医療費控除における保険金等の取り扱い
1年間に支払った医療費が一定金額を超えた場合、確定申告において医療費控除を利用することで、支払う税金を少なくすることができます。
しかし、保険金を受け取った場合は、支払った医療費の金額から受け取った保険金額を差し引いた金額を、自分が支払った医療費として申告する必要があります。この記事では、医療費控除における保険金の取り扱いについてご紹介していきます。
差額ベッド代
差額ベッド代とは、入院時に個室や少人数の部屋などを利用した際に加算される代金です。そもそもの前提として、基本的には差額ベッド代は医療費控除をする際の医療費に含めることができません。
しかし、治療のために医師の指示で個室に入院することになった場合や、通常の病室が満室であるなど、病院側の都合で少人数の部屋をあてがわれた場合などは、医療費控除の対象金額に含めることができます。
入院した際に保険会社から支払われる保険金は、「1日当たり○○円」というタイプのものが多いですが、「差額ベッド代を実費支給」というオプションをつけられるものもあります。「1日当たり○○円」の場合にせよ、実費支給の場合にせよ、計算方法は同じで、支払った金額から支給された保険金額を差し引いた金額が、医療費控除の際に申告できる金額になります。
ただし、そもそも差額ベッド代を医療費として申告できないパターン(自分の希望で個室に入院した場合など)に該当する場合は、医療費控除の際に差額ベッド代の実費支給分は保険金に含む必要はありません。
帝王切開手術代
帝王切開の手術代は、医療費控除の対象になります。普通分娩ではなく帝王切開で出産した場合は、下記の二種類の保険金が支給される可能性が高いです。
・民間の医療保険から支払われる「入院給付金・手術給付金」
・国民健康保険などから支払われる「高額療養費」
いずれも、医療費控除の申請をする場合は、支払った金額から受け取った保険金額を差し引いた金額を医療費として申告しましょう。
出産一時金
出産一時金は、国民健康保険などの被保険者およびその被扶養者が出産した場合に支給されます。出産費用は医療費控除の対象になり、この一時金は出産費用に対する補助金のような扱いになりますので、医療費控除の申請の際には、出産費用から差し引く必要があります。
ただし、そもそも病院に出産費用を支払う際に、この出産一時金を病院側で相殺してくれている場合も多いです。その場合は、病院に支払った金額が医療費控除の対象金額となります。
医療費控除における任意保険金の控除計算方法
医療保険などから保険金が支給された場合は、病院などに支払った金額から保険金を差し引く必要があります。計算例を見てみましょう。
例えば、「支払った入院代:300,000円、受け取った保険金:100,000円」という場合は、医療費控除の際に医療費として申告できる金額は「300,000円-100,000円=200,000円」です。
また、上述した要素が組み合わさっている場合の医療費控除の計算方法も見てみましょう。
・支払った入院代:1,000,000円
(そのうち、帝王切開手術代:200,000円)
(そのうち、差額ベッド代:100,000円)
・受け取った保険金:300,000円
(そのうち、差額ベッド代実費支給分:100,000円)
・受け取った出産一時金:420,000円
この場合は、下記のように計算します。
支払った入院代:1,000,000円
-差額ベッド代:100,000円
-受け取った保険金:300,000円
+差額ベッド代実費支給分:100,000円
-受け取った出産一時金:420,000円
=医療費:280,000円
任意保険金を申告しないと税務署にバレるか
必ずバレる、もしくはバレないと言い切ることはできませんが、医療費控除に関しては下記の場合は少なくとも怪しまれます。
・社会保険料控除の項目で「医療保険料」を支払っていると申告しているのに、入院した際に保険金を受け取っていない
・明らかに高額の医療費を支払っているのに、高額療養費を受け取っていない
確定申告では、医療保険に加入している場合は支払った保険料を申告しなければなりません。年末調整の際に会社に保険料控除の書類を提出した上で確定申告をするという場合も同様です。保険料を支払っているのに、入院などの際に保険金が下りていないとなると、つじつまが合いません。
高額療養費の制度は、国民健康保険などに加入している人ならば誰でも受け取る権利がありますので、支払った医療費が少額であれば申請するのが手間だったのかなと流される可能性もありますが、高額だと疑われる可能性が高いです。
また、今後マイナンバー制度が本格的に機能し始めると、ほぼ確実に保険金の受取の有無についてはバレるようになると考えられますので、医療費控除においては不正をすることは考えず、正確な金額で申告するよう心がけましょう。
過少申告に気付いた時の対処法
保険金を受け取ったことを忘れていた場合など、医療費控除の計算を間違っていた場合、過少申告に気が付いた場合は、速やかに修正申告を行いましょう。税務署の調査を受ける前に自ら修正申告を行えば、過少申告加算税を支払わなくて済みます。
また、所得税の申告期限(基本的に、申告が必要な年の翌年の3月15日)までに過少申告に気が付いた場合は、修正申告ではなく、もう一度正しい内容で確定申告を行えばOKです。確定申告では、基本的に同じ人が複数回確定申告書を提出した場合、最後に提出された書類を正式な申告書として取り扱うことになっています。
ただし、最初に提出した申告書の内容によっては、税務署内で既に処理が終了している場合もありますので、念のため税務署に問い合わせてから作業に移りましょう。
税務署から指摘があった場合の対処法
提出書類
医療費控除の項目のみ(保険金の取り扱いについてのみ)間違っていた場合でも、申告書全体を作り直す必要があり、所得税の修正申告書を提出することになります。税務署に手書き用の書類も置いてありますし、国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」から、インターネット上で簡単に作成することができます。
なお、「更生の請求書」は税額を多めに申告していた場合に提出する書類で、「修正申告書」は税額を少なめに申告していた場合に提出する書類です。いずれも所得税の確定申告において間違いがあった場合に使用しますが、名前や書式が異なるので気を付けましょう。
追加徴収
正しい金額で修正申告を行った場合、新たに支払う税金は、
1、正しいの税額と今までに支払った税額の差額
2、過少申告加算税
3、無申告加算税
4、延滞税
の最大四種類になります。
それぞれについて下記でざっくりと計算方法を説明していきますが、特に2~4の金額決定や納付については、税務署からの指示に従いましょう。
「1、正しいの税額と今までに支払った税額の差額」は、修正申告書を作成することで税額を決定することができます。
「2、過少申告加算税」の金額は、新たに納めることになった税金の10%相当額になります。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。
「3、無申告加算税」は、そもそも確定申告を行った日が、申告期限後であった場合にかかることがあります。
「4、延滞税」の計算方法は、下記の画像のようになります。国税庁のホームページで計算することもできます。
なお、新たに納める税金は、修正申告書を提出する日が納期限となります。提出した日のうちに納付も行いましょう。
医療費控除は正しく計算しよう
医療費控除の計算をする際、保険会社から保険金が支給された場合は、医療費から差し引く必要があります。内緒にしていても税務署にバレるとあとあと面倒ですので、最初から正しい金額で医療費控除の金額を申告するようにしましょう。