「ご霊前」の金額の相場/お金の入れ方・ご仏前との違い

雑学

「ご霊前」とは?

意味と表書き

ご霊前とは、死者の霊に手向けるお金を包む香典の表書きを言います。昔は葬儀にための米などの品物は、すべて弔問客が持ってくるものでした。現代は、葬儀に関するものは喪家がだいたいそろえるので、弔問客はその分をお金に包んで持参し、香典として霊前に供えるようになりました。

ご霊前は、一般的に喪家の宗教がはっきりしない場合には用いますが、万能ではありません。浄土真宗や禅宗、プロテスタントでは使用しないからです。仏教で喪家の宗派がはっきりしない場合は「御香典」にするとよいでしょう。御香典は仏式の表書きで、宗派を問いません。

仏式では、表書きは「御霊前」「御香典」「御香料」などで、神式なら「御霊前」「玉串料」「御神饌料」など、キリスト教式では、「御霊前」「お花料」、「御ミサ料」(カトリック)などを使用します。

いつ渡すか

ご霊前は、通夜か葬儀、告別式に持参します。訃報を受けてからすぐの弔問の時には、準備していたような印象を与えるので、ご霊前は渡さないとされています。

ご霊前は受付に渡しますが、受付がない場合は、遺族に手渡すか祭壇に供えます。ご霊前を通夜に持参した場合は、葬儀告別式の受付では記帳のみでかまいません。

ご霊前の金額相場は?

身内が亡くなった場合

身内であっても喪主に対してご霊前を出すのが一般的であるとされています。また、独身者の場合も、ある程度の年齢や社会的立場のある人は出すのがマナーです。ただし、配偶者の場合で、子供が喪主の時は出す必要はありません。

両親が亡くなった場合の金額の目安は、5~10万円前後です。結婚している子供は、ご霊前を出しますが、喪主を務める場合には出す必要はありません。

祖父母の場合の金額の目安は、1万円~3万円です。結婚している孫は、同居に関わらずご霊前を出します。ただし、独身の孫は、親が喪主を務める場合には出す必要はありません。また、叔父叔母が喪主の場合も、親が出すのが普通です。

兄弟姉妹の場合の金額の目安は、3万円~5万円です。自分が結婚している場合は、ご霊前を出します。自分が独身で、亡くなった兄弟姉妹が既婚者の場合は、親が喪主を務めるので、出す必要はありません。故人が独身の場合も同じです。

親戚が亡くなった場合

結婚している人は、親と同居していてもご霊前を出すのが一般的です。独身者で、社会人になりたての年齢が若い人は、親と同一世帯であることから、出さなくても問題ありません。しかし、ある程度の年齢や社会的立場にある独身者は出すのが良いでしょう。

叔父叔母が亡くなった場合、ご霊前の金額の目安は、1万円~3万円です。親が出す額よりは少なめにするようにしましょう。

その他の親戚の場合は、5千円~1万円ですが、付き合いによってご霊前を出すか迷うところです。自分とほとんど付き合いがない場合には、親が出せばよいでしょう。逆に、故人にお世話になった場合は、独自にご霊前を出すのが良いとされています。

友人や知人が亡くなった場合

金額の目安は、5千円~1万円程度になります。付き合いによっても多少変わります。近所の方の場合は、3万円~5千円くらいが目安です。

最近はあいさつ程度の関係も多く、ご霊前を包むか迷うところですが、自治会や子供の学校関係などでお世話になる場合も多く、他にもどこかでお世話になる可能性もあるので、近所づきあいとして、お悔やみを述べ、ご霊前を包むようにしましょう。

会社関係の人が亡くなった場合

仕事関係の本人や家族が亡くなった場合、金額の目安は3千円~1万円程度です。

また、会社の部署からご霊前を出すときは、同僚の間でお金を集めるときに、総金額が端数にならないように注意してください。例えば、何万円、何千円などが好ましく、何万何千円はあまり好ましくありません。

ご霊前のお金の入れ方とは?

ご霊前の袋

仏式の場合

一般的に使えるのがご霊前ですが、本来は宗教に合った表書きにするのが丁寧です。水引はすべて結び切りか鮑結び(あわびむすび)を用います。一度結んだら解けないことから、繰り返すことを嫌って、これきりにしたいという願いが込められています。鮑結びには、末永いおつきあいという意味もあるとされています。

仏式のご霊前の場合は、黒白、双銀の水引の袋を用いるようにします。黒白は三万円くらいまでで、双銀はさらに金額が多くなる時に使用します。しかし、京都では、葬儀からずっと黄白の水引のものを使います。

他関西や北陸地域では、葬儀が黒白で初七日法要以降は黄白になります。現代はお骨上げの時に初七日法要をするので、お骨上げが終わるとそこから黄白を使います。

神式とキリスト教式の場合

神式では、黒白や双銀、双白の結び切りの袋を使うことが一般的です。キリスト教式では、水引のない白無地袋か十字架や花模様の入った袋が一般的です。白い封筒なども用います。

蓮の絵が付いた袋は、仏式専用ですので気を付けましょう。

袋のマナー

のしはつけないようにします。昔からおめでたい贈り物には、海産物のアワビや昆布などの生ものを添えていたという習わしがのしの起源とされています。そのため、ご霊前にのしをつけるのは失礼になります。

また、その他の大切なご霊前の袋のマナーとして、中袋を外包みで包む場合があります。中袋にお金を入れたら、開いた外包みの中央に中袋の裏面が見えるように置きます。包みを左、右の順に閉じて、最後に必ず上側が覆い被さるようにします。ここは慶事とは逆なので注意が必要です。そして最後に水引を通して整えたら完了です。

一周忌当日は香典袋は必ず袱紗(ふくさ)に包んで持参するようにしましょう。袱紗が無い時は、大きめのハンカチで包むとよいでしょう。また、ポケットタイプの袱紗は便利です。色は黒や白、暗めの色を使用しましょう。明るい色は避けるようにしてください。

お札の向きと新札

ご霊前に入れるお札の向きは、顔のある面が裏向きなどいろいろな説があり、人によって受け止め方が違います。したがって、遺族の方を不快にさせないように心掛けていれば問題ありませんが、失礼のない方法としては、やはりお札の顔が中袋の表面にこないようにする意見が多くみられます。

そして、数枚で包む場合は、必ずお札の向きを揃えるようにします。包む金額の枚数は四や九は死や苦しみを連想するので避けるようにしましょう。

また、不幸ごとの時には、新札は使用しないようにします。新札を用意するということは、不幸を予期して待っていたかのようだからです。しかし、汚れていたりしわだらけのものは逆に失礼なので使わないようにしてください。不幸ごとであっても、やはりなるべく新しいお札を用意して、一度折り目をつけてから整えて、中袋に入れるようにしましょう。

名前

ご霊前の下段には、会葬者の氏名をフルネームで書きます。夫婦の場合は夫の名前だけでもよいですが、妻が故人と親しかった場合は夫のフルネームを中央に書き、その左に妻の名前だけを書きます。

連名の場合は、3名まで書くことができます。右から左に順に位の高い人から書くようにします。

会社で出す場合は、中央に代表者の名前を、その右側に会社名を書きます。部署などで出す場合は、中央に○○一同などと書き、右側に社名を書きます。中に香典を出した人の氏名や金額、住所などを添えておくと、お返しの際に遺族側は助かります。

神式もキリスト教式も同じように書きます。上下のバランスを考えて丁寧に書くようにしましょう。

代理出席の場合の名前

やむをえない事情で通夜葬儀に出席できないときは、家族などに代理を立てることがあります。代理人で参列する人は、受付で誰の代理で来たかを伝えてからご霊前を差し出します。

記帳するときは、出席できない本人の名前を書き、その横に小さく「代」と書き添えます。代理人が妻の場合は「内」と書きます。

中袋の書き方

ご霊前の中袋や中包みには、喪家側が整理しやすいように金額や住所、氏名を書くようにします。金額を表中央に、住所や氏名を裏に書くことがありますが、不祝儀の時は裏面に金額も書くことが望ましいという説もあります。

金額は漢数字で、一は壱、二は弐、三は参、五は伍、十は拾、千は仟、万は萬、円は圓などを用います。縦書きで「金壱萬圓也」などと書きます。アラビア数字(横書き)でもよいとされ、「金10,000円也」などと書きます。

ご霊前の中身は入れ忘れないように十分気をつけましょう。もし、入れ忘れてしまった場合は、すぐに葬儀の世話役もしくは受付に連絡し、できるだけその日のうちに持参するようにします。

入れ忘れに後日気づいた時や遠方でうかがえない場合は、現金書留で郵送しましょう。その際は、必ずお悔やみの言葉をしたためたお詫びの手紙を添えるようにします。

中袋なしのとき

ご霊前の袋ではたいてい中袋が付いていますが、ついていないものもあります。これは、二重であることが不幸が重なるという考えに基づいているとされ、地域によっては使用しないところもあるので、できれば周りの方に確認するなどしましょう。

中袋なしの場合、外包みの裏側下段に住所と金額を縦書きに書くようにします。お金は顔が裏向きになるように包むのが一般的であるとされています。

薄墨で書く

表書きのご霊前では、筆か筆ペンの薄墨を用います。「突然の訃報に涙で墨が薄まる」という意味合いがあるとされています。そのため、薄墨は通夜や葬儀で用います。

一般的に忌明け法要の「ご仏前」からは濃墨でよいとされますが、地域によっては薄墨の場合もあります。

中袋は、金額や住所が明確にわかるようにしなくてはならない(香典返しの時などに必要)ので、ボールペンや万年筆で書いても問題ありません。

ご霊前の渡し方とは?

通夜や葬儀当日に渡す

ご霊前は必ず袱紗に包んで持参するようにしましょう。袋を袱紗に包むときには、慶事の時と反対になるので注意が必要です。まず、袱紗の真ん中より少し右側にご霊前の袋を置き、右側を先に折ります。続いて、下、上の順に折り左側を重ねてはみ出した部分を裏に折り込みます。最後に爪をとめて完成です。ポケットタイプの袱紗は、弔事は左開きになります。

通夜やお葬式では、袱紗からご霊前の袋を取り出し、受付の方に向きを変えてから渡すようにします。「ご霊前にお供えください。」と言葉を添えましょう。

遺族の方には、「この度は御愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申し上げます。」などとお悔やみの言葉を伝えましょう。忌み言葉にあたる、「たびたび」や「重ね重ね」などの言葉は使わないように気をつけましょう。

現金書留で郵送する

やむをえない事情や、遠方の親戚で通夜葬儀に参列できない場合は、ご霊前を現金書留で郵送しても失礼にはなりません。その場合は、訃報を知ったらできるだけ早く送るようにします。お悔やみの言葉の手紙は必ず添えるようにしましょう。

また、ご霊前を弔電と一緒に送金することは、先方に郵便局まで出向かせることになり失礼になります。

郵送するときの手紙の文例

お父様のご逝去のお知らせを受けて、大変驚いています。ご家族の皆様のお悲しみはいかばかりかとお察しいたします。
本来ならば、すぐにお悔やみに参上すべきところですが、遠方のため申し訳なく思っています。お許しください。
失礼ながら、心ばかりの香料を同封いたしましたので、ご霊前にお供えくださいますようお願い申し上げます。
謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。

お悔やみ電報

ご霊前ではなく弔電を送る場合は、通夜、告別式の開始時刻までにその場所に、喪主あてに届くように申し込むようにします。喪主がわからないときは、「故○○様ご遺族様」とします。

差出人の氏名はフルネームで、会社や団体名、住所電話番号など、故人との関係がわかるように記入しましょう。

NTTの電報は、電話の場合は局番なしの115番からできます。インターネットは24時間受付可能で、ホームページには弔電の文面の定型文も載っていて選ぶこともできます。

供物、供花を贈る

死者に供える品物や花を、供物や供花言います。主に贈るのは近親者などですが、祭壇のことを考慮して、贈る場合は事前に先方へ確認をとるようにします。

葬儀社に頼むと、供物や供花は適切に対応してくれます。自分で用意する場合は、供物を通夜までに贈る場合は、当日の午前中までで、葬儀は前日までに届くようにします。

仏式の供物は、線香やろうそく、果物や菓子を贈るのが一般的です。また、最近では故人が好きだったものも贈ることもあります。かさばらないものの場合は、地味な風呂敷に包み持参しましょう。

供花は花環の場合は、団体や公的立場の人が贈ることが多く、生花は近親者や友人が贈るのが一般的です。

ご霊前とご仏前の違いとは?

仏式では、通夜や葬儀、初七日法要までは、「ご霊前」を使用します。四十九日(三十五日のところもある)の忌明け法要からは「ご仏前」になります。これは、人が亡くなって霊になり、閻魔大王の裁きにより極楽浄土への判決がでるのが四十九日であり、成仏するという考えからきています。

しかし、曹洞宗といった禅宗では、「浄土」という考えがありません。四十九日が経過したことにより、霊が仏になるとは説かず、仏道修行に励むと説かれています。したがって、香典袋の表書きは、亡くなってからずっと「ご仏前」となります。

また、浄土真宗は亡くなった方は四十九日を待たないで極楽浄土へ往生すると説かれているので霊という考えはなく、香典袋で「ご霊前」を用いずにずっと「ご仏前」とします。

神式では、亡くなって五十日目に五十日祭があります(忌明け)。キリスト教では亡くなってから一か月目に追悼ミサや昇天記念日があります。

訃報を受けたらまずすることは?

死亡の連絡を受けたら、立場を踏まえた弔問をします。本来は、故人と親しい関係や親戚が自宅に赴きお悔やみの言葉を述べることを弔問と言いましたが、現在は、遺体は自宅ではなく葬儀場に安置することが多く、通夜に弔問するとされています。そのため、自宅に駆け付けるときは平服ですが、通夜などでは喪服を着るようになります。

自宅での弔問は、長居せず簡単な挨拶で済ませます。故人との対面は、遺族から勧められない限り控えましょう。また、勧められた場合は謹んで受けましょう。

遺族と会ったら、お悔やみのことばを述べましょう。例としては、「この度はまことにご愁傷様です。心からお悔やみ申し上げます。」などです。

少しでも遺族に協力できるように、できれば手伝いなどを申し出るようにしましょう。また、通夜より前の段階ではまだご霊前を持参しません。

ご霊前を持参するのは、通夜や葬儀のときとされています。

ご霊前に気持ちを包もう

今回は、「ご霊前」の金額の相場やお金の入れ方、ご仏前との違いについてご紹介しました。いかがでしたか?分かっているようで色々と決まりごとがあり、なかなか難しいご霊前のマナーですが、確認しておくと安心して故人を偲ぶことができるのではないでしょうか。

ご霊前を包むということは、故人や遺族に対してその人の心を包むことでもあります。お金の入れ方や水引にしても、細かな気遣いがある日本の風習であり、とても美しいことです。

私たちはそのような美しい風習を大切にし、守っていかなくてはなりません。一人の大人として恥をかかないように気を付け、故人や遺族にしっかり寄り添ってあげられるようにしましょう。

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