昇格試験とは?
昇格試験のやり方は企業によって異なりますが、一般的に人事制度において「推薦」「筆記試験」「課題論文」「役員面接」などの基準が設定されています。
一般的に「昇進」とは係長、課長、部長と役職が上がることを指し、「昇格」とは一般職から管理職になることを指す場合が多いです。ただ、企業の人事制度は外形的には概ね似たような形式でも、実際の運用面では経営哲学や企業風土などによってそれぞれ独自性があります。
昇格試験の目的
一般的に「昇格試験」は組織の管理監督者を選任するため、職責を果たすために必要な資質や適応力などのマネジメント能力の測定・評価を目的として行われます。
スポーツの世界でよく「花形プレーヤーが名監督になるとは限らない」といわれます。そもそもプレーヤーに必要なのは競技固有の高い技術や技能であり、監督に求められるのはチーム全体を統率・牽引・調整するなどのマネジメント能力です。
昇格試験は必要か
管理職としての適性を判定をするたの「昇格試験」は、企業にとって無くてはならない人事制度の1つですが、公正性・公平性・客観性・妥当性などの判定基準が担保されていることが重要です。
昇格試験と併せて、体系的な人材育成や教育訓練の体系的なシステム構築が重要であることはいうまでもありません。つまり、良い人材を育てる企業風土がなければ、時間や費用を掛けて昇格試験を行っても人材育成に繫がることありません。
昇格試験って?種類や導入のポイント紹介
昇格試験は、所定の資格を有する社員の中から管理職を選抜することを目的として行いますが、多角的な視点からリーダーとしての適性(資質や能力)を測定・評価します。
組織の管理職は、日常業務を統括し牽引するリーダーとしての役割を担っていますが、ここでは管理職に必要な資質や能力・適性を評価する昇格試験の種類と内容を紹介いたします。また、併せて昇格試験を採用する際のポイントについて紹介いたします。
昇格試験で行うこと
管理職に求められるのは、一言でいうと組織に対してよいリーダーシップを発揮することです。
管理職と一般職との違いは、自分が成果を出すのではなく、部下をとおして組織的な成果を上げることです。管理職になった途端に、今まで一緒に仕事をした同僚に対し指示命令する立場になりますので、誰もが「部下との関わり方」に躊躇する場面に遭遇します。
昇格試験では、管理職の適性をどのような物差しで選抜するのでしょうか。
面接
昇格試験で実施する面接の方法は、直属の上司や役員ではなく人事部門や他部門の役員が担当するのが一般的です。
昇格試験の面接は、職場の事情や過去の実績や経歴などを知る人の先入観をできるだけ排除し、予備知識を持たない人の客観的な判断を重視する狙いがあります。
もう1つは、知らない部門の役員面接をすることによって、緊張した心理状態における質疑応答の時の態度や顔の表情などを観察するといった狙いもあります。
小論文
昇格試験の審査において、多くの企業では役員面接と並んで「小論文」を記述する方式を採用しています。小論文の記述は課題に対する所感を述べる方式が一般的ですが、中には小説などの感想文を課すケースもあります。
なお、昇格試験の小論文の記述は、課題の本質を的確に把握し問題解決に向けた具体的な手段と手順を明示する必要があります。もちろん、説得性のある論理構築と手段の選択根拠がなければ意味がありません。
適性検査
昇格試験で行う適性検査は、会社として自社の管理職に求める能力によって異なりますが、外部機関が用意している多数の種類の中から選択することができます。
昇格試験の適性検査は、管理職としてのストレス耐性・マネジメント適性・リーダーシップ性向などを見極めますが、大きく個人の考え方の特性を測定する「性格検査」と、倫理的思考力を測定する「能力検査」の2つに分けられます。
語学試験
最近は昇格試験において、英語の「語学力試験」や「TOEICスコア」を採用している企業が増えています。グローバル企業においては、社内公用語を英語としているケースが少なくなく、今後の昇格試験では英語をマスターすることを避けて通ることはできません。
現状では、中学生が習得すべき単語は約1千語程度ですから、ビジネスシーンで活用するためには最低でも1万語程度を目処にひたすら励むしかありません。
昇格試験のポイント
昇格試験の対象となる職位は企業の人事制度によって異なりますが、一般的に管理職と呼ばれる課長クラス(マネジャー)の場合が多いといえます。ただし、中には係長クラス(チーフ)や部長クラス(ゼネラルマネジャー)の昇格試験を実施している企業の例もあります。
昇格試験の内容は、当然のこと管理職の職位によって試験項目や点数配分が異なりますが、昇格試験の合格基準や判定結果が公開されることはあまり例がありません。
マネージャーの人材要件例
組織のマネージャー(課長)は、一般的に専ら個別業務を担当することがなく、業務遂行上の障害を取り除くなどの職場の環境整備を行い、部下のモチベーションを高めることに専念します。
マネージャーとして業務を遂行するためには、以下のような資質や能力が求められています。
1.リーダーシップ
2.コミニュケーション力
3.指導・育成能力
4.問題把握・分析力
5.リスクマネジメント力
6.折衝力
7.意思決定力
ゼネラルマネージャーの人材要件例
一定程度の組織を束ねるゼネラルマネージャー(部長職)は、自ら統括管理する組織全体の総合調整を行うのが主な任務ですが、経営戦略的な視点から事業部単位の方針策定や意思決定に参画します。
ゼネラルマネージャーとして業務を遂行するためには、以下のような資質や能力が求められています。
1.高度のバランス感覚
2.創造的な戦略構築力
3.ブレイクスルーの発想力
4.総合調整力
5.高潔な人間力
昇格試験でよく聞く質問例8個
昇格試験の役員面接でよく聞かれる質問があります。しかし、いくら詳細に説明しても他部門の役員には理解できないことが多いことを承知しておいてください。
昇格試験の役員面接は、質問を受けた際の態度や表情を観察することが主な狙いであり、専門的な事柄を「掻い摘まんで論理的に説明する能力があるか」を観察しています。つまり、あなたの人柄や能力をとおして管理職としての適性を測定・評価するのが目的です。
1:今までで一番困難だった仕事はなんですか?
役員面接において「これまで一番難しかった仕事はなにか?」という質問は、受験者のストレス耐性を観察する意図があります。
この質問に対して、ほとんどの人は「乗り切ったときの安堵感」より「苦しかったことや嫌な思い出」が頭を過ぎりますが、質問者は「困難をどう乗り切ったか」を聞き出したいのが狙いです。
上手に乗り切ったことを強調するのではなく、困難を回避できた可能性や得られた教訓の説明が必要です。
2:今までで一番失敗した仕事はなんですか?
役員面接において「これまで一番失敗した仕事はなにか?」という質問は、受験者のメンタル的な強度を測定する意図があります。
質問した役員は、管理職として「失敗から立ち直る能力を備えているか」を知りたいのが狙いですから、「どのように問題解決したのかのポイント」を整理して伝えるとよいでしょう。仕事には失敗は付きものですから、同じ失敗を繰り返さない対策を講じることが重要です。
3:現在のあなたの業務の課題はなんですか?
役員面接において「あなたの業務の課題はなにか?」という質問は、会社としての中長期計画や部門ごとの活動目標をどの程度認識しているかを知ることが狙いです。
したがって質問に対する回答は、部門目標に合致しているか、どのような手段で目標達成を果たすか、成果が上がっていない課題の改善策などについて、PDCAを意識した明確な説明が望まれます。
4:昇格後どのように仕事に取り組みたいか?
役員面接において「昇格後どのように仕事に取り組むか?」という質問は、新任管理職としての役割を認識していることの意識を知ることが狙いです。
管理職に求められる役割は、飽くまでメンバー全員の力を結集して組織目標を達成するため、リーダーシップを発揮するかが最大の任務です。つまり、チームに関する問題点を明らかにすると共に、具体的な改善策を提示することが重要です。
5:部下をどのようにマネジメントしていきたいか?
役員面接において「どのようにマネジメントしていくか?」という質問は、組織マネジメントの本質をどのように理解しているかを知ることが狙いです。
管理職に求められるマネジメント能力にはさまざまな要素があります。その中でも、何かの問題が発生した際のテキパキとした対応力が重要ですが、発生した事象の本質を見抜く力と事実に基づいた客観的かつ合理的な判断が必須です。
6:部下がセクハラのような不祥事を起こしたらどうするか?
役員面接において「セクハラ発生時の対処はどうするか?」の質問は、リスクママネジメントやリスクヘッジに関する基本的な姿勢を知ることが狙いです。
管理職が仕事上の失敗や部下の不祥事を知ると、誰もが「知らなかったことにしたい」という心理が働きます。世の中には「隠蔽」や「ねつ造」などの体質を抱えた企業も決して少なくありませんが、自身の考え方をしっかり正直に伝えることが良いでしょう。
7:現在の職場の問題点は何か?
役員面接において「職場の現状の問題点はなにか?」の質問は、新任管理職として持っている問題意識の方向性を知ることが狙いです。
どんな業種の企業でも最終的な目的は、「利益の最大化を図り社会貢献する」ことです。日頃から、利益の最大化を図るための職場の役割と問題点について、優先度や重要度を明確にしておくことが大事です。
8:業界の状況と企業の方向性についての自分なりの意見
役員面接の一番最後に「業界や会社の方向性について所見を述べよ」と促されますが、普段から一般紙だけでなく、業界紙や経済紙などに目を通す習慣がないと馬脚を表わします。
業界全体のことはいざ知らず会社がどうあるべきかについて自説がないのは、管理職として些かもの足らない印象を与えてしまいます。管理職への昇格を狙う気持ちがあれば、広い視野から会社の方針や戦略に興味を持っておく必要があります。
昇格試験について知り対策して昇進しよう!
ビジネスシーンにおいて「昇格試験」は、将来ボードへの昇進を目指す人にとって極めて大事な通過点です。仮に初めての関門で不通過となれば、精神的なダメージを引きずることになりますので、昇格試験の傾向と対策の準備が大事です。
中にはいくら昇格への意欲が強くても、何度も失敗する人がいるのも現実です。何が問題なのかを客観的に自己分析することが大事なことです。