税務大学校とは
税務大学校はは、国家公務員として採用された税務職員に対して必要な研修を行う機関のことで、本校事務室は東京都の霞が関、校舎は埼玉県の和光市、そして地方研修所が全国に12カ所あります。
税務署では税の法律的な知識が必要になるので、国の研修所で研修を受け国民から信頼される税務職員に育てあげます。現に税務の第一線で働いている職員に対しては、社会の変化に即応できるように必要な研修を実施している機関です。
通常の教育機関とは違う
税務大学校は大学ではなく、国税庁の研修機関です。つまり国税専門官として採用されると税務大学校へ通うことになります。また、さまざまなカリキュラムの研修があり、好きに選んで受けられる訳ではなく、それを受けるために必要な条件もあります。
全寮制で時間の厳しい拘束がありますが、公務員の立場であるのでしっかり研修を受けなくてはなりません。また大学と違い給料を頂きながら税務大学校で研修を受ける事ができます。
税務大学校で受けられる15の研修
では、ここからは実際に税務大学校で受ける事ができる15の研修をご紹介します。
研修を受けるにあったてのさまざまな条件があったりしますので、ぜひチェックしてみてください。またおおまかではありますが、研修内容も紹介していますので参考にしてみてはいかがでしょうか。
研修1:専門官基礎研修
専門官基礎研修とは国税専門官採用試験による新規採用者を対象として税務大学校が実施する研修で、3か月間行われます。
社会人としての良識や公務員としての自覚を得るとともに、税務職員として必要な知識や技能などの基礎的事項を習得することが目的です。
研修内容は税法科目、実務講義、簿記会計学、班別会同などで編成し、優れた学識を持つ大学教授や、実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教授が研修を行っています。
研修2:専攻税法研修
専攻税法研修は研修1の専門官基礎研修を修了後、1年間の実務経験を経た職員を対象として税務大学校が実施する研修で、研修期間は2か月です。
調査や徴収事務に関する基本的知識や技能を習得させる事が目的で、研修内容は専攻税法、実務講義などにより編成されています。
実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教育官が研修を行っており、個人課税、資産課税、法人課税および徴収の専攻ごとに班編成をしています。
研修3:社会人基礎研修
社会人基礎研修は国税庁経験者採用試験による新規採用者を対象として税務大学校で実施しており、研修期間は3か月です。
公務員としての自覚を身に付けるとともに、税務職員として必要な知識や技能などの基礎的事項や、調査、徴収事務に関する基本的知識および技能を習得します。
研修内容は税法科目、実務講義、簿記会計学、班別会同などにより編成し、実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教育官が研修を行ってくれます。
研修4:普通科
普通科では税務職員採用試験による新規採用者を対象として全寮制で税務大学校が実施しており、研修期間は1年です。最後の3ヶ月は確定申告期に税務署において実地研修を行うなど、実践的なカリキュラムで研修を行っています。
研修内容は税法科目、実務講義および実地研修、簿記会計学、班別活動、民法、商法・会社法および経済学などの法律・経済科目などにより編成されています。また15人程度に分けた班編成で研修を行います。
研修5:中等科
中等科は税務大学校の普通科を卒業後、3年間の実務経験を経た職員が対象の研修で期間は3か月です。
調査・徴収事務に必要な知識、技能を習得し、研修内容は専攻税法などの税法科目、実務講義、行政手続法などの法律・経済科目などにより編成しています。
優れた学識を持つ大学教授や、実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教育官のもと個人課税、資産課税、法人課税および徴収の専攻ごとの班編成で研修を行います。
研修6:本科
税務職員採用試験に採用されてから5年以上17年未満の職員などの中から、選抜試験により選ばれた300名を対象として税務大学校が実施しているのが本科で、期間は1年です。
専門官職としてふさわしい知識や技能を習得し、税務の中核として活躍できるよう広い視野、高い識見、的確な判断力などを身に付けるための専門的な研修です。
優れた学識を持つ大学教授や、実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教授が研修をします。
研修7:専科
専科とは研修6の専門官基礎研修を修了後3年間の実務経験を経た職員などを対象とした研修で、期間は7か月です。
本科より専門官職として必要な知識や技能を習得し、それにふさわしい広い視野、高い識見、的確な判断力を身に付けるための研修です。
研修内容は講義、討議による専攻税法などの税法科目、要件事実論、国際取引実務などの実務科目、簿記会計学などの会計科目、行政法、民法、会社法などの法律・経済科目を学びます。
研修8:専攻科
専攻科では通信研修審理Ⅱ修了後の経験年数が2年以上の職員の中から、選抜試験により選定された100名を対象として税務大学校で実施しています。
研修期間は4か月です。審理などに関するより高度な専門的知識を習得させるとともに、調査などに活用できる応用能力の向上を図るための研修です。
研修内容はケーススタディ、課題研究、要件事実論などの実務科目などにより編成され学んでいきます。
研修9:国際科
平成24年度をもって廃止された国際租税セミナー基礎コース、もしくは通信研修国際課税Ⅱ修了後の経験年数が2年以上の職員の中から、選抜試験により選定された100名を対象とし税務大学校で実施しているのが国際科で、研修期間は5か月となります。
国際課税の分野でより高度な専門的知識を習得させるとともに、調査などに活用できる応用能力の向上を図るため国際租税法、海外取引調査法、国際取引実務、国際法などを学びます。
研修10:研究科
研究科では本科もしくは専科の卒業生の中から選考された職員を対象として、税務大学校で研究員として1年3か月実施する研修です。
研究活動を通じ、税務に関する高度な専門的理論を習得します。
研究員は、税務に関する理論、税務行政上の諸問題について、税務大学校の研究部教授、大学教授、国税庁の指導担当者の指導の下で、研究活動を行いその研究成果を論文にまとめていきます。
研修11:税務理論研修
国家公務員採用総合職試験により採用されて約3年の実務経験を経た職員を対象として税務大学校が実施している研修で期間は3か月です。税務行政の企画立案に参画するにふさわしい知識と能力を身に付ける事が目的となります。
租税法通論、所得税法、法人税法、国際課税論などの税法科目、実務講義、租税訴訟手続概論などの法律・経済科目などが研修内容で大学教授や、実務経験豊富な国税庁内の職員から選任された教授が指導します。
研修12:酒税行政研修
酒税行政研修では酒税行政事務を担当する職員の中から選考された20名を対象として税務大学校で5か月間研修を行います。
酒税法や酒類業経営改善支援実務などの酒税行政事務に関する職務に必要な専門的知識や技能を習得し、実務における応用能力の向上を目的としています。
酒税法、酒類業経営改善支援実務などの実務科目、中小企業施策、運営管理、企業経営理論の法律・経済科目などが研修内容となります。
研修13:評価特別研修
評価特別研修では資産課税事務もしくは徴収事務を担当する職員の中から選考された20名を対象として、5ヶ月間税務大学校で研修を行います。
不動産、その他財産の評価に関する職務に必要な専門的知識や技能を習得し、実務における応用能力の向上を目的とした研修です。
ケーススタディ、不動産鑑定評価、株式評価などの実務科目、不動産法、知的財産法の法律・経済科目などが研修内容となってます。
研修14:短期研修
税務大学校では職務に関し、必要な短期間の研修を実施しています。主に国税局の職員を対象として、専門事務を円滑かつ効率的に遂行できる能力や、税務署の職員を指導していく上で要請される高度な知識および技能を習得すること目的としています。
審理、調査、査察、訴訟、徴収など約30のコースがあり、一定の経験年数を経た職員を対象に、実務的な審理能力の向上を図るために実施する短期研修で、1週間程度で実施しています。
研修15:通信研修
税務大学校では通信研修も行っており、職務の遂行に必要な会計学や国際課税分野、審理分野の知識の習得や、語学に関する能力の養成を目的として通信制で実施する研修です。
課題の添削指導のほか、必要に応じて数日間のスクーリングがあります。税務大学校の通信研修の細かな内容は会計学、税務会計、国際課税Ⅰ・Ⅱ、審理Ⅰ・Ⅱ、窓口英語Ⅰ・Ⅱ、韓国語Ⅰ、中国語Ⅰとなっています。
3つの体系
現在の国税庁において実施している職員研修の体系は、下記の3本の柱で組み立てられています。
1.税務大学校において実施する集合研修
2.管理者や指導担当者が日常の事務の遂行を通じ、個別に職員指導するという形で行われるオン・ザ・ジョブトレーニング
3.職場において集団的に実施する職場研修
税務大学校は国税庁の研修機関となります。以下ではこの3つの体系を詳しく説明します。ぜひ参考にしてみてください。
体系1:集合研修
国税庁が実施している職員研修の体系の1つが税務大学校での集合研修です。集合研修の最大の特徴は、講師ならびに受講者が同じ時間・空間に集まって行われることです。
税務大学校に複数の受講者が集まることで講師と対面するだけでなく、他者の考え方などを直接感じられるメリットがあります。
全寮制で門限があったり、厳しい研修による時間の拘束がありますが、集団で集中して研修を行う事ができます。
体系2:オン・ザ・ジョブトレーニング
オン・ザ・ジョブトレーニングとは頭文字からOJTと言われ、税務の仕事以外の職場でもよく取り入れられています。
職場の上司や先輩が、部下や後輩に具体的な仕事を与えて、その仕事を通して、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導し、修得させます。
オン・ザ・ジョブトレーニングを取り入れることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成する事ができます。
体系3:職場研修
税務大学校以外でも職場内で随時集団的に実施される職場研修があり、税法の知識を身につける機会を設けています。
情報交換会や流行り業種についての研修や、各職場では定期的にセミナーが開催され日々変化する情報に対応できように研修を行っています。
国税庁の職員研修はしっかりとした研修体系ができていますので、有意義な研修を受ける事ができるでしょう。
全国にある税務大学校
ここまで税務大学校の研修についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。国税庁や税務職員のことをはじめ、税務大学校の事が理解できたでしょうか。
ここからは実際に全国にある税務大学校をご紹介いたしますのでぜひチェックしてみてください。
本校
税務大学校の本校は事務室と校舎が別の場所にあります。本校の事務室は東京都千代田区霞が関にあり、校舎は埼玉県和光市にあります。
税務大学校和光校舎は、社会・経済の国際化などの進展や職場環境の変化に即応した研修を効果的に実施できるような施設となっています。
和光校舎の一角を「租税史料室」としてこれまで収集してきた江戸時代以降の租税に関する各種史料を展示し一般公開をしていますので、見に行くのもいいでしょう。
地方研修所
上記本校の他に地方研修所が全国12か所にあります。
12か所の研修所は札幌研修所から本州の東京研修所はもちろん、四国の高松研修所、九州には福岡研修所、さらには沖縄研修支所と全国にあります。
大学ではなく対税務職員の研修機関
いかがでしたでしょうか、税務大学校が大学でない事がわかりましたでしょうか。税務大学校は国税庁の研修機関であり、税務職員が国民から信頼されるための研修であり、社会の変化に柔軟に即応できるために研修を行っている機関です。
税務大学校へ入学するためには、国家公務員である税務職員にならなければできませんので注意してください。税務職員の研修は大変ではありますがとてもしっかりした研修であると言えるでしょう。