退職金控除とは・控除額の計算方法・勤続年数との関係

雑学

退職金について正しく理解していますか?

退職金という言葉はほとんどの方が聞いた事のある言葉ですが、「退職金控除」となると話が変わってくるのではないでしょうか。退職金を受け取る際にも税金がかかりますが、その計算方法は意外と簡単です。仕組みさえ理解してしまえば自分で手取り額の計算も出来るでしょう。今回はそもそもの話から実際の計算例までを簡単に説明します。

税金の仕組み

そもそもの話にはなりますが、日本では所得税という税金が個人に対して課税される仕組みになっています。その仕組みは10種類の所得によって計算方法が分けられており「退職金」も「退職所得」として区分されています。
所得によって計算は変わりますが基本的には【「収入」-「支出」-「控除額」】の残りに対して何パーセントかの税率が掛けられて所得税額が決まります。

10種類の所得

・給与所得  ⇒  勤務先から受ける給料、賞与などの所得
・退職所得  ⇒  退職により勤務先から受ける退職手当などの所得
・不動産所得  ⇒  土地や建物などの不動産の貸付けなどの所得
・事業所得  ⇒  事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得
・利子所得  ⇒  預貯金や公社債の利子などに係る所得
・配当所得  ⇒  株主や出資者が法人から受ける配当などに係る所得
・譲渡所得  ⇒  土地、建物などの資産を譲渡することによって生ずる所得
・一時所得  ⇒  営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもの
・山林所得  ⇒  山林を伐採して譲渡などに係る所得
・雑所得  ⇒  他の所得のいずれにも該当しない所得

そもそも退職金とは?

退職金と聞いてイメージするのは「定年を迎えて会社から貰えるお金」と捉えているでしょう。しかし、会社によっては退職金規定を設けていない場合もあるので注意が必要です。
中小企業の場合であれば「中退共」等の会社外へ積み立てる仕組みの退職金を採用している場合も多く見られます。中退共であれば退職金の手続きは自分でやらなければいけません。
まずはご自身の退職金について調べておくことが大切です。勤め先の就業規則を確認するとわかります。
当たり前に貰えるものだと考えていると危険です。

一般的な退職金の種類

・会社から支給される退職金  ⇒  会社の就業規則に謳われている内容で支給
・中退共  ⇒  中小企業退職金共済事業本部から過去の積立分に運用率を掛けて支給
・建退共  ⇒  建設現場で働く労働者向けの退職金、共済手帳の証紙により支給
・小規模企業共済  ⇒  事業主向けの退職金、過去の積立分に運用率を掛けて支給

退職金控除ってなに?

退職金控除とは「退職所得」の計算において引く(控除)ことが出来る金額の事をいいます。
「控除」と聞くと普段聞きなれない言葉だと思いますが、簡単に言うと「税金の対象外となる金額」を意味しています。
控除額は所得の種類毎に計算方法が決まっています。一般的なサラリーマンであれば「給与所得」のみとなっていると思いますが税金の計算は会社で行われているのであまり興味のない話でしょう。

控除額の計算方法

退職金控除の計算方法は所得税法で決められています。
計算式としては、
【勤続年数20年以下】 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
【勤続年数20年超】  800万円+70万円×(勤続年数-20年)
となります。

退職金に対しての税率

日本の所得税率は以下のようになっています。

(平成27年分以降)
課税される所得金額        税率         控除額
195万円以下            5%           0円
195万円を超え 330万円以下    10%         97,500円
330万円を超え 695万円以下    20%        427,500円
695万円を超え 900万円以下    23%        636,000円
900万円を超え 1,800万円以下    33%       1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下    40%       2,796,000円
4,000万円超            45%       4,796,000円

累進課税という方式がとられており、所得が高い人ほど税金を多く納める仕組みになっています。退職所得の場合も控除額を引いた後の残りの金額を表に当てはめて計算します。

実際に計算をしてみよう!

実際に例題を計算式に当てはめて計算してみましょう。

《例題1》
勤続年数15年 退職金1,000万円
40万円 ×  15年  = 600万円(控除額)
1,000万円 - 600万円 = 400万円(課税所得)
400万円 ×  20%  - 42.75万円 = 37.25万円

《例題2》
勤続年数40年 退職金3,000万円
800万円 + 70万円 ×(40年-20年) = 2,200万円(控除額)
3,000万円 - 2,200万円 = 800万円(課税所得)
800万円 × 23% - 63.6万円 = 120.4万円

このような計算となります。注意点としては勤続年数の考え方です。勤続年数が10年2カ月であった場合、端数の2カ月は繰り上げになり、勤続年数は11年として計算をします。
また、実際の計算の場合は課税所得が他の所得と合算されるので注意が必要です。

退職金にかかる税金

退職金にかかる税金は所得税だけではありません。住民税も課税されます。国民健康保険料の対象からは外れますが住民税が意外と高いです。市区町村により異なりますが一般的には課税所得に対して10%が住民税として納めなければいけなくなります。

退職金控除は大きい

退職金に対しても税金はかかる仕組みになっていますがほとんどの場合は控除額の範囲内に収まる事が多いようです。計算例で出したような勤続年数15年で1,000万円の退職金が貰えるような大企業であれば別ですがほとんどの場合はそのような金額は支給されないでしょう。退職金控除は他の所得と比べても控除額が大きくなっています。長年勤めあげて最後に貰える退職金が税金でほとんど持っていかれるというのは皆さん面白くないでしょう。日本の税制も人情味が残っているのかもしれません。

退職金を貰うと確定申告が必要?

退職金を貰った方の話を聞くと「今年は確定申告が必要なんだよなー。」とつぶやいている事があります。退職金を貰うと確定申告が必要なのでしょうか?
確かに必要な場合もありますが会社の事務手続きによっては確定申告をしなくてもいい場合があります。

会社の事務レベルによって変わる

退職金を貰う場合に必要な事務手続きとして「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」というものがあります。これは受給者が会社に対して提出をするものなのですが、この事務手続きが会社によっては整備されていない事もあるようです。
この「退職所得の受給に関する申告」は会社が源泉徴収をする際に控除額の計算を行うのに必要な書類です。内容としては控除額の計算に必要な「勤続年数」に関する事と他に退職金を貰った履歴を会社に報告するとゆうような内容になっています。

注意が必要な場合

退職金控除を計算するうえで注意しなければいけない事が「過去4年以内に他にも退職金を受け取っているかどうか」です。過去4年以内に貰っている場合は控除額の計算が変わってきます。勤続年数の考え方が若干変わるのです。
ですが、一般のサラリーマンではあまり気にすることはないかと思います。役員を複数掛け持ちしている方などは注意が必要です。

まとめ

退職金控除の計算については仕組みを理解すると簡単です。そしてほとんどの場合は税金がかからずに退職金を受け取る事が出来ます。
忘れてはいけないのは退職金を受け取る事に対しての感謝の気持ちです。不況の時代が続く中で退職金を支払える企業は少なくなってきていますが、経営者の多くは今までの感謝の気持ちとして「退職金」を支払いたいと話しています。当たり前に貰えるものだと考えてしまうとトラブルの元になってしまうのかもしれません。
今後、企業側は就業規則の見直しが多く行われると思われます。その中に「退職金」に関するルール作りを是非おすすめします。

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