青色申告では申告書Bと所得税青色申告決算書を提出する
「青色申告決算書」とは、青色申告を行う際に必要な書類の一つであり、正式名称を「所得税青色申告決算書」といいます。本稿では個人事業主の青色申告に絞って解説します。
白色申告の確定申告時には申告書Bと収支内訳書だけで済みますが、青色申告の確定申告時には申告書Bと「所得税青色申告決算書」が必要です。
なお、申告書Aは、会社員やアルバイトの方など、所得が給与所得や公的年金その他の雑所得、配当所得、一時所得のみでありかつ「予定納税」のない方が、医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合に利用します。予定納税とは、前年の所得税が15万円以上だった場合に納めることになる前払いの税金です。申告書Bは、事業所得や不動産所得がある方など、所得の種類にかかわらず誰でも使用できる、予定納税額の記入欄がある書式です。
青色申告決算書には4つの種類がある
青色申告決算書には、一般用、農業所得用、不動産所得用、現金主義用の4つの書式がありますが、本稿ではもっとも一般的な、「一般用」の様式による、フリーランスの方々に多い、商品・サービスの販売を中心に解説します。この場合、現金主義用の書式も一般的に使用することはできますが、現金主義にしたがう青色申告では、青色申告特別控除で65万円の控除を受けることができません。「一般用」は「発生主義」によるものであり、発生主義と現金主義の相違などは、別稿の「青色申告特別控除」の稿で解説します。
青色申告決算書は損益計算書と貸借対照表で構成される
青色申告決算書の最初の3頁は損益計算書、4頁目は貸借対照表と製造原価計算表です。これらの書類は、法人の決算書と同じ構成であり、複式簿記を用いて記入します。1頁の損益計算書(P/L、Profit and Loss Statement)は、1年間における事業の収益と費用の状態を表すもので2頁、3頁と4頁の右端にはその内訳を記入します。実際には2頁、3頁と4頁で計算した結果を1頁に記入します。
貸借対照表(B/S、Balance Sheet)は、1年間での事業のの結果としての現預金、売掛金などの「資産」と、買掛金、借入金などの「負債」、それに資本金などの「資本」によって、事業の経営状態を表すための書類です。この構成が、簿記の仕訳の基盤になっています。「資産」の合計金額と「負債」「資本」の合計金額はかならず一致します。
個人事業主の確定申告では、決算期間の1年間は1月1日~12月31日と決められています。税務署への提出期限は3月15日です。
青色申告決算書の用紙はどうやって手に入れるのか
青色申告決算書の用紙は、初年度は税務署にいけばもらえますが、2年目からは12月中旬ころから1月にかけて税務署から送られてきます。また、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
青色申告決算書…頁1:損益計算書の書き方
国税局ホームページの「確定申告に関する手引き等」の頁には、確定申告の手引きが多数掲載されていますが、その中の「33.平成28年分青色申告決算書(一般用)の書き方」を参考にして書き方を紹介します。
簿記の知識のある方には難しくないのでしょうが、簿記の知識のない方々にも少しだけでもご理解いただけるように説明してみます。最初は損益計算書の頁です。
損益計算書は、(1)売上金額、(2)売上原価、(3)経費、(4)各種引当金・準備金等、(5)青色申告特別控の6つのグループで構成されています。
売上金額から売上原価を差し引いた粗利は「差引金額」として表示されています。期首棚卸高と期中仕入額の合計から期末棚卸高を差し引いたものが売上原価です。ここから経費の大半を差し引いた「ほぼ」営業利益が別の「差引金額」として表示され、さらに「各種引当金・準備金等」を差し引いた「ほぼ」経常利益に当たるものが「青色申告特別控除前の所得金額」と表示されます。ここから「青色申告特別控除額」を差し引いた「所得金額」が「課税所得」です。
個人事業者の青色申告の特殊事情
前項で「ほぼ」を連発したのには訳があります。青色申告の場合の科目構成には法人の損益計算書とは少し違う部分があるので、ふつうの費目名ではなく「差引金額」という見出しが多く登場し、それ以降の合計額が厳密には法人の損益計算書の費目と一致しません。個人事業主の青色申告で特殊な事項を説明しておきます。
家事消費等
これは、販売用の商品を、事業主が消費した時に用いる勘定科目です。たとえば、ラーメン屋さんで、店主やその家族が商品であるラーメンを食べるような場合、この客は代金を支払わないのですが、商品の材料は減少します。これが「家事消費等」です。この場合の販売価格は、「仕入原価と販売価格×0.7の高い方の金額」とされています。
家事関連費
自宅で事業を行う個人事業主の光熱費は、事業用なのか家庭用なのかがはっきりしません。このような費用は「家事関連費」と呼ばれ、基本的に経費として認められませが、一定の条件を満たす場合には経費として認められます。
青色事業専従者給与
家族や親族が個人事業者の経営する事業に従事している場合、事業者がこれらの人に給与を支払っても、これらの給与は原則として必要経費にはなりませんが、「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長にあらかじめ提出してある場合のみ、次の条件下で、経費算入が認められています。
(1) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
(2) 個人事業主の営む事業に、年間で6月を超える期間に専業で従事していること。
(3) 届出書に記載の支払方法によって、記載金額の範囲内で支払われ、過大ではないこと。
そのため、青色事業専従者給与については「給与賃金」から抜き出して「各種引当金・準備金等」の中に専従者給与として記載します。
青色申告決算書…頁2:損益計算書明細の書き方
青色申告決算書…頁2は、5つのブロックで構成されており、ここで計算した結果が前頁の損益計算書の項目に記入されています。リストの右に損益計算書の番号を示します。ただし、前項で述べた事情により、「給与賃金」と「専従者給与」は分けて合計します。
(1)月別売上(収入)金額及び仕入金額 → (1)売上金額
(2)給料賃金の内訳 → (20)給料賃金
(3)専従者給与の内訳 → (38)専従者給与
(4)貸倒引当金繰入額の計算 → (39)貸倒引当金
(5)青色申告特別控除額の計算 → (44)青色申告特別控除額
青色申告決算書…頁3:損益計算書明細の書き方
青色申告決算書…頁3は、5つのブロックで構成されており、ここで計算した結果が頁1の損益計算書の項目に記入されています。リストの右に損益計算書の番号を示します。弁護士や税理士などに報酬・料金を支払うときは、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならないので、これも別出しにします。徴収額は貸借対照表の「預り金」に属します。
(1)減価償却費の計算 → (18)減価償却費
(2)利子割引料の内訳 → (22) 利子割引料
(3)地代家賃の内訳 → (23)地代家賃
(4)税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳 → (20)貸借対照表の預り金
なお、最後の「本年中における特殊事情」には、売上や利益が大幅に上下した場合の理由を記述します。税務調査をするかしないかの予備調査と考えていいようです。
減価償却費
減価償却とは、時間が経過すると価値が下がる固定資産の価値を、正しく評価するために行なう作業です。減価償却には、「取得価額」(購入価格)と「耐用年数表」と「法定償却率」が必要です。耐用年数表と法定償却率は建物・機器・備品ごとに決まっていて、毎年資産価値が下がる分を前年の固定資産価額に法定償却率をかけて求めますが、これが「減価償却費」であり、これは毎年経費計上できます。
たとえばサーバー用のパソコン耐用年数は5年、それ以外のパソコン耐用年数は4年です。これらの耐用年数は、「耐用年数表」から確認することができます。
青色申告決算書…頁4:貸借対照表と製造原価表の書き方
青色申告決算書…頁4は、3つのブロックで構成されており、左の資産の部と負債・資本の部が貸借対照表を構成し、右端の製造原価表では、損益計算書の③の売上原価を計算します。資産の部と負債・資本の部の末尾の金額はかならず一致します。