- はじめに
- 1.マイナンバー制度における厳格な本人確認の必要性
- 2.マイナンバーの本人確認の手続き及び必要書類について
- 2.1 マイナンバーの本人確認の基本的な流れ
- 2.2 利用目的の特定と通知、目的が変更となった際の通知
- 2.3 厳格な本人確認手続きと必要書類
- 2.4 取得したマイナンバーを始めとする個人情報の保全と管理、廃棄処理
- 2.5 定期的な検査
- 3.マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:事業主
- 3.1 マイナンバー制度に関する研修会や定期的な社員研修への出席
- 3.2 本人確認の手順に関するマニュアル
- 3.3 個人情報ファイルの管理・廃棄規則
- 3.4 休日の際の副担当者と監督者の選定、社内体制の確立
- 3.5 マイナンバーの本人確認を外部に委託した場合の監督責任
- 3.6 第三者である専門家による定期的な検査や監査
- 4. マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:従業員
- 4.1 基本的な考え
- 4.2 会社にマイナンバーを提供するときの注意事項
- 終わりに
- 参照文献及びサイト一覧
はじめに
2016年末の時点で、マイナンバー(個人番号)の利用は、税金や社会保障、災害復興に限定されています。事業主は、従業員からマイナンバーを確認するにあたり本人確認が必要です。その手続きは、全ての事業主が行うべきものとなっています。各省庁等の本人確認に関する指針やガイドラインに基づき以下の観点につき解説します。
• マイナンバー制度と厳格な本人確認の必要性
• マイナンバーの本人確認と手続き及び必要書類
• マイナンバー制度と本人確認の手続きにおける留意点:事業主
• マイナンバー制度と本人確認の手続きにおける留意点:従業員
1.マイナンバー制度における厳格な本人確認の必要性
2.マイナンバーの本人確認の手続き及び必要書類について
マイナンバー制度は2016年1月から開始され、日本に住所を有する居住者に対し、マイナンバーが通知され或いはマイナンバーカードが発行されています。ほぼ、1年がたちました。
マイナンバー(個人番号)は、税務署に提出される源泉徴収票や、雇用保険・労災保険或いは健康保険・厚生年金等の社会保障関係の書類に記載されるようになりました。
税金や社会保障、災害復興に関する場合でのみマイナンバーが利用されているとはいえ、なりすまし詐欺や不正行為を防止するという観点から、厳格な本人確認が必要です。
2.1 マイナンバーの本人確認の基本的な流れ
マイナンバーの本人確認を従業員に対し行う場合、基本的な流れは以下の通りです。
• 利用目的の特定と通知、目的が変更となった際の通知
• 厳格な本人確認の手続き及び必要書類
• 取得したマイナンバーを始めとする個人情報の保全と管理、廃棄処理
• 定期的な検査や監査
2.2 利用目的の特定と通知、目的が変更となった際の通知
従業員に対し、扶養家族のマイナンバーも含め、なぜマイナンバーが必要となるか、その利用目的を具体的に説明する必要があります。
また、利用目的に変更があった場合には、従業員に対し通知し、説明しなければなりません。
2016年末の時点でいえば、マイナンバーの利用が許されているのは、税金や社会保障或いは災害復興に関連した場合のみとなっています。
法令の趣旨から見て、事業主は、従業員に対し、マイナンバーの記載が必要となる書類、例えば、税務署に提出する源泉徴収票、健康保険や厚生保険に関する書類等を説明書類として用意する必要があります。
例えば、本人宛の源泉徴収票の写しには、マイナンバーは明示されません。従業員からの開示要求があった場合には、通知された目的以外にマイナンバーが利用されていないことを従業員本人に対し、説明できなければいけません。
2.3 厳格な本人確認手続きと必要書類
なりすまし詐欺等の犯罪や不正行為を防止するという観点から、マイナンバーの本人確認は厳格に行う必要があります。
一般的な本人確認の方法は、通常、顔写真が張られIDカードと提示する人物がその所有者本人であることを確認することです。
飛行場でのパスポートコントロールを思い浮かべて頂ければいいかと思います。マイナンバー制度でも同様です。
本人からマイナンバーカードの提供を受ける場合
マイナンバーカードには、氏名、生年月日、性別、住所、個人番号(マイナンバー)が記載され、本人の写真が貼られています。
厳格な本人確認が行われた証左として、本人確認を担当する者は、このマイナンバーの両面をコピーし、従業員の情報と照合します。不一致が無い場合にのみ本人確認ができたことになり、マイナンバーの提供を受けたことになります。
本人からマイナンバーの通知カードの提供を受ける場合
通知カードだけでは、この通知カードを持参した人物が本当にその住所に住む人物か、身元の確認には不足です。プラスアルファーとして、運転免許証のように顔写真、氏名、生年月日、性別、住所が記載されたものが必要です。これらの情報と従業員情報を比較します。本人確認作業はマイナンバーカードの場合と同じです。
本人からマイナンバーカードや通知カードの提供を受けられない場合
マイナンバーの記載がある日付の新しい住民票の写しの提出されば、プラスアルファーとして、運転免許証のように顔写真、氏名、生年月日、性別、住所が記載されたものが必要です。これらの情報と従業員情報を比較し、上述通りのマイナンバーの本人確認作業を行うことが可能です。
マイナンバーカードや通知カードの提供を受けられない場合には、マイナンバーの必要性を従業員に説明し、マイナンバーカードの取得を求めるべきです。また、その経緯を紙に残し、マイナンバー本人確認作業を法令に則り行った証左とすべきです。
従業員本人から扶養家族のマイナンバーの提供を受ける場合
国民保険の第3号被保険者届出の場合、マイナンバーの本人確認は、本来、事業主である会社の義務ですが、従業員にマイナンバーの本人確認を委託した形にし、扶養家族のマイナンバーの提供を受けれます。従業員に対する本人確認も行った上で、従業員の扶養家族情報と比較検証し、扶養家族に関するマイナンバーの提供を受けるべきです。不一致がある場合、理由や対応を紙に残す必要があります。
本人の代理人からマイナンバーの提供を受ける場合
従業員本人がマイナンバーの提供を行えない理由を明確し、紙の形で残す必要があります。
本人からの委任状、本人との代理人の関係、代理人の身元を証明する書類等が必要となり、その真偽を確認する必要があります。その上で従業員のマイナンバーを受けるという手続きとなります。
個人情報ファイルに、こうした作業内容を残すべきです。
2.4 取得したマイナンバーを始めとする個人情報の保全と管理、廃棄処理
マイナンバーの本人確認に関する作業内容は全て紙として残す必要があります。
マイナンバーの本人確認でコピーした必要書類であるマイナンバーカード、マイナンバー通知カード、本人の身元証明書、従業員情報等は、比較検証したチェックマークを残し、確認した日付と場所、担当者氏名を明示の上、監督者にチェックを求めなければなりません。
取得した扶養家族のマイナンバー情報についても、従業員のマイナンバー情報と同様、個人情報ファイルとして保全保管する必要があります。
従業員情報と不一致があった場合、上司と相談の上、対応手続きを従業員に伝える必要があります。当然、経緯につき紙の形で残す必要があります。
マイナンバーカードのコピーや経緯は「個人情報ファイル」として保全保管し、第三者が容易にアクセスできないようにする必要もあります。
マイナンバーが不要になった場合には、速やかに個人情報ファイルを廃棄する必要もあります。
2.5 定期的な検査
マイナンバーの本人確認に関わる一連の作業が法令通り行われていることを担保する為に、社内検査や第三者による外部検査・監査が行われなければなりません。
マイナンバーの本人確認事務を外部に委託することも可能ですが、事業主には監督責任が残ります。委託した業者でのマイナンバーの本人確認事務が法令通り行われていることの詳細として、こうした検査報告書の受理なども検討しなければなりません。
3.マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:事業主
事業主である会社は、マイナンバーの本人確認につき、以下のような社内体制を整えなければなりません。
• マイナンバー制度に関する研修会や定期的な社員研修への出席
• 本人確認の手順に関するマニュアル
• 個人情報ファイルの管理・廃棄規則の配布
• 休日の際の副担当者と監督者の選定等、社内体制の確立
• マイナンバーの本人確認を外部に委託した際の監督責任
• 第三者である専門家による定期的な検査や監査
3.1 マイナンバー制度に関する研修会や定期的な社員研修への出席
マイナンバー制度導入の背景や趣旨、改正のポイントについて従業員である社員の教育活動が必要です。
マイナンバーの利用は、税金や社会保障、災害復興に限定されています。マイナンバーが必要だというだけでは不十分です。具体的に何の為に使うのか、どの書類に記載されるのか等、社員に伝える必要があります。
会社として、マイナンバーの本人確認を担当するスタッフに対し、本人確認の中で行うべきこと、行ってはいけないことを正しく理解できるよう、法令の変更もありますので、定期的に社員研修棟の機会を用意する必要があります。
3.2 本人確認の手順に関するマニュアル
会社として、マイナンバーの本人確認を行う際のマニュアルも整備する必要があります。最低でも次項がカバーされるべきです。
• マイナンバーの提示を求める際、社員に対し主旨や目的をどのように正しく伝えるべきか
• どの書類の提示を受ければ、マイナンバーと社員本人自身であることの本人確認となるか
• マイナンバーカードの氏名や住所と社員の氏名や住所との間で差異があった場合どのように対応すべきか
• 本人確認を正しく行ったことの証明として何をコピーすべきか
• マイナンバーの提示を受けられないときの対応とその経緯を紙としてどのように残すべきか
• 必要書類を添付し担当印を押した後、誰から検印を受け、どのようにファイルするか
• 個人情報ファイルの管理や廃棄はどのようにすべきか
3.3 個人情報ファイルの管理・廃棄規則
個人情報の管理として、マイナンバーの本人確認の際に取得した個人情報は厳密に保管・保護される必要があります。個人情報ファイルの管理・廃棄規則の設定が必要となります。
• 個人情報ファイルはどうキープされるべきか
• どこに保管されるべきか
• 施錠の必要はあるか
• 誰がファイルにアクセスできるか
• 廃棄のタイミングはどうあるべきか
• 検査結果は、マネージメントに報告され、不備があった場合、迅速かつ適切な対応がとられているか
3.4 休日の際の副担当者と監督者の選定、社内体制の確立
マイナンバーの本人確認を行う上で、社内にしっかりとした体制が必要です。
体制図だけでなく、マイナンバーの本人確認を法令通り実施するには、担当するスタッフや上司だけでなく、全社員が同制度を正しく理解する必要があります。同制度に関する社内研修も検討すべきです。
3.5 マイナンバーの本人確認を外部に委託した場合の監督責任
マイナンバーの本人確認を外部に委託することは可能です。但し、その場合でも、その事務が正しく行われていることに対する監督責任は会社に残ります。委託先がマイナンバーの本人確認を法令通り行っている旨の第三者である専門家による検査報告を受けるべきか等、検討する必要があります。
3.6 第三者である専門家による定期的な検査や監査
内部で行うにしろ、外部に委託するにしろ、内部検査や第三者である専門家による定期的な外部検査・監査を通して、マイナンバーの本人確認に関わる事務手続きや個人情報ファイルの管理が法令通り行われていること、不備があった場合の対応が迅速に行われていることについて、社内体制の整備を図る必要があります。
4. マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:従業員
それでは、最後に必要書類に関する留意点を確認しましょう。
4.1 基本的な考え
従業員である社員は、たとえ現時点では税金や社会保険料を支払い続けているだけであっても、将来、何等かの補助や失業保険・労災保険を受ける立場に立たされる可能性があります。これらの受給資格を証明するには、本人のマイナンバーが記載された形で税金や社会保険料の支払いがなされる必要があります。
社員として、マイナンバーの本人確認の目的や主旨を理解し、スムーズなマイナンバーの本人確認が行われるよう配慮すべきでしょう。
4.2 会社にマイナンバーを提供するときの注意事項
サラリーマンを続けている間も、転勤や個人的な理由で引越することもあります。婚姻により氏名が変更する場合もあります。当然人事部に対し、住所変更や氏名変更の届け出が必要となります。同時に、マイナンバーカードの再発行を受け、マイナンバーの本人確認の担当者に更新内容を提示し、会社が提出している書類や個人情報ファイルのアップデートが必要となるケースがあるかもしれません。
どのような手続きを踏むべきか、会社側と確認をとる必要があります。
終わりに
マイナンバーの利用は、2016年末の時点では、税金や社会保障、災害復興に限定されています。然しながら、今後、法令の変更を通じてマイナンバーの利用が拡大されることも十分に予想できます。なりすまし詐欺や不正行為を防止する上で、厳格な本人確認が如何に必要か理解すべきです。この点につき、事業主である会社だけでなく、従業員である社員や、会社から何等かの形で報酬を受けているコンサルタントやパート社員も、マイナンバー制度と本人確認の手続きや必要書類につき十分な理解が必要です。
参照文献及びサイト一覧
国税庁:https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/kakunin.pdf
個人情報保護委員会:http://www.ppc.go.jp/legal/policy/
厚生省:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000117030.pdf
マイナンバー促進協議会:https://www.mynumber.or.jp/basic/mynumber-g/schedule-503