世界の仕事観|宗教別/欧米/日本・日本の偉人による10の名言

雑学

日本人は勤勉って本当?

近年、労働環境を見直そうと日本国内で「働き方改革」と叫ばれています。そもそも日本人の仕事観は世界的に見て稀有なものなのでしょうか。答えはイエスです。昔から日本人は勤勉な民族だと言われて来ましたが、国際化が進んだ今でも日本人ほど長時間働く民族は他にはいないと考えられています。

宗教別の仕事観

実は私たち日本人の仕事観にも、諸外国の仕事観にも宗教の教えが大きく影響しているのをご存知でしょうか。世界には多数の宗教がありますが、今回はその主なものが「労働」におよぼす影響についてお話していきます。

イスラム教の仕事観

まずは世界三大宗教の一つと言われるイスラム教からみていきましょう。イスラム教徒の人口は約16億人、日本ではあまり馴染みはありませんが世界中に信仰者がおり2100年にはキリスト教徒の人口を越すと言われています。経典はコーラン、唯一神アッラーを進行する宗教です。

コーランには「勤勉であれ」と書かれており、人間が働けるように昼間を作ったともされています。生活の中心に宗教があり「宗教のために働く」と言う仕事観を持っている人が多くみられるのが特徴です。また、健康な体と健全な精神を持っているにもかかわらず働かないのは信仰心がないとも考えられています。

敬虔なイスラム教徒にとって仕事は宗教のためにあるものですので一日に何度もあるお祈りの時間には何をしていても手を止めますし、毎週金曜日はお祈りのために仕事を早く切り上げます。ラマダンと呼ばれる断食月には仕事を早く切り上げる場合もあります。

キリスト教の仕事観

キリスト教にもカトリック、プロテスタントと宗派がありますが仕事観はあまり変わりません。キリスト教徒の多い欧米諸国やヨーロッパ諸国では「労働は罰」という仕事観が根深く残っています。

キリスト教、ユダヤ教の盛典「旧約聖書」にエデンの園で生活していたアダムとエバの有名な神話が書かれています。二人は禁断の実に手を出した事で園を追われ外の世界で田畑を耕しながら生活しなければいけなくなったと言う内容で、キリスト教徒の持つ仕事観に大きく影響していると考えられます。

ヒンドゥー教の仕事観

主にインドやネパールで信仰されているのがヒンドゥー教。最も重要な文献は「ヴェーダ」と呼ばれ、多神教で複雑な宗教です。

ヒンドゥー教の大きな特徴はかつて「カースト制度」が設けられていたことです。生まれたときから人は4の階級に分けられ、その身分に添って生活しなければならず、職業は基本的に世襲制度でした。現在はカースト制度は禁止されましたが特にネパールでは今なお根深く残っている地域もあります。

そんなヒンドゥー教徒の仕事観は「仕方ないからやる事」です。仕事よりも自分の生活を大事にする傾向が強く、仕事に重きを置いていません。ですので自分の都合で仕事の約束を守らなかったり、大幅に遅刻してくると言うのも日常茶飯事です。

仏教の仕事観

日本でも馴染みの深い仏教徒の仕事観はどのようなものなのでしょうか。

仏教は釈迦が悟りを開いてそれを仲間に広めたところから始まったと言われています。人生に苦しみ出家し、悟りを得た釈迦の教えは大雑把に言うと「人生に苦しみはつきもので、それを取り去る為に正しい行いをしなさい」と言う事です。その正しい行いの中には労働も含まれています。生まれたからには労働を含む人生の修行をしなさいと言う考え方が仏教です。

「労働は涅槃に至るための修行の一つ」と言う仕事観を持っていると言えるでしょう。

日本と欧米の仕事観

国際化が進んだ今でも、日本と欧米諸国では仕事観に大きな違いがあると言われています。外資系企業が日本に進出すると、その労働環境は「ホワイト」などと言われる事が多いですが、海外の労働者にとっては受けられて当然な事が多いです。逆に諸外国の労働者からすると、日本の企業で働く事はとても厳しく感じる事が多いと言われています。

次は、日本と欧米諸国の仕事観について比較してみていきましょう。

就職活動

日本では当然の事となっている大学生の「就活」ですが、欧米諸国ではどうなのでしょうか。

海外の人から見ると、日本の「就活」はとても異様な光景に見えると言います。大学生が同じようなリクルートスーツを着て、似たような髪形で集団面接を受ける姿は「信じられない」と驚きを隠しません。

欧米諸国の就職活動は個人に任されており、その人の好きなタイミングで仕事を探し始めるのが一般的です。また、新卒・既卒という概念は無く、日本のように新卒で就職に失敗したからもう仕事が無い、などと言う事はありません。

しかし、欧米諸国では採用の際には「即戦力として働けるかどうか」が重要視されます。大学での成績やボランティアなどの社会経験が日本以上に考慮され、他の応募者との違いをアピールする事が大事だと言われています。

休暇

欧米諸国の労働者は「バケーション」を取る事で知られています。日本で働く人からすると、2週間以上にも渡る休みなど本当にあるのかと疑問ですが、本当に休暇を取ります。欧米諸国の労働者にとって休暇は当然受けられる権利であり、会社から与えられるものと言う感覚もありません。普段働いているのだから当然という考え方の人が多いです。

仕事ぶり

欧米諸国は労働時間が短い分、短時間で効率を上げる必要があります。時間の限られた中での仕事ですので、長時間のミーティングや日本のような取引先への接待はありません。また、従業員数が少なく仕事量が多いと言う事態に陥らないようにも配慮がされており、労働者は余裕を持って仕事ができる環境です。

国民性

欧米諸国と日本仕事観の違いは国民性の違いも大きく影響しています。

「真面目で勤勉」だと言われるドイツ人は、労働を多方面から厳しく法律で規制しています。「大らかで明るい」スペイン人は仕事中でもコーヒーを飲みにカフェに行ったり、少しならお酒を飲んでも大丈夫だと考えていたりその仕事観は多様です。

私たち日本人には信じられませんが、欧米諸国の労働者は勤務時間が終わると仕事が残っていても帰宅します。「サービス残業」など絶対にしません。一方、「和」を重んじる国民性と言われる日本人は周囲を気にして行動します。上司が仕事をしているから終わっているのに帰れないという経験は誰にでも起こりえることです。これも日本人の仕事観が現れていると言えます。

日本語の「働く」意味の語源

次に日本語の「働く」の語源について見ていきましょう。

働く

諸説ありますが、日本語の「働く」と言う言葉は「傍(はた)を楽にする」と言う言葉から来ていると言われています。これは音だけで語源ではないとする考え方もありますが、自分の傍にいる人を楽にするために働くと考えるのは日本人の持っている仕事観と似通った部分があります。

仕事

「仕事」の語源は「すること」から来ています。「すること」「するべきこと」が変化し、労働全体や職業を表す言葉として定着したと言われています。

労働

「労働」については漢字を見ていきます。「労」と言う漢字は元々夜間の仕事を表していました。少ない明かりで仕事をすると言った意味で使われていた「労」の字に、人が動く事を表した「働」を組み合わせて「労働」と言う言葉になりました。

仕事観を語る日本の偉人による10の名言

次に現代日本に影響を与えた10人の偉人の仕事観が垣間見れる名言をみていきましょう。

志賀直哉

「城の崎にて」や「暗夜行路」などで知られ、同世代の作家からも尊敬を集めた志賀直哉の名言は志賀直哉自身の仕事観が表れています。経済的に困窮しない程度に稼ぐ事ができれば、仕事をしていて楽しいと思えたほうが幸せだと考えていました。

「金は食ってさえいければいい程度にとり、喜びを自分の仕事の中に求めるようにすべきだ」

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手塚治虫

「漫画の神様」と称され、今なお知らない人のいない手塚治虫は医師の免許も持っていました。しかし漫画を描く事が大好きで、医者にはなりませんでした。好きな事を仕事にすると言うのは生活の安定よりも幸せな事だと、志賀直哉と同じ仕事観を持っていたと言えます。手塚治虫は、病床でも漫画を描き続けていました。

「医者は生活の安定を約束していた。しかし、僕は画が描きたかったのだ」

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井深大

ソニーの創設者の一人、井深大も趣味を仕事にするべきと言葉を残しています。趣味や好きな事を仕事にできたら、それ以上の幸せはないのだと教えてくれる名言です。彼の仕事観にも志賀直哉や手塚治虫の仕事観と通ずるものがあります。

「人生で一番の幸福は、仕事と趣味が一致すること。その仕事に興味が持てなかったら、早く足を洗う。そうでなければ、何とか仕事を自分の恋人にしよう、というぐらいの覚悟を決めるしかない」・出版年  1998年・出版社  小学館・著者名  井深大研究会(編集)・著書名 井深大語録・ISBNコード  ISBN-10: 4094162917       ISBN-13: 978-4094162912

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山本常朝

江戸時代の薩摩藩士、山本常朝。「武士道とは死ぬ事とみつけたり」と言う言葉があまりにも有名ですが、仕事観についても窺い知ることのできる言葉を残しています。「人間の一生は短い物なので、好きな事をして暮らすべきだ」と、現代の私たちにも響く言葉です。

「人間の一生はわずかの事なり。好いたことをして暮らすべきなり。夢の間の世の中に、好かぬことばかりして、苦しみて暮らすは愚かなことなり」・出版年 1983年・出版社 新潮社・著者名 三島由紀夫・著書名 葉隠入門・ISBNコード ISBN-10: 4101050333       ISBN-13: 978-4101050331

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山岡孫吉

現ヤンマーホールディングスの創設者の山岡孫吉は、昭和初期の時代にドイツにまで足を運び世界初の小型エンジンを作り出しました。その道のりは険しく何度も諦めようとしましたが、従業員に支えられ開発に成功しました。好きな事だからこそ諦めずにできたと教えてくれます。

「私に取り柄があるとすれば、ただエンジンが好きで好きでたまらず、それに没頭できたことだ。」・出版年 2014年・出版社 PHP研究所・著者名 ビジネス哲学研究会・著書名 心に響く名経営者の言葉・ISBNコード ISBN-10: 4569762212ISBN-13: 978-4569762210

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大隈重信

早稲田大学創設者の大隈重信は、学問、仕事、行動をまとめるのは意思の力であると言葉を残しています。学んだ事を仕事や行動に生かそうとも取る事ができます。

「学問は脳、仕事は腕、身を動かすは足である。しかし、卑しくも大成を期せんには、先ずこれらすべてを統(す)ぶる意志の大いなる力がいる、これは勇気である」

http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/inde…

本田宗一郎

言わずと知れた自動車メーカー、ホンダの創設者です。彼は従業員を大切にし、また従業員からも「オヤジ」として慕われていたことがとても有名です。本田宗一郎の仕事観は現代を生きる日本人が知っておくべきものと言えるでしょう。

「会社の為に働くな。自分が犠牲になるつもりで勤めたり物を作ったりする人間がいるはずない。だから、会社の為などと言わず、自分の為に働け」・出版年 2017年・出版社 宝島社・著者名 別冊宝島編集部・著書名 本田宗一郎 100の言葉・ISBNコード ISBN-10: 4800270561ISBN-13: 978-4800270566

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山岡鉄舟

江戸時代末期から明治時代を生きた武士山岡鉄舟は、経済的に豊かであっても志を持っていないと何も楽しい事はないと言葉を残しています。

「義をもってしないならば、富があっても楽しいことはない」・出版年 2008年・出版社 春秋社・著者名 大森 曹玄・著書名 山岡鉄舟・ISBNコード ISBN-10: 4393147103       ISBN-13: 978-4393147108

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寺田寅彦

物理学者であり俳人でもあった寺田寅彦の仕事観は考えさせられます。元々は興味がなかった事でも、目の前に現れたらとりあえずやってみると言う柔軟さがあっても良いのです。

「興味があるからやるというよりは、やるから興味ができる場合がどうも多いようである」・出版年 1963年・出版社 岩波書店・著者名 寺田寅彦・著書名 寺田寅彦随筆集・ISBNコード SBN-10: 4003103718       ISBN-13: 978-4003103715

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吉田秀雄

「電通」の経営者だった吉田秀雄の言葉です。彼の仕事観は有名な「鬼十則」で詳しく知る事ができますが、その「鬼十則」も自信を持つために作られたものだったのでしょう。

「自信を持て。自信がないから君の仕事には迫力も粘りもない。そして厚味すらがない」・出版年 2001年・日新報道・著者名 植田正也・著書名 電通「鬼十則」ー広告の鬼・吉田秀雄からのメッセージ・ISBNコード ISBN-10: 4817405023ISBN-13: 978-4817405029

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楽しんで働こう

今回は世界の仕事観についてご紹介しました。宗教や育った国によって多種多様な仕事観があると知っていただけたでしょうか。

仕事観は様々ですが、ひとつ共通して言えるのは楽しんで働く事がなによりも大切だと言うことです。自分自身が楽しいと思える仕事や働き方を見つけましょう。国や宗教によって違うのですから、個人個人の仕事観があって良いのです。個人の仕事観を尊重でき、なおかつ楽しんで働ける環境をまずは最初の一歩として自分の周りから作っていきましょう。

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