年金受給者の確定申告|不要制度・した方がよい場合・必要な場合

雑学

年金受給者は確定申告が必要か

具体的なお話をする前に、年金の種別についてお話させていただきます。
年金には、まず大きく分けて次の2種類があります。

1.公的年金
2.民間の年金

公的年金とは、国民年金をはじめ厚生年金などの公的な機関から給付される年金のことです。
民間の年金とは、生命保険や共済、個人年金保険などの契約に基づいて支給される個人年金のことをいいます。

また、公的年金の中でも金額にかかわらず非課税のもの(障害年金や遺族年金など)がありますが、これについても後程触れます。

結論から言いますと、「ほとんど年金のみで生活している年金受給者の方」は、確定申告が不要です。

ただし、例外も多くあり、また「確定申告をする義務はないけれども、したほうが還付を受けられてお得」という場合もあります。

※なお、本項で触れているのは、あくまで所得税などに関する確定申告の話です。
そのほかの税金(住民税や贈与税、相続税など)や健康保険における計算はまた別個のお話になりますので、ご注意ください。

確定申告不要制度

確定申告とは、次のように定義されています。

所得税及び復興特別所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得(※)とそれに対する所得税及び復興特別所得税の金額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収(給与や年金などの支払者が、あらかじめ所得税及び復興特別所得税を差し引いて国に納付する制度)された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続です。

http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201212/1.html

しかし、後述するように確定申告には必要書類を作成して提出する必要があり、なかなか手間がかかります。したがって、年金受給者で一定の条件を満たす年金受給者の場合には確定申告をする義務が免除されるという「確定申告不要制度」が定められています。

年金受給者のうち年金400万円以下

確定申告不要制度を理解するには、次の2つの概念を押さえてください。

1.公的年金等
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得

公的年金「等」とはいいますが、上述の国民年金や厚生年金以外では恩給や確定給付企業年金契約に基づく年金などがあります。

一方で、公的年金等に係る雑所得以外の所得とは、給与所得を筆頭に、個人年金(民間の年金)や企業年金、生命保険の満期返戻金などがあります。

これらを踏まえたうえで、1と2の金額を見ていきます。
年金受給者で、確定申告が不要な年金受給者というのは、
まず1が400万円以下である人です。
そして2については、20万円以下であることも併せて必要です。

つまり、確定申告不要制度が想定している年金受給者像というのは、「主に年金のみで生活している(高齢者)」ということになります。

高齢者にとって、とりわけ確定申告の手続きは負担になり、また税務署にとっても負担です。
この負担を軽減するための、確定申告不要制度は、両者にとって合理的です。

※確定申告が不要なことと年金が非課税なことは必ずしもイコールではありません。
障害年金や遺族年金は常に非課税(したがって、これらの年金は申告が不要)ですが、老齢年金の場合は、所得とみなされ所得税の対象となります。

申告した方がよい場合

確定申告が不要な年金受給者であっても、確定申告をしたほうがお得な場合があり得ます。
それは、以下の2つの場合です。

医療費控除・生命保険料控除・社会保険料控除を受けられるとき

前提として、公的年金からは所得税や社会保険料など様々なお金が天引き(源泉徴収)されています。これらは、条件を満たすと還付の対象になることがありますが、この場合には年金受給者は確定申告をする必要があります。

まず、第一に医療費控除が受けられるときです。
とりわけ、確定申告不要制度が想定している高齢者の方は、医療費がかさみがちですので、これらの医療費を控除してもらうと結構長くの還付が受けられる場合があります。

※「還付」とは、あくまで年金受給者が払いすぎている税金を返してもらうことのことです。よって、最初から天引き(源泉徴収)されていない方の場合は、いくら控除額が増えようとも、そこから新たにお金が給付されるわけではありませんので、ご注意ください。

第二に、生命保険料控除が受けられるときです。
生命保険の保険料を支払っている場合は、保険会社から書類が届きます。この書類をもとに、控除を受けることができます。

第三に社会保険料控除を受ける場合です。
社会保険料(具体的には、健康保険料、介護保険料など)を支払っている場合も同様に控除の対象となります。

これら以外でも、何か控除の対象となるお金を支払っている時(ふるさと納税。寄付金控除など)は、申告すると控除額が増え、結果当初天引きされていた年金受給者に対して還付金が支払われることがあります。

配偶者控除・扶養控除が増えるとき

配偶者控除や扶養控除の場合も同様です。控除額が増えるような事実がある(発生した)場合には、従前のように確定申告をしなければ、還付を受けることはできません。

繰り返しになりますが、ここまでの記述は、還付されるべきお金がある人の話です。
それがない場合は、確定申告をする意味はないといえます。

確定申告が必要な場合

上記の「確定申告をしたほうがよい場合」と、本項目を区別する意味は、本項の項目に当たる場合は、「確定申告をする義務がある」からです。要するに、以下の条件に当てはまる年金受給者は、確定申告をしないと脱税になる可能性があるということです。

給与所得・不動産所得・家賃収入がある場合

公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(給与所得・不動産所得・家賃収入など)が20万円を超える年金受給者は、確定申告を行う必要があります。

なお、ここでいう所得とは、総収入金額から必要経費を差し引いた金額ということになります。
つまり、サラリーマンの方の場合は65万の控除を受けられますから、たとえ収入が75万円でも所得の計算では75万円-65万円=10万円となり、確定申告の必要はありません。

※上述のように、年金受給者の場合には、年金から所得税などが天引きされている可能性があるため、必要はなくてもしたほうが良い場合というのは、あり得ます。

配偶者控除・扶養控除に変更があるとき

配偶者控除・扶養控除等、年金受給者の属性に起因する控除に変更がある場合にも、確定申告が必要となります。
これは、控除額が減る場合はもちろん、増える場合もするべきです。

必要書類

以下では、確定申告の義務・必要がある年金受給者の方に対して、必要な手続きをご案内します。

まず、毎年1月~2月になると、各年金受給者宛てに日本年金機構や企業年金の管理者などから前年度の公的年金等の源泉徴収票という確定申告用の書類が送られてきます。この書類をチェックし、自分が受給している公的年金等の合計金額が、上述の確定申告不要制度の要件(具体的には合算して400万円以下か)を見ます。

また、給与所得などがある年金受給者は、別途源泉徴収票を用意し、金額を確認します。確定申告の際必要となるのは、最低限この源泉徴収票となります。

他に自営業をされていて、青色申告等をされる方は、別途それに関連した書類を用意しておきましょう。

※仮に、提出が不要な書類であったとしても、税務調査などで必要となる可能性があります。

申告書記入例

申告書は、手書きで作成することもできますが、国税庁などのホームページ上で数値を入力するだけで、自動的に作成することもできます。

以下は、年金収入のみの場合の、申告書記載例です。

年金受給者が確定申告について考える意味

老後になると、いままでと生活が一変します。具体的には、仕事中心だった生活が、プライベートや医療(病院)を中心とした暮らしに変わります。また、老化に伴いどうしても判断力・思考力は徐々に低下していきます。

ただ、その程度は万人によって差があり、中には現役と同様に働ける方もいます。確定申告不要制度は、主に「普通の年金受給者」を制度的な負担から守るために定められました。したがって、比較的余裕のある方には、現役同様確定申告の義務が課されます。

フリーランスの方にもいずれ老後が訪れます。その場合、年金受給者となった自分はどのような暮らしを送っているのかについて、考える意味は十分にあります。

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