大卒初任給の平均手取り額
近年は大学進学率も高くなり、高校卒業者の50%前後が大学に進学すると言われます。大卒での就職のメリットは、何といっても初任給が高卒や専門卒よりも高めに設定されていることです。業種によっては同じ年度でも大卒と高卒では20~30万円ほど額面年収が違ってくることもあります。
そんな大卒者の初任給について、就職時期や地域、業種などに分けて詳しく解説していきます。
額面給与と手取り給与の違いとは
そもそも求人情報に掲載されている「額面給与」と実際にもらえる「手取り給与」とは何が違うのでしょうか。
一般的に求人情報に掲載されている給与とは、「額面給与」を指す場合がほとんどです。たとえば額面給与が月額20万円の場合には、健康保険料・厚生年金保険料・所得税・住民税や企業ごとに設定されている確定拠出年金や、持ち株積み立てなどの福利厚生費が差し引かれ、おおむね17~18万円ほどが実際の支給額となります。
初任給でもルールは変わりませんが、住民税は前年度の給与から計算して金額が決定されるため、住民税の負担が始まるのはおおむね就職後2年目以降です。
大卒の平均初任給の年別推移と歴史
大卒を含む、求人の募集での初任給額は募集時期の景気や求人に対する倍率によって左右されることがほとんどです。ここ数年で若年人口が減少したことや、景気の回復傾向を理由に、新卒での雇用人数の増加がみられます。
それに伴って、新卒入社者の初任給も増額傾向にあり、今後しばらくは景気回復の後押しもあり大卒者に有利な状況が続くとみられます。
2014年の大卒初任給の平均額はどうだった?
経団連が発表している 2014 年3月卒「新規学卒者決定初任給調査結果」によると、全産業の平均では209,868円となっており、対前年度では+1,000円程度の増額です。
2009年度から毎年の伸び率は0.1%前後で推移してきたところ、2014年度は対前年比で0.56%上昇しており、近年では08 年(0.58%)と同水準だったと記録されています。
2015の大卒初任給の平均額はどうだった?
引き続き全産業において、2014年から採用における初任給額を増額した企業が57%も増え、引き下げた企業はわずか0.2%にとどまりました。
実際の数値としては、全学歴で1,276 円~2,229 円ほどの引き上げとなり、特に大卒と大学院卒では2,000円を超えています。大卒の平均初任給額は 211,562円となり、特に文系の引き上げ額が2,034円で理系との差額幅が小さくなりました。
2016年の大卒初任給の平均額はどうだった?
全産業・全学歴において初任給の引き上げがあり、2年連続で半数以上の企業が大卒含む新規卒業者の初任給引き上げを実施したのは2000年以来初となります。
大卒の初任給平均は213,892円となり、前年度よりも0.63%アップと高水準を維持しており3年連続の高い伸びとなっています。2016年の大卒初任給の特徴としては、文系の初任給が理系に追いつき、ついに逆転を果たしています。
2017年の大卒初任給の平均額はどうだった?
前年度から新卒初任給の引き上げを実施した企業は47.8%となり、前年度からは多少減ったものの引き続き高水準を維持しています。
大卒の初任給平均は212,873円と前年度より100円ほど下まわりましたが、春季交渉によるベースアップの好影響もあり下げ幅としては影響は小さい模様です。経団連の調査によると、新卒採用を実施した企業の8割が予定採用数に届いていないという報告もあり、売り手市場が続いているため次年度もこのまま維持か増額が期待されます。
大卒初任給の国内地域別平均の比較
日本国内の大卒初任給は、就職する地域においても募集金額が変わります。一般的には企業の本社や支社のある地域での初任給が高く設定され、人口や企業数によって初任給の額が変わってきます。
ここでは厚生労働省が発表している「平成29年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」を参考にして各地域の情報をピックアップしています。
近年では大卒後にU・Iターンをして就職する場合もありますので、各地域の大卒初任給を比較したうえで就職する地域を決めてみてはいかがでしょうか。
北海道の初任給
北海道における平成29年(2017年)3月卒業の大卒者初任給の平均は194,100円でした。東京都で就職した場合を100とすると格差は90.3となります。
北海道は面積が広く、大卒者平均と言えど都市部と山間部とではかなり差額が出てくる地域です。札幌などの都市部には大企業の支社も集まるため、初任給額は比較的安定していると言えます。
東京の初任給
東京都における平成29年(2017年)3月卒業の大卒者初任給の平均は214,900円でした。
日本企業の本社や外資系企業の支社が数多く集まるため、高水準の初任給額をキープしています。今後は2020年の東京オリンピック開催に向けて、雇用の増加も見込めるのではないかと想定されます。
なお、東京よりも初任給額が高い地域が1か所あり、千葉県の大卒者初任給は218,900円で格差101.9となっています。
大阪の初任給
大阪府における平成29年(2017年)3月卒業の大卒者初任給の平均は206,300円でした。東京都で就職した場合を100とすると、格差は96.0となります。
東京都同じく大企業の支社や本社が集まり、有名大学も多いため大卒の初任給は国内でも有数クラスです。初任給額だけで考慮すると、確かに関東圏での就職が魅力的ですが、家賃などの生活費負担まで考えると、大卒後に大阪で就職することを視野に入れても良いのではないでしょうか。
福岡の初任給
福岡県における平成29年(2017年)3月卒業の大卒者初任給の平均は200,500円でした。東京都で就職した場合を100とすると格差は93.3となります。
特に福岡市は「グローバル創業・雇用創出特区」として近年は市を挙げて雇用創出や起業の後押しを行っています。この好影響もあり人口増加と求人も増えています。大卒の初任給もこの影響を受けて徐々に東京都との格差も縮まっているため、今後の大卒者の就職希望地区としても注目を集めること間違いなしです。
大卒初任給のアジア各地との地域別平均の比較
近年アジア圏は、新興国市場として経済の伸び率は目覚ましいものがあります。語学力を活かすなど国際的な活躍を考えている場合や、IT関連の技術を学びたい方など、大卒後に海外企業への就職を検討してみてはいかがでしょうか。
ここでは日本の大卒初任給と共に、成長が著しいアジア各国での物価や大卒初任給について紹介します。
日本における初任給
日本における大卒での平均初任給額はここまでご紹介したように、ここ10年ほどはおおむね20万円台前半で推移しています。国内の物価水準に合わせて初任給平均額も変動することが多いため、日本は安定的な物価を保っているものと考えられます。
2020年開催予定の東京オリンピックに向けて経済特需を考慮すると、国内企業の利益伸長とそれに伴う大卒での採用にも期待ができそうです。
フィリピンの初任給
フィリピンの物価は日本と比較すると3分の1程度です。大卒初任給額はフィリピンの国家統計局によると、平均1万ペソ程度で日本円に換算するとおよそ2万円強といったところでしょう。
教育産業や情報通信関連の業界に高所得者が多く、日本からの新卒での就職を考慮するのであればこの業界を目指したいところです。その他、外国人向けのホテルやリゾートでのサービス業も高水準で募集をしている業種です。
マレーシアの初任給
マレーシアの物価は日本の3分の1程度と言われています。都市部は近年発展が目覚ましく物価上昇があるものの、まだ日本よりは生活にかかる費用は安い印象です。
大卒での初任給はおよそ4,000リンギットで、日本円に換算するとおよそ11万円ほどとなります。学歴別比較の平均値が1,800リンギットと大卒の半分以下であることを考えると、大卒者がいかに優秀であるかがうかがえます。
台湾の初任給
台湾での大卒初任給は約2,800元で、日本円に換算するとおよそ8~9万円と言われます。台湾の物価も日本のおよそ半額~3分の1程度のため、生活に困ることはないでしょう。また、就職後に5年程度で毎年昇給していき、大卒初任給から25%ほど給与が上がります。
ただし、台湾では大学進学率がほぼ100%であるため、全員が同じスタートラインと考えると就職活動は厳しい戦いであることが予想されます。
タイの初任給
タイでの大卒初任給の平均は15,000~25,000THBと幅があり、日本円に換算すると5~9万円ほどとなります。その他のアジア諸国と同じく、IT系関連職の水準が高く、日本からの観光客も多いため日本語が話せると有利な条件で就職することも可能です。
ただし、この金額はタイの首都バンコクで働く場合です。農村との貧富の差が依然として大きいため、その他の地域では半分程度の月収も少なくありません。
大卒初任給の業種別平均ランキング
最後は日本国内で大卒後に就職する場合の業界別の初任給をランキング形式で調査しました。大卒時点の初任給額については、地域や業種にもよりますが最大で平均5万円程度の乖離が見られます。ただし、長期的に業務を行っていくうちに昇給が継続的に見込める業界もあるので、将来的な平均給与額についても考慮する必要があります。
大学に入学する時点である程度将来の方向性は決めている方がほとんどですが、今後の可能性を広げる意味でもぜひ参考にしてみてください。
保育士の大卒初任給
保育士の大卒初任給は約17万円で手取りに換算するとおよそ14万円程度となります。そもそも、保育士は専門課程のある高卒や短大卒での就職が多いため、大卒でのメリットは少ない業種と言えます。
昨今の保育士不足が叫ばれる中で需要自体は非常に高まっており、ここ数年で少しずつ待遇が改善されているとはいえ、まだまだ全産業の平均給与額より10万円ほど低い結果となっています。保育士の業務は専門的な知識が必須なだけではなく、体力的にも過酷なため、今後行政の主導により大きな待遇改善が必要な業界と言えます。
福祉の大卒初任給
福祉の大卒初任給の平均や約17万円程度となり、手取りに換算すると14万円程度となります。大卒とそうでないかではの金額は3万円以上の開きがある場合があります。
保育士と並んで待遇が低いといわれる福祉関係職ですが、専門的な分野を学ぶ大卒でも初任給をはじめ、給与額平均は水準が高いとは言えません。今後の需要における待遇の改善については現場だけでなく社会的に議論が必要な分野です。
公務員の大卒初任給
ここでの公務員は地方公務員を差し、公務員の大卒初任給は平均18万円ほどで、手取りに換算すると約15万円ほどとなります。このほかに勤務地域に対する地域手当などの諸手当が支給されます。
地域手当は居住地における物価平均や民間企業の賃金水準との格差を調整するために設定されます。東京都の大卒地方公務員では初任給額の20%に設定されており最大値として、地域によってランクが決まります。
市役所の大卒初任給
市役所の大卒初任給は平均18万円程度と言われており、そこに地域手当を含めた手取り額は15万円ほどとなります。地域格差は約10%程度と言われており、国家公務員とは大卒時点では1~2万円ほどの差異となります。
市役所職員は自治体によって必ずしも毎年募集が行われるとは限りません。政令指定都市など人口が多い地域では募集・採用共に比較的安定していますが、政令市以外の地域での勤務を希望する場合には、採用情報を漏らさず確認する必要があります。
郵便局の大卒初任給
郵便局の大卒初任給は平均18万円程度となり、手取り額に換算するとおよそ15万円程度となります。職種は大きく三つに分かれており、転勤もある総合職が大卒初任給で21万円ほど、地域基幹職で18万円ほど、一般職で16万円ほどと幅があります。
全国に展開しており全職種合わせて4,000~4,500名ほどの採用実績があるため、採用可能性も高い職種です。定年までを通すと決して高級とは言えませんが、業務内容や福利厚生が安定しているため男女問わず人気の職種と言えます。
臨床検査技師の大卒初任給
臨床検査技師の大卒初任給は約19万円で、手取りに換算するとおよそ16万円ほどとなります。基本的には国公立の病院のほうが安く、私立病院のほうが高い場合がほとんどです。
臨床検査技師国家試験は合格率が80%ほどの国家資格です。検査センターや検診センターなどで医師とチームを組んで検査を実施することが主な業務です。受験者数も多く供給過多な面も見受けられますが、大学病院や国公立病院で勤務できると年功序列で毎年昇給が見込めます。
国家公務員の大卒初任給
国家公務員の大卒初任給は平均約20万円ほどで、手取りに換算すると17万円程度となります。
一般的には、各省庁などの行政機関に所属する人や外交官、税務署職員などを指して国家公務員と呼び、優秀な人が集まる印象があります。
基本的には人事院から民間企業と同水準の給与となるように設定されており、給与額は景気の影響を真正面から受け止めることとなります。挑戦を行うには、業務的にも給与面でも物足りない可能性がありますが、安定を最優先したい場合には、大学在学中に国家総合職試験の取得を目指しましょう。
理学療法士の大卒初任給
理学療法士の大卒初任給は約20万円で、手取りに換算するとおよそ17万円程度となります。高齢化社会の影響で需要が今後も増え続ける分野であると予想されます。
理学療法士も国家資格が必要な業種ですが、体力が必要な面もあり、平均年齢が若く勤続年数も短い傾向があるため、全年齢の平均所得額は低めです。
ホテルの大卒初任給
ホテルの大卒初任給は約20万円で、手取りに換算するとおよそ17万円前後です。この平均額はホテルのグレードによっては5~6万円近く差があるため注意が必要です。
ホテル業界は訪日外国人の増加に伴って売り上げが好調です。特に外国人人気の観光地では求人数も増加傾向にあるため、特に外国語を専攻している学生にお勧めできる就職先でもあります。業界的には勤務年数により安定的に昇給が見込めますが、サービス部門では24時間シフトの勤務形態がほとんどである点は留意が必要です。
銀行の大卒初任給
銀行の大卒初任給は20万円で、手取りに換算するとおよそ17万円です。この業界の特徴として、3大メガバンクの初任給は同じ額で設定されます。初任給額だけで比較するとその他業種の中でも平均的な金額と言えるでしょう。
ただし、一般的に銀行は高給であるというイメージのとおり、昇給幅が大きいのが特徴です。20代後半からは他業種と比較しても年収が高くなり、30代に入ると年収は500万円を超えてきます。非常に人気も高い業種ですが、三菱東京UFJ銀行が人員削減を発表するなど、今後はより採用が厳しくなっていくことが予測されます。
不動産の大卒初任給
不動産の大卒初任給は約21万円で、手取りに換算するとおよそ18万円程度となり今回の調査では高水準の業種に入ります。顧客単価が高額となる業界のため、初任給額も高めに設定されています。
不動産業界は大きく企画開発・営業・管理の3つの業務に分かれます。企画開発であれば一級建築士資格の取得や営業では宅地建物取引主任者、管理は管理業務主任者資格や防災士など多岐にわたる資格を活かすことが可能な分野です。
看護師の大卒初任給
看護師の大卒初任給は約26万円程度で、手取りに換算するとおよそ23万円となり今回紹介した業種の中ではぶっちぎりの高水準です。資格職の中でも常に供給が不足している分野であるため、転職でも非常に有利に働きます。
専門知識も体力も必要で高負荷のかかる業種のため離職率が高い点も気になりますが、生涯にわたって高水準の給与を取得できるメリットがあります。
大卒でより有利に就職を目指そう
やりがいも大切ですが、おなじくらい生活のための給与は大切です。大卒という肩書を得て就活を有利に進め、初任給とともに生涯年収についても考慮したうえで最良の仕事を目指していきましょう。