監査法人

有限責任あずさ監査法人は、2003年に新日本監査法人の一部門が独立し2004年に朝日監査法人と合併した後、2010年に現在の名称になりました。2018年6月決算で資本金30億円、売上高971億2100万円です。同年月の従業員数は6182名、内公認会計士は2649名です。

2007年経営破綻した英会話学校NOVAの決算書が不適切とされたり、2012年にオリンパス関連で金融庁に業務改善命令を受けました。

主な顧客

当監査法人の創業者の一人が住友銀行の出身であることから、住友グループの企業に強く、大阪に多くの大口顧客を持っています。三井住友銀行、住友不動産、住友ゴム工業などです。2018年6月時点の総顧客数は、3558社です。

中国地方の企業にも強く、特に広島の企業についてはほぼ独占状態です。広島ガス、中国電力、マツダ、青山商事などがあります。

有限責任監査法人トーマツ

有限責任監査法人トーマツは、1968年に多くの監査事務所・会計事務所が一つになって発足し、合併を繰返し2009年に現名称になりました。2018年5月決算は資本金9億6800万円、売上高1047億300万円です。従業員数は2018年2月時点で6682名で、内公認会計士は2829名です。

2008年に顧客の管財人にトーマツの監査を巡る損害賠償訴訟を起こされ、トーマツの過失が認められる判決がおりました。

主な顧客

有限責任監査法人トーマツは、情報、卸売・小売、金融分野に強く、また三菱グループに対して強いという特徴があり、三菱UFJ銀行、三菱商事、三菱食品、ソフトバンクグループなどの顧客があります。2018年5月時点の顧客数は3338社です。

古河電機、村田製作所、ダイキン工業など製造業の顧客も持っていますが、製造業の内の重化学工業の企業は少ないです。また大手監査法人で唯一自動車メーカーの顧客を持っていません。

PwCあらた有限責任監査法人

PwCあらた有限責任監査法人は、世界Big4の会計事務所の一つPwC(プライスウォーターハウスクーパース)が、提携していた日本の中央青山監査法人が不祥事を起こしたため、中央青山監査法人の一部を独立させて設立した、4大監査法人の中では唯一の完全な外資系の監査法人です。

2018年6月の決算では資本金10億円、売上高456億2200万円で、同時点の従業員数は3162名で、内公認会計士は931名です。

主な顧客

PwCあらた有限責任監査法人は、中央青山監査法人から独立した経緯から、トヨタグループのトヨタ自動車、トヨタ自動織機、豊田通商などの顧客を持っています。

2018年6月時点の顧客数は1116社で、監査報酬が1億円を超える企業には、トヨタグループ企業の他には、アクサ生命保険、旭化成、LINEなどがあります。

準大手監査法人とは

準大手監査法人とは、公認会計士・監査審査会の定義「大手監査法人以外で、比較的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」のことで、仰星、PwC京都、三優、東陽の4監査法人に太陽有限責任監査法人を加えた5法人です。

4大監査法人、準大手監査法人以外の監査法人は、中小規模監査事務所といわれ、明治アーク、ひびきなど、上場企業1社以上を顧客にもつものは2017年5月現在で136社あります。

仰星監査法人

仰星監査法人は、1990年に設立された大阪の北斗監査法人が母体で、2000年東京赤坂監査法人と合併し東京北斗監査法人の名称を経て、2006年監査法人芹沢会計事務所と合併して現在の名称になりました。2017年6月決算の売上高は23億9254万円で、同時期の従業員数は234名で、内公認会計士は169名です。

グループ企業に仰星税理士法人と仰星コンサルティングがあります。

主な顧客

仰星監査法人の主な顧客は、建設分野ではコムシスホールディングス、熊谷組、西松建設など、機械分野では牧野フライス製作所、トーヨーカネツ、津田駒工業などがあります。

PwC京都監査法人

PwC京都監査法人は、全国に事務所を持つみすず監査法人が解散したとき、みすず監査法人の地方事務所の一つであった京都事務所が独立したかたちで設立されました。設立は、みすず監査法人の大口顧客であった当時の京セラの稲盛和夫名誉会長の意向を受けたものでした。

2017年5月末時点の資本金額は3億500万円で、同年6月決算売上高は43億6443万円、同時期の従業員数は280名、内公認会計士は98名です。

主な顧客

準大手監査法人の中では顧客数は比較的少ないですが、旧みすず監査法人の顧客を引き継いだ経緯からKDDIなど4大監査法人に引けを取らない大口顧客を持っています。

2017年度に1億円を超える監査報酬のあった顧客には、KDDI(監査報酬9億7700万円)の他に日本電産(5億5400万円)、京セラ(4億9900万円)、ジェイテクト(2億5400万円)、任天堂(1億1400万円)があります。

三優監査法人

三優監査法人は、1986年に経営コンサルティング事務所が顧客の要望を受けて監査法人になったもので、その後、法人の吸収合併などの組織再編されることなく現在に至っているのが特徴です。4大監査法人・準大手監査法人の中では、唯一ひとつの事務所で続けている監査法人です。

2017年6月決算売上高は45億4772万円で、同時期の従業員数は210名、内公認会計士は97名です。

主な顧客

2017年度の監査報酬が1億円を超える顧客は、USEN-NEXT HOLDINGS(監理報酬1億3400万円)があります。他の主な顧客は、卸売業のフィールズ、サービス業のエフティグループやTSUTAYAで知られるカルチャー・コンビニエンス・クラブなどがあります。

太陽有限責任監査法人

太陽有限責任監査法人は、1971年に設立された太陽監査法人が合併や統合、名称変更を経て2014年に現在の名称となりました。売上高、上場企業の顧客数や従業員数は、4大監査法人以外では有数になります。2018年には上場企業の顧客数において、4大監査法人のPwCあらた有限責任監査法人を抜いて業界第4位になりました。

2017年6月決算の売上高は62億4113万円でした。

主な顧客

2017年度の監査報酬が1億円を超える顧客は、Jトラスト(監査報酬2億6100万円)、富士トラスト(1億1870万円)、レオパレス21(1億500万円)、ALSOKの綜合警備保障(1億200万円)です。

2013年霞が関監査法人と合併、2018年優盛監査法人と合併して上場企業の顧客は215社となりました。

東陽監査法人

東陽監査法人は、古くから準大手監査法人の地位を築いていて、現在は業界第6位の規模を誇ります。2017年3月末時点の従業員数は421名で、内公認会計士は262名です。2018年6月決算の売上高は42億255万円です。

主な顧客

2017年度の監査報酬の上位3社は、岡三証券グループ(監査報酬8100万円)、三菱ガス化学(6800万円)、不二サッシ(6300万円)です。他にも産業開発機構や丸善石油化学などがあります。

監査法人の主な業務

監査法人の主な業務は、公認会計士法第2条1項と2項に規定された業務で、監査証明業務、非監査業務、コンサルティング業務(2項業務)の3点で、公認会計士の業務と言い換えることができます。

監査証明業務

監査証明業務は、公認会計士法第2条1項に「公認会計士は、他人の求めに応じて報酬を得て、財務書類の監査および証明をすることを業とする」と規定されいて、公認会計士の独占業務です。公認会計士または監査法人以外のものが監査証明業務を行うと法律違反になります。

監査証明業務には、法律で義務付けられている法定監査と、当事者間の任意に基づいて実施する任意監査に大別されます。

非監査業務

非監査業務は、前記の監査証明業務以外の業務で、財務書類などを作成したり、財務に関する調査や立案をしたり、財務に関する相談に応じたりすることを報酬を得て行なう業務です。公認会計士法第2条2項に規定されています。

コンサルティング業務(2項業務)

コンサルティング業務は、公認会計士法第2条2項に規定された業務の内の一つで、公認会計士の名称を用い報酬を得て、財務の相談に応じることができる業務です。コンサルティング業務は、条項の名前から2項業務とも呼ばれます。

監査法人の業務内容を理解しましょう

監査法人の業務内容を理解することで、現在の資本社会にとって監査法人が重要な役割を担っていることが認識できます。巨大資本あるいは大規模な企業(主に株式会社)の公明正大性は、公認会計士の独占業務の監査証明業務によって証明されていることが分かります。

監査法人の業務内容を理解しましよう。公認会計士で構成される監査法人の業務の重要性、監査法人の社会的責任を知ることができます。

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