交渉力を向上させる方法と実践方法
ビジネスをしていると、相手と交渉しなければならないシーンも少なくありません。
価格の交渉や条件の交渉、納期の交渉など、交渉の内容はさまざまだと思いますが、できるだけ自分や自社の希望を優先させたいものですよね。
交渉を有利に進めるには、「交渉力」が物を言います。交渉力が高ければ、さまざまな局面で自分に有利になるよう、交渉を進めることが可能になるかもしれません。
そこで今回は、「交渉力」をテーマにして、交渉力を身につける方法や交渉力を活かす実践方法などについてご紹介していきます。
交渉力とは
交渉力とは、どのようなものなのでしょうか?
交渉力を身につける方法についてご紹介する前に、まずは交渉力が何なのか、意味や概念について確認していきたいと思います。
そもそも「交渉」とは、「ある事を実現するために,当事者と話し合うこと。かけあうこと。(※1)」「人と人との結びつき。かかわりあい。関係。(※1)」という意味を持つ言葉です。
「交渉力」は、上記のような意味を持つ「交渉」を有利に進める力であると言えるでしょう。
交渉力を身につける方法
では、交渉を有利に進めていく能力である、「交渉力」を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか?
交渉力を身につける方法について、考えていきたいと思います。
相手の希望や意見をよく聴く
交渉力を身につける方法の1つとして、「相手の希望や要望、意見などによく耳を傾ける」というポイントがあります。
交渉というと、相手に自分の意見を言い聞かせて、思うような展開や結論にするような印象を抱いている方も多いのではないでしょうか?
しかし、実際には相手の意見に耳を傾けることも、自分の意見を主張することと同じくらい大切です。
相手の話によく耳を傾けることで、相手が何を望み、何を嫌がっているのかといった情報を入手することができます。
例えば、交渉が難航しているようなら、相手の意見をよく聞くことで、何故自分の要望を相手が拒むのか、また相手はどのような点に不満や不安を抱いているのか、把握することができるかもしれません。
このような可能性から、交渉が難航したら、まずは相手の話によく耳を傾けてみましょう。
思わぬ発言や言葉から、交渉を有利に進めていくヒントを得られるかもしれませんよ!
WIN/WINだけが交渉のゴールではない
交渉をする場合、基本的には自分と相手が、「WIN/WIN」になるようにゴールや目標を決めると良いとされています。
「WIN/WIN」とは、五分五分や半々ということです。自分の方が相手より利益が多くてもいけませんが、相手の方が自分より得をしても、「WIN/WIN」とは言えません。
しかし、「WIN/WIN」を意識しながらも、結果的には相手よりも自分の方が利益が多くなるような提案を無意識にしている可能性もあります。
そうなると、自分としては「WIN/WIN」のつもりでも、相手からすれば「WIN/WIN」と感じられず、損をしていると感じてしまう可能性も。
「WIN/WIN」にこだわり過ぎると、上記のような原因で交渉が難航する可能性もあります。
そこで、「WIN/WIN」にこだわらずに交渉をすることをおすすめします。
まず、交渉をするにあたって、絶対に譲れない条件や、必ず達成したい目標を明確にしましょう。
また、妥協できる点や、相手に譲ってもあまり痛手にならない条件なども決めておくと、後々スムーズですよ。
実際に交渉をしていて、どうしても難航しそうなら、絶対に達成したい条件や目標を優先し、多少こちらが損をしても痛手にならない条件を提示するようにしましょう。
否定的な言葉の使用を控え、好意的な言葉を使用する
誰でも、自分の意見や主張を否定されたら、良い気はしませんよね。
交渉でも、相手が自分に対して否定的だと、どうしても自分も相手を否定しまいがち。
また、つい交渉相手を否定的な目で見てしまう可能性もあります。
このような心理から、交渉をする際は、なるべく相手に賛同したり、好意的な言葉を使ったりするようにすると、交渉力が高まると言われています。
また、相手を否定する言葉や、相手の条件を却下する際は、「どのように言って断るか」が大切です。
無理な条件も肯定してしまう必要はありませんが、否定や却下をする際の言葉を選ぶことで、柔らかい印象や好意的な印象を崩さずに済みますよ。
世間話などをする
重要な交渉の場であればある程、堅い雰囲気や話になってしまいがち。
しかし、そのような時ほど、世間話などをした方が良いという意見もあるようです。
「大切な交渉で世間話など、相手に失礼だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、世間話は、交渉における「ウォーム」というテクニックでもあるのです。
ウォームとは、あたたかいという意味です。
世間話をして、相手の心をあたため、親近感を与えたり、柔らかい雰囲気を演出したりしたい時に使うテクニックです。
勿論、相手が真剣に話を切り出そうとしている時に、世間話や無関係な話をすると、相手の気分を損ねてしまう可能性があります。
その為、ウォームを交渉のテクニックとして使うには、場面やタイミングの見極めが必要となります。
しかし、ウォームを上手く使うことができるようになれば、交渉力はぐっと上がるかもしれませんよ。
実践的に交渉力を向上させる方法
上記で、交渉力を身につける方法をご紹介しました。
しかし、交渉というものは、毎回展開や結末が異なるもの。
マニュアルや予想、自分の希望の通りに交渉が進むということは、殆どないと考えておいた方が良いでしょう。
その為、理論や方法を学んだだけでは、交渉力は身につかない可能性があります。
実践を通して、実際に学んだ内容やテクニックを使ってみることで、交渉力は高まっていくものです。
そこで、続いては実践的に交渉力を高めていく方法をご紹介していきたいと思います。
研修を利用する
交渉力を実践的に身につけたり高めたりする方法の1つとして、研修という手段があります。
交渉力をテーマにした研修やセミナーは、さまざまな企業や機関が開催しています。
内容やカリキュラムは、研修やセミナーによってさまざまだと思いますが、中には実践を視野に入れたものや、実践的に交渉の練習などを行うものもあると言われています。
研修は費用がかかるものですし、中には長期的なものもあります。
しかし、1日で学べる短期的なものや、費用を抑えたものもあるので、自分が学びたい内容や希望の予算、期間などに合ったものを探してみることをおすすめします。
ロールプレイング
上記のような講習やセミナーに通う費用や時間がないという方は、上司や先輩、同僚などに付き合ってもらい、ロールプレイングをすることをおすすめします。
ロールプレイングは、交渉やセールスの初心者も行う練習方法なので、「既に何度もやっている」という方も、いらっしゃるかもしれませんね。
そこで、相手役を頼む人に、交渉やロールプレイングのテーマや目標を伝え、それらを達成できているか、細かくチェックしてもらうようにしましょう。
例えば、ロールプレイングのテーマを「相手の提案を否定的な言葉を使わずに否定する」とした場合、相手役の人には、自分が否定的な言葉を使っていないか、厳しくチェックをしてもらいます。
このように、目標やテーマを決めてロールプレイングをすることで、交渉力が身についたり高まったりするかもしれませんよ。
実践的に使える交渉力・コーチングについて
コミュニケーションスキルの1つに、「コーチング」というスキルがあります。
コーチングは、基本的な人間関係の構築にも使えるスキルですが、ビジネスの場でも使えるスキルとしても注目を浴びています。
ビジネスにおけるコーチングとは、「共生的人間関係(※2)」を構築する上で発揮されるスキルの1つだと言われています。
「共生的人間関係」は、それぞれの目的や目標を達成する為に、互いに協力し合ったり、助け合ったりする人間関係です。交渉のゴールとも言える関係でしょう。
この「共生的人間関係」を構築するのには、一方的ではなく、双方向に意見や希望を発信する、質問型のコミュニケーションを取ることが重要だと考えられています。
そのようなコミュニケーションを取る為に、自分で適格な言動を見つけ出したり、質問をするなどの自発的な行動を取れるようにしたりするスキルが、コーチングです。
コーチングを習得することで、交渉力が高まる仕組み
では、コーチングというスキルを身につけることで、ビジネスにおける交渉力は、どのように高まるのでしょうか?
結論から言うと、コーチングは3つのステップを通して、上記でご紹介した双方向のコミュニケーションを実現させると言われています。
その3つのステップこそが、交渉における交渉力が問われる部分だと考えられます。
1つ目のステップとして、コーチングを習得することで、相手の性格やタイプを分析しやすくなると言われています。
相手がどのような思考を持っており、どのような受け答えを好むのか、好みや傾向を把握しやすくなる為、交渉においても有利になりやすいと思われます。
2つ目のステップでは、相手に好印象を残したり、相手が喜んだりする言動を取りやすくなると言われています。コーチングにより、相手の性格などへの分析力が上がったことで、相手が喜びそうな言動や好きそうな言葉を掛けやすくなるそうです。
そして、2つ目のステップで選択した言動を実行することで、相手にとっての自分の印象は、ぐっと良くなることでしょう。
自分の言葉に対する相手の言動があまり良いものでなくても、再びコーチングで学んだことを活かして、相手の望む言葉を分析し、再び実行することで、やがては良い反応や返事が返ってくることでしょう。
このように、コーチングとは「分析」「選択」「実行」の3つのステップを繰り返すテクニックです。
交渉の場では、この3つのステップは重要なポイントとされており、コーチングを通して3つのステップを実行できるようになることで、交渉力も上がっていくとも考えられます。
コーチングを習得するには
では、交渉力の向上にも大きく影響するコーチングを習得するには、どうすれば良いのでしょうか?
コーチングに関する書籍は、数多く出版されています。コーチングについて学んだことがある方や、理論を理解できている方は、書籍などを参考にしてみるのも良いでしょう。
しかし、より本格的に、そして正確に理解したい場合は、セミナーや研修で学んだ方が良さそうです。
コーチングは、概念や考え方の問題と言える部分もある為、理論や概念が理解できないと、独学ではなかなか習得できない可能性があります。
コーチングに関する正しい知識や技術がある講師から直接教わった方が、確実に習得できると考えられます。
とはいえ、研修やセミナーには、費用が発生する場合がほとんど。
自分の交渉力にコーチングというスキルが必要なのか、また値段に見合った効果が得られそうか、よく検討して研修やセミナーを選ぶことをおすすめします。
交渉力を身につけて、交渉を有利に進める力を
いかがでしたでしょうか?今回は、「交渉力」をテーマにして、交渉力を高める方法や交渉におけるポイントなどをご紹介しました。
交渉力とは、相手の意見を否定し、論破する為の力ではありません。利害が異なる者同士が、互いの意見や希望を言い、それぞれの目的を達成する為に、分かり合う為の能力だと思います。
交渉力を身につけたいのであれば、ひたすら自分の主張をするだけでなく、相手の意見に耳を傾けたり、時には妥協したりすることも必要。
また、さまざまなテクニックがあり、それらを上手く活用することで、交渉を有利に進めていけることもあります。
交渉が苦手な方や、何度やっても思うような結果にならないという方は、ぜひ交渉力を身につけて、今までとは別の方向から交渉してみてはいかがでしょうか?