ゲーム理論とは
ゲーム理論とはゲームの攻略法ではありません。ゲーム理論とは複数主体が関わる意思決定において、参加者たちが互いに最適な戦略を取り合う状況を数学的に表した学問です。
このゲーム理論において、最も有名な数学者がジョン・ナッシュであり、彼の提唱するゲーム理論はナッシュ均衡とよばれています。
ジョン・ナッシュのナッシュ均衡は、ビジネスシーンにおいても重要な要素として現在でも用いられています。
ジョン・ナッシュとは
ゲーム理論を詳しく解説する前に、このジョン・ナッシュのことを紹介します。ジョン・ナッシュはアメリカ出身の数学者であり、先述したように、ゲーム理論で最も有名なナッシュ均衡の生みの親です。
1994年には、ゲーム理論を経済的に応用した功績により、ノーベル経済学賞を受賞するほどの人物でした。2015年にこの世を去った今でも、彼の功績は語り継がれ、現在のビジネスシーンでも多大な影響力を持っています。
ゲーム理論とジョン・ナッシュの関係
ゲーム理論というと、ジョン・ナッシュを思い浮かべる人が多いほど、ジョン・ナッシュはゲーム理論で著名です。しかし、ゲーム理論を誕生させたのはジョン・ナッシュではなく、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンです。
ジョン・ナッシュは、ゲーム理論を用いた考え方のうち、参加者が合理的な選択を行い、それ以外の意思決定ができない状態になるという、ナッシュ均衡を唱えた人物です。
ゲーム理論について知っておきたいポイント8つ
ゲーム理論は数学的にも経済的にも有効な学問です。そのぶん、とても難しいように考えられますが、ポイントを細分化させて考えていけば、そこまで難しいものではありません。
もちろん、学問的に追求していけば、とても奥が深く、一般人にはとても理解できない部分もありますが、これからあげるポイントを整理していけば、ゲーム理論を理解することは可能です。
ゲーム理論について知っておきたい8つのポイントを解説していきます。
ゲーム理論について知っておきたいポイント1:ナッシュ均衡とは
先ほどから何度も出ているナッシュ均衡という単語ですが、このナッシュ均衡が、現在、ゲーム理論の代表となる考えといってもいいでしょう。
ナッシュ均衡とは、ゲーム理論における参加者同士が、互いに自らの利益のために選択した行動以外の行動がとれなくなる現象をいいます。
これだけですと難しいですが、後に紹介する「囚人のジレンマ」や「価格設定」「恋人との待ち合わせ」といった事例で詳しく解説します。
ゲーム理論について知っておきたいポイント2:ナッシュ均衡の求め方
ジョン・ナッシュのナッシュ均衡の求め方です。 AとBが2とおりの戦略を持っていた場合、Aはどちらを選択すれば利益が最大になるかを考えた場合、戦略2を選択したほうが利益が最大になります。
Bさんがどちらの戦略を選択するのかがわからなくても、Aは必ず利益が発生する戦略Bを選択します。
Bさんは戦略1でも利益を出すことができますが、Aさんは必ず戦略2を選択しますので、2を選択せざるを得ません。
ゲーム理論について知っておきたいポイント3:パレート最適とは
パレート最適とは、ゲーム理論において、互いの利益を最も最大に引き出すための意思決定になります。
例えば、お互いがお菓子を10分間我慢できていたらお菓子が倍になり、我慢できずに片方が先に食べてしまえばもう片方は没収になり、お互いに我慢できなければお菓子は半分となった場合を考えてみましょう。
パレート最適の判断では、お互いの利益が最大限得られる判断ですので、事例の場合だと「お互い我慢してお菓子が倍」です。
ゲーム理論について知っておきたいポイント4:古典経済学
ゲーム理論とは、個人の意思決定は必ずしも合理的に決定されるものではないという証明にもなります。しかし、古典経済学では、個人は確実に合理的な判断で行動するものと考えられていました。
ですが、人の意思決定とはそう単純なものではなく、複雑な要素が絡み合って決定されているというものが、ゲーム理論によって証明されています。人間の世の中はそう単純なものではなく、複雑な世界であるということを表しているといえます。
ゲーム理論について知っておきたいポイント5:行動経済学
ゲーム理論を知るには、行動経済学を参考にするといいでしょう。行動経済学は、経済学に心理学をプラスした学問です。
簡単にいうと、経済は人間の心理で動いているということで、ゲーム理論も、人間の心理により、行動が制限されるという点で、行動経済学に似た部分があります。行動経済学とゲーム理論を両方調べることで、理解も深まるはずです。
ゲーム理論について知っておきたいポイント6:プラスサム
プラスサムは投資の世界でよく使用される言葉です。「プラスサムゲーム」という言い方もします。プラスサムは、ゲーム参加者全員の利益と損失の合計がプラスになることです。
投資においては、そのようなことは起こりにくいのですが、あえて例を上げるのならば、長期の株式保有や、銀行預金がこれにあたるでしょう。
ゲーム理論について知っておきたいポイント7:ゼロサム
ゼロサムは、先述したプラスサムとは反対の意味で、参加者全ての利益がゼロになってしまうことです。ゼロサムゲームともいわれますが、具体的な例は、国際通貨取引です。
国際通貨取引とは、一方の国のレートが上がれば、もう一方の国のレートは下がります。つまり、どちらかの価値が上がればもう片方の価値は下がることになります。この状況をゼロサムゲームといいいます。
ゲーム理論について知っておきたいポイント8:マイナスサム
マイナスサムは、マイナスサムゲームともいわれます。参加者全体の利益と損失の合計がマイナスになる状況です。わかりやすいマイナスサムゲームは、ギャンブルです。
日本でいうと競馬、競輪、競艇といった公営ギャンブルがこれにあたります。マイナスサムでは、全体が徐々に減少していくことになり、例えば一時的には勝っていても、最終的には負けに転じます。
ナッシュ均衡の具体例4つ
ゲーム理論で有名な考え方は、なんどもいうようにジョン・ナッシュのナッシュ均衝です。ナッシュ均衡は「非協力ゲーム」ともいわれ、多くの具体例によって説明されています。
ナッシュ均衡はなんとなくわかりづらいという人も多いため、ここでは、ナッシュ均衡の具体例を複数紹介しながら、ゲーム理論およびナッシュ均衡に対する理解を深めていきましょう。
ナッシュ均衡を理解することで、ゲーム理論も深く理解することが可能です。
ナッシュ均衡の具体例1:恋人との待ち合わせ
ジョン・ナッシュのナッシュ均衡を恋人との待ち合わせを例に考えていきます。例えば、お互いに待ち合わせを場所をAという場所に指定していた場合、待ち合わせ時間に男性はAという場所に移動します。
そして、Aという場所に、女性も移動せざるを得ません。これがナッシュ均衡です。少し難しいですので、簡単に説明しましょう。一方が決定を変えない場合、もう片方もその決定に従わざるを得ないという状況です。
ナッシュ均衡の具体例2:価格設定におけるナッシュ均衡
ナッシュ均衡のわかりやすい例に、家電量販店の安売り競争があります。AとBというお店同士が、安売り競争をしている状況で、互いに利益が出るか出ないかのギリギリの状況まで価格を下げてしまい、これ以上、どうすることもできない状況もナッシュ均衡です。
最善の策は、互いに安売りをやめ、同時に値上げを敢行することがベストなのですが、ゲーム理論は非協力ゲームですので不可能です。
膠着状態が続くことがナッシュ均衡です。
ナッシュ均衡の具体例3:生物学におけるナッシュ均衡
生物学においても、ゲーム理論とナッシュ均衡は使用されます。例に挙げると、動物たちが餌場に群がっている場合、そこが豊富な餌場であっても、そこに捕食動物がいた場合、捕食される側は、その場を離れざるを得ません。
相手の出方や、個体数の多さで、状況を変える必要があり、捕食動物がAという餌場を選択した場合、自ずとBという選択をしなければならないという状況です。
生物学にもジョン・ナッシュのナッシュ均衡は適用されます。
ナッシュ均衡の具体例4:囚人のジレンマ
AとBという二人の囚人がいる場合、 Aに対し「自白してBが黙秘ならAは無罪。Bは懲役10年」「自白してBも自白したならお互い懲役5年」「お互いに黙秘した場合、二人とも無罪」と提案し、同じ提案をBに行なった場合、一番いいのは、お互いに黙秘することです。
しかし、上記の提案ですと、お互い自白してしまう可能性が高いことをいいます。囚人のジレンマは、ナッシュ均衡の代表的な例になります。
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ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方5つ
ジョン・ナッシュのゲーム理論は学問としても面白いですが、ビジネスシーンでも役にたちます。ジョン・ナッシュのナッシュ均衡をはじめ、多くのヒントがゲーム理論にはあります。
ビジネスで役にたつゲーム理論の考え方を、事例を交えて紹介していきます。
ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方1:市場参入の判断
ジョン・ナッシュの提唱するゲーム理論を用いて、ビジネスに置ける市場参入の判断も可能です。これを「交互ゲーム」といいます。
交互ゲームでは「ゲームの木」という表を作り、市場参入した際に得られる利益と損失を計算します。これにより、費用対効果を算出し、市場参入の有無を判断します。
ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方2:価格競争
ジョン・ナッシュのナッシュ均衡は価格競争に顕著に現れます。A、B両方のお店のうち、Aが値下げを行なった場合、Bの取るべき戦略はなにか、という判断があったとします。
ゲーム理論を用い、値下げに追従した場合に得られる利益と、値下げをしなかった場合の不利益、もしくは得られる利益について分析を行い、自社の最適な判断を下します。
ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方3:相手との交渉
ジョン・ナッシュのゲーム理論で交渉を考えます。交渉では、正直になんでも話せばいいものではありません。交渉相手に、二つの選択肢を与え、もしくは自分自身で二つの選択を用意し、どの選択を行えば、最大の利益が得られるのかを考えます。
複数の答えと提案を準備し、シュミレーションするのがゲーム理論での交渉術です。
ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方4:上司への提案
ジョン・ナッシュのゲーム理論を用い、上司への提案も進めましょう。何かプロジェクトを進行させたい場合、上司にはプロジェクトを進める理由だけではく、プロジェクトを行わなかった場合に、発生する機会損失の理由も添えましょう。
プロジェクトを行わなければゼロではなく、機会損失になり得るが、プロジェクトを進行すると発生するリスク、利益を天秤にかけさせ、うまく利益優先にまで誘導しましょう。
ビジネスでも役に立つゲーム理論の考え方5:同僚との交渉
ビジネスでは取引先や上司だけではなく、同僚とも交渉する必要があります。同僚に対し、仕事を振りたい、巻き込みたい場合などにジョン・ナッシュのゲーム理論は有効です。
同僚に対し、この仕事を受けることで得られる利益と不利益の理由準備し、交渉を行います。うまく誘導を行い、仕事を受けることで得られるメリットを最大限感じさせることで、仕事を振っていきましょう。
ジョン・ナッシュのゲーム理論を活用しよう
今回はジョン・ナッシュのゲーム理論や、ジョン・ナッシュのナッシュ均衡について解説を行いました。ジョン・ナッシュのゲーム理論は、日常生活やビジネスシーンでも有効です。
ジョン・ナッシュを理解し、有利な生活を送っていきましょう。