石油が枯渇してない理由|新しい油田/探索技術/開発技術

雑学

石油あと何年持つの

現在の日常生活に必要不可欠な存在が石油です。しかし、石油は無限ではなく、いつかは枯渇します。ここで問題なのが、石油はいつ枯渇するのかという問題と、石油が枯渇した場合、世界がどう変わっていくのかという問題です。

そもそも石油とはいったいどのような存在で、どのようにして世界に供給されているのでしょうか。今回は石油とはなにか、そして石油はいつ枯渇するのかに関して解説していきます。

石油とは有限資源である

現在、世界中で当たり前のように利用されており、生活に不可欠な存在である石油ですが、石油とは元々、数億年前に生存していた生物の死骸が元になっています。

石油は生物の死骸が長い年月をかけて、土砂やその他の物質と混ざり合い、地中にて地質学的変化を経て石油になります。つまり、石油とは過去の遺産であり、無限に抽出されるものではありません。必ずいつかは枯渇します。

石油と原油の違いは?

ここで必ず疑問にあげられるのが、石油と原油の違いです。簡単に説明すると、原油とは石油を精製する前の地中から抽出された天然の状態です。その原油を製油所で精製して初めて原油は石油になります。日本ではほぼ100パーセント、石油を輸入に頼っていますが、石油を輸入する際は、原油の状態で輸入します。そしてその輸入した原油を日本の製油所で精製して石油に変えています。

原油状態で輸入する理由は、石油は劣化が激しいため、大型タンカーで3週間近くも石油を輸送することができないためです。そのため、まずは原油で輸入を行い、日本で石油に精製しています。

石油と戦争の関係

近代国家を支えているのは石油であるいっても過言ではありません。国連で国家に制裁を加える際、石油の供給を止める、といった話がよく出てくるように、近代国家では石油の供給が止まり、国家の石油が枯渇してしまうと、インフラや工場なども停止してしまい、国家は崩壊してしまう可能性すらあります。

それほど近代国家にとって石油とは重要なものであり、なくてはならない存在です。そのため、過去も現在も、たびたび石油を巡っての戦争が起こっています。

有限である石油が世界的に枯渇してきた場合、代替となるエネルギーが発見、発明されなければ、このような不幸な歴史は繰り返される可能性もあります。

中東で石油が多く抽出される理由とは?

石油といえば中東を想像する人も多いでしょう。実際に石油の埋蔵量、生産量に関しての国別のランキングでは、有数10に中東の国が多くランクインしています。

これには理由があり、古代、現在の中東諸国の地域には広大な海がありました。テチス海と呼ばれる、この広大な海で発生した大量のプランクトンの死骸などが、長い年月を経て石油となっています。

1987年の石油枯渇問題とは?

近代国家が石油に頼れば頼るほど、世界中で議論になるのが「いつ石油は枯渇するのか?」という問題です。この石油枯渇の指標に関しての研究結果は多々公表されています。

有名なのが、1987年に発表された研究結果です。この時「石油はあと42.4年で枯渇する」という発表がなされました。

しかしその後、後述する2011年ではまた違った結果が公表されます。

2011年の石油枯渇研究の発表

1987年の石油枯渇の年数の発表から24年後の2011年、新たな石油枯渇に関しての研究結果が公表されます。それによると「石油はあと54.2年で枯渇する」と発表されました。

極端に枯渇する期限が伸びていますが、これは研究結果が適当であるからではなく、1987年当時とは石油の埋蔵箇所の探索や開発技術が大きく進歩したため、1987年当時には発見されていなかった油田を発見したり、その油田を開発する技術が進歩したためです。

そのため、今後も石油の枯渇する年月というのは先延ばしになる可能性はあります。しかし、忘れてはならないのは間違いなく石油は有限であり、このまま世界が石油を使い続ければ、石油は確実に枯渇します。

石油が枯渇しないわけ

いつか石油が枯渇するという問題は、昔も今も世界にとって重要な問題です。特に先進国は石油がなくては国を形成することすらままなりません。それほど近代国家は石油に依存しています。

しかし、先述したように「石油は枯渇する」といわれ続けながらも、枯渇する年月が延び続けているのも事実です。それは新しい油田の発見や、新しい探査技術が加わっているからなのですが、実は石油は有限ではなく無限であるという説もあります。

石油は無限であるという説

石油はどのようにして生み出されるのかという理屈は先述のとおりです。古代生物の大量の死骸が、長い年月をかけて地質学的変化を経ることで石油となります。

しかし、この説には異論があり、石油とは古代生物の死骸がら成っているのではなく、地球の地底に存在するマグマが化学反応をおこして精製されるものであるという「石油無期限説」という説も存在します。

この説は一部の学者からは石油が枯渇しない本当の理由として支持されていますが、世界的には石油は古代生物から発生したという「有機成因論」が常識です。

新しい油田・油井の発見

石油枯渇までの年月が延び続けている理由の一つが、新しい油田や油井の発見です。1987年以降、世界では次々に新しい油田が発見されています。

特に深海探査技術が飛躍的に向上したため、世界中の海で石油探査が繰り広げられています。その結果、海の中には大量の石油が埋蔵されていることが次々とわかり、2011年の発表のように石油枯渇の年月が延びてきています。

石油探索技術の飛躍的向上

石油の探索技術は現在、飛躍的に向上しています。深海探査もそうですが、過去の石油探索では、地表に漏れ出ている石油を目安として油田の開発を行なってきました。しかし、石油というものは地下数千メートルに滞留している資源です。

以前の技術では、このように地下深くに眠っている石油を探索することは困難を極めました。しかし、現在は人工衛星で地球の内部を探ることもできますし、地下数千メートルまで掘り進めることのできる技術も存在します。このように技術の発展が、今まで知られていなかった石油の埋蔵場所を探し当て、新たな油田の開発に繋がっているということです。

新しい開発技術

新しい油田の発見や探索技術の上昇と比例して石油の開発技術の向上も、石油枯渇問題の期間を延長させている理由の一つです。従来の技術では開発、利用できなかった石油も、現在の技術により開発、利用できるようになってきています。その代表的な例が、シェールオイルです。

シェールオイルとはなにか?

近年、世界を騒がせたニュースの一つがシェールオイルです。シェール革命とも呼ばれるこのニュースは、世界を驚かせました。そもそもシェールオイル、シェール革命とはなんなのでしょうか。そしてこのシェール革命が石油枯渇問題にどう影響するのかを解説します。

シェールオイルも石油である

まずはじめに理解しておかなければならないのは、シェールオイルも石油であるということです。まるで石油とは違う新しいエネルギー資源が発見されたかのように考える人もいるはずです。しかし、シェールオイルは石油です。まずはそのことから認識しておく必要があります。

しかし、シェールオイルも石油であるならば、従来の石油と変わらないはずです。革命という言葉をつけるにはいささか大げさなようにも感じます。

なぜ、シェールオイルの発見、開発がここまで世界を騒がせているのかというと、これまでの技術ではシェールオイルは採掘も不可能でしたし、実用化も難しいと考えられていたからです。

シェールオイルと石油の違いは溜まり方の違い

シェールオイルと従来の石油の違いは、石油の溜まり方の違いです。従来の石油は、シェールガスの名前にもあるシェールと呼ばれる「頁岩(けつがん)」に溜まっていたものが染み出して地中に埋まっているタイプです。

従来の石油はこのシェールから湧き出た分だけを発見、採掘、開発を行なっていました。しかし、シェールオイルはこのシェール層から抜け出せずにそのまま留まっている石油を指します。

ただ問題なのが、このシェール層を破壊しつつ石油を抽出する技術が今まで存在しなかったということです。しかし近年、アメリカで初めてこのシェールオイルの採掘に成功したことが大ニュースとなりました。このシェールオイルの開発が順調に進めば、アメリカは世界で有数の産油国になる可能性もあります。

シェールオイル開発の問題点

この画期的なシェールオイル開発ですが、課題も大きく残されています。それはコストの問題です。シェールオイルはシェール層に閉じ込められている石油を採掘する必要があります。つまりそれはシェール層から湧き出している石油を採掘するよりも遥かに難しく、そしてコストもかかるということです。

現在、従来の石油を多く生産、輸出している中東諸国はシェールオイルの影響もあってか、石油価格を安く設定しています。そのため、現在は高コストで失敗の可能性も高いシェールオイル開発はあまり目立たなくなってきています。しかし石油が有限である限り、このシェールオイル開発は避けては通れません。その時には世界の資源国家の情勢も大きく変わってきているはずです。

日本に石油はないのか?

ここで気になるのが、日本に石油はないのか、ということです。もちろん、日本にも石油は存在します。日本書紀でも石油は「燃ゆる水」として記述があり、石油と日本人は密接なつながりあります。

しかし、石油の採掘には莫大なコストがかかることもあり、日本は現在、石油を中東からの輸入に頼っているのが実情です。しかし、排他的経済水域も合わせると世界でも有数の国土面積を誇る日本には、海底資源が豊富に眠ると言われており、一説によると日本の潜在石油埋蔵量はサウジアラビアを抜いて世界第二位になるのではないか、という説もあるぐらいです。

その他、メタンハイドレードといった新しい資源の発見もあり、将来的に日本は資源国家となる可能性があります。

石油はいつか枯渇する。そのことを少し考えてみよう

今回、石油が枯渇していない理由と、今後の石油事情に関して解説していきました。石油は当分、枯渇することはないでしょう。それはこれからも新しい油田が発見される可能性があり、またシェールオイルといった、新しい形での石油開発も促進されることは確実だからです。

しかし、それでもいつか石油は枯渇します。そして石油が枯渇するまでに、世界は新しいエネルギーを発見するか、今までの生活を見直す必要性があります。資源が世界的に少なくなった場合、その資源の争奪戦が始まるのは間違いありません。

日本もかつて、資源を求めて戦争を行なった歴史があります。そしてその戦争では、最終的に悲惨な結果を日本にもたらすことになりました。

現在の世代でそのようなことが起きる可能性は極めて低いでしょう。しかし、これからの世界のためにも、今を生きる現代人がもう少し資源に対して意識を持って考える必要があるのは間違いありません。

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