介護業界における人材不足の現状|介護人材不足の原因6つ

スキルアップ

介護業界とは

先進国の中でも、日本社会は特に少子高齢化の傾向が顕著です。かつてないほどのスピードで超高齢化が進む昨今の日本においては、介護の需要が高まると同時に、介護を家族が全て行うのではなく、外注する傾向が強まってきています。

介護業界は高齢化が進む日本社会においてなくてはならない存在であり、高齢者の心身のケアを行うとともに、その生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を高めるのに貢献しています。

介護業界における人手不足の現状

近年では介護のあり方そのものが大きく変容しつつあります。従来の介護と言えば、妻を中心とする家族が全てを行うのが当然視されていましたが、近年では女性や家族の負担を軽減すべく、また専門的なケアを担保すべく、それを外注するのが一般的になりつつあります。

ですが、需要と供給は釣り合っておらず、介護業界は圧倒的な人手不足にあえいでいます。ここからは、介護業界における人材不足の現状について見ていきましょう。

1:日本の高齢化の状況

介護の人手不足の現状を知る上でまず確認せねばならないのが、日本の高齢化の状況についてです。

日本は世界でも屈指の健康大国としても知られ、特に女性に関しては世界人気の長寿を誇っていますが、このことは日本人の人口における高齢者の割合が増加しているということを意味するものでもあります。

日本は未曾有の高齢化を経験している真っ只中であり、今後もさらにこの傾向は加速するとつとに指摘されています。

4人に1人が75歳以上

日本が超高齢社会であるということは、その総人口の約25%、すなわち4人に1人が75歳以上であるという数字からもうかがうことができます。

国民の4人に1人が高齢者であるということは、介護を必要とする絶対的な母数が非常に大きいということの証でもあります。

ですが、このような需要に対して介護業界は十分な供給を行えておらず、慢性的な人手不足にあることは長年指摘され続けており、現在もその状態は変わっていません。

2:介護施設の66%以上が人手不足

介護業界における人材不足の現状としてまず引き合いに出されるのが、介護施設の66%が恒常的な人手不足にあるということです。

介護施設の半数以上が、利用者のケアを行うために必要な人材を十分に確保できておらず人手不足にあえいでいること、この人手不足ゆえに一人の介護士にかかる負担がかなり大きいものになっていることも、知っておかねばならないでしょう。

介護士の精神的・肉体的ストレスは相当なものになります。

3:介護スタイルの変化

介護スタイルが変容しているということも、介護業界における人手不足の一因として挙げられるでしょう。

昭和までは、介護と言うと妻(女性)が身を粉にして行うものであり、そのためにキャリアや自分の人生を犠牲にさせられることも少なくありませんでした。

しかし近年では女性の社会進出や権利意識の向上に加えて、核家族化や独身者の増加、家族観の変容などのさまざまな要因が重なり、介護のあり方そのものが変化しています。

子が親を介護する世帯の減少

介護業界における人手不足の背景のひとつになっているのが、子供が親の世話するという従来的な介護を行う世帯が減少しているということです。

妻(女性)が両親の介護を全て請け負う、あるいは押し付けられるという旧来的な在り方は徐々に変化していき、一部を外注したり、あるいは施設に親を入居させてたまに顔を見せるという世帯も増えてきました。

介護の担い手が家族からプロに代わったことも、介護業界の人手不足の一因です。

4:圧倒的に不足する介護施設

介護業界における人手不足の現状で知っておきたいことのひとつに、介護施設が圧倒的に不足しているということも含まれるでしょう。

専門的なケアが必要な親を介護施設に入居させたいのに、どこに問い合わせても満員であり、かと言って家族で24時間親を介護することは難しく、八方塞がりな状態にある家庭も少なくありません。

需要と供給が釣り合っておらず、介護を行いうる人手不足だけでなく、施設そのものも不足しています。

5:介護施設での人員配置の問題

介護施設での人員配置にかなりの無理があるということも、介護業界における人手不足の現状のひとつとして挙げられるでしょう。

本来的には一人の介護士が一人ひとりの施設利用者に向き合い、きめ細かいケアを行うのが望ましいところです。

しかし現状では圧倒的な人手不足により一人の介護士が何人もの施設利用者を同時にケアせざるを得ず、少数の介護士で大勢の利用者のケアを行わねばならないという無理な人員配置に置かれています。

介護の人手不足の原因6つ

以上で見たように、超高齢化が進む日本において、介護業界の人手不足は深刻な社会問題となっています。

いずれ国民の多くが介護を必要とすると予想される中で、人手不足ゆえに適切な介護が受けられないという未来が現実に近づいてきてしまっています。では、そもそもなぜ人手不足になってしまうのでしょうか。

ここからは介護業界が慢性的な人手不足にある原因について詳しく解説していきますので、最後までぜひご覧ください。

1:採用が困難

介護業界が人手不足にあえいでいる原因としてまず挙げられるのが、そもそも介護士の採用自体が困難であるということです。

数ある業界の中でも介護業界にはブラックなイメージが定着してしまっていると言っても過言ではなく、それゆえ自発的に望んで介護士になろうとする数がそもそも少ないことが問題です。

介護施設側としては介護士を増やしたくとも、必要な人員を確保できるほどの応募者が集まらないという厳しい現状があります。

2:賃金が低い

賃金が低いということも、介護業界における人手不足の原因のひとつとして挙げられるでしょう。

介護業界は他の業種と比べても賃金が低いことで有名であり、毎日フルタイムで働いたとしても、月給が20万円に満たないという介護士も決して少なくありません。

高齢者の命を預かる重責があり、なおかつ精神的にも肉体的にも疲れる仕事であるのに、その仕事内容に給与が全く釣り合っていないということも、人手不足につながっています。

3:人間関係

介護業界における慢性的な人手不足の原因のひとつに、人間関係も含まれるでしょう。

残念ながら介護施設の中には職場の風通しが悪く、ワンマン経営を行う経営者によって介護士の権利が不当に抑えられていたり、あるいは上司からのパワハラやセクハラが常態化しているところも少なくありません。

また、人手不足ゆえに一人の介護士にかかる負担が過剰になるためストレスが溜まり、その結果職場内がギスギスした雰囲気になりがちです。

4:「3K」

「介護業界=3K」というイメージも、介護業界における人手不足を説明する際によく引き合いに出されるものです。

3Kとは「きつい・汚い・危険」の頭文字である「K」を取ったものであり、介護士の仕事は肉体的にも精神的もきつく、排せつや風呂などの「汚い」作業もしなければならず、高齢者の命に対して責任を持たねばならないという意味において危険でもあります。

そのため、多くの人材が介護業界そのものを敬遠しがちです。

5:教育の機会が少ない

介護業界における人手不足の原因のひとつとして、教育の機会が少ないということも挙げられるでしょう。

介護業界は慢性的な人手不足ゆえに現場で介護をし続けることがほとんどであり、介護士としてよりよいキャリアを構築するために研修や教育を受ける機会が不十分です。

その結果、せっかく新しい人材が入ったとしても十分に介護士の仕事に馴染むことができず、早々に離職をしてしまうという結果になってしまいます。

6:休みがとりにくい

休みがとりにくいということも、介護業界における人手不足の原因のひとつです。

介護士はただでさえ長時間労働で残業が多い仕事ですが、絶対的な人手が足りていないこともあって少人数でギリギリの状態で現場を回している介護施設が多く、それゆえ休みを取るのが難しい状態にあります。

仕事一色の生活になってしまい、ワークライフバランスの実現とは程遠い現場に心も体も疲れ果ててしまい、離職する介護士も後を絶ちません。

あなたの会社に仕事の生産性をあげる「働き方改革」を起こしませんか?

名刺が多すぎて管理できない…社員が個人で管理していて有効活用ができていない…そんな悩みは「連絡とれるくん」で解決しましょう!まずはこちらからお気軽に資料請求してみてください。

介護の人手不足を解消するために

ここまで見たように、介護業界における人手不足は非常に深刻な状態にあります。この状態を放置しておけばさらに介護士の数が減少し、介護を必要とする高齢者が十分なケアを受けられることができなくなってしまうでしょう。

昨今では介護業界の人手不足の深刻さをなんとか改善しようと、行政などが中心となって、さまざまな打開策が講じられている最中です。

ここからは、それらの施策について詳しく見ていきましょう。

厚生労働省の施策

介護士の人手不足の改善のための施策を主導しているのが、厚生労働省です。

厚生労働省は各種手段を通じて介護の重要性の啓蒙活動を行っているほか、介護人材確保のための施策として、就学支援を行うなど介護士の育成に力を入れたり、全国のハローワークに介護士に特化した人材コーナーを設置しています。

また一部の地方自治体では、介護士の低賃金問題を改善すべく、その賃金引上げの施策を実施しているところもあります。

介護職員の待遇の改善

介護職員の待遇改善も、介護業界の人材不足を改善するための施策のひとつとして含まれるでしょう。

介護士が有給休暇をきちんと消化できるように、また家庭状況やライフステージにあわせて育児休暇などを取得できるように、厚生労働省は各介護施設に対して介護士の待遇改善要請を通達し、それを実現した施設に助成金を与えるなどして、介護士の待遇改善をバックアップしています。

介護ロボット・ICTの利用

介護業界における人材不足を改善するための施策のひとつとして、介護ロボットやICTを利用するということも挙げられるでしょう。

圧倒的な人手不足の中、マンパワーだけでは介護士に過剰な負担がかかる一方ですので、介護に特化したロボットを開発したりICTを利用するなどして、介護現場の負担軽減や作業の効率化に向けた取り組みが現在進行形で行われています。

未来のためにも問題と向き合おう

今回は介護業界における人材不足について特集してきましたが、いかがでしたでしょうか。今は若くて健康な人であっても、いずれ年を取れば介護について向き合わねばならない時が来るでしょう。

自分や家族の未来のためにも、また日本社会全体の将来のためにも、今こそ介護業界における人材不足の現状について正しく把握し、それを打破するための方法について一人ひとりが真剣に考えることが大切です。

タイトルとURLをコピーしました