給与所得・退職所得の源泉徴収票に記載するマイナンバーの扱い

雑学

源泉徴収票とマイナンバー

平成28年1月より、マイナンバー(個人番号)制度が税金や社会保障、災害復興に限定された形で開始されました。このマイナンバー制度の開始に合わせ、平成28年分から、源泉徴収票の様式も変更され、マイナンバーが記載されています。どのような形でマイナンバーが記載されているか、国税庁のHPの情報をベースに以下の観点から解説します。

1. 源泉徴収票の種類と概要
2. マイナンバー記載に関する基本的な考え方
3. マイナンバーと給与所得の源泉徴収票
4. マイナンバーと退職所得の源泉徴収票
5. マイナンバーと公的年金等の源泉徴収票
6. 源泉徴収票に記載されるマイナンバーの取得手続き

1. 源泉徴収票の種類と概要

源泉徴収票の種類ですが、次の3種類があります。
• 給与所得
• 退職所得
• 公的年金等

税務署への提出用と本人への交付用(写し)の2通が作成されます。

1.1 給与所得の源泉徴収票の概要

1月1日から12月31日までに支払われた給与等の支払金額の総額(いわゆる一般的なサラリーマンにとっての年収)と所得税及び源泉徴収税額が記載されています。
サラリーマンの場合、給与等の支払者である会社が年末調整を行いますが、扶養親族の氏名や年間の社会保険料額等も記載されます。
1通は税務署に提出されます。(市町村に提出する書類としては、給与支払報告書と呼ばれています。)
1通は、本人への写しとして、翌年の1月31日まで(年の中途で退職した者については退職日から1か月以内)に交付される必要があります。

1.2 退職所得の源泉徴収票の概要

退職手当等の支払金額や所得税の源泉徴収税額が記載されています。
1通は税務署に提出されます。(市町村に提出する書類としては、特別徴収票と呼ばれています。)
1通は、本人への写しとして、退職日から1か月以内に交付される必要があります。

1.3 公的年金等の源泉徴収票の概要

1月1日から12月31日までに支払われた公的年金等の支払金額や所得税の源泉徴収税額が記載されています。
1通は税務署に提出されます。
1通は、本人への写しとして、翌年の1月31日までに交付される必要があります。

2.マイナンバー記載に関する基本的な考え方

源泉徴収票として、税務署に提出されるものか、それとも本人への写しとして交付されるものかによってマイナンバーの記載の考え方が異なります。
以下、会社の法人番号も含め解説します。

2.1 税務署へ提出される源泉徴収票

マイナンバーとして、以下のように記載されます。
• 支払い者:法人番号
• 支払いを受ける者:本人のマイナンバー(個人番号)
• 支払いを受ける者の扶養家族等の控除対象者が記載されている場合:扶養家族等の控除対象者のマイナンバー(個人番号)

2.2 本人へ交付される源泉徴収票の写し

本人や扶養家族の氏名は記載されても、そのマイナンバー(個人番号)は記載されません。
「本人への写しにマイナンバーの記載があれば、会社が税務署に提出している源泉徴収票に正しいマイナンバーが記載されているか、間違っていないかどうか容易にチェックができるのに、なぜマイナンバーを記載しないのか?」という疑問がおきます。

ローンやカードローンの申請の際、収入を証明するものとして源泉徴収票が利用されています。
もし、本人への源泉徴収票の写しに本人や扶養家族のマイナンバーが記載されているとしたら、容易に赤の他人にマイナンバーが知られることになります。最悪の場合、なりすまし詐欺に悪用され、被害を被るケースもあります。
このように考えてみると、本人への写しにはマイナンバーを記載すべきではないと言えます。

3.マイナンバーと給与所得の源泉徴収票

3.1 税務署に提出される源泉徴収票

マイナンバーとして、以下のように記載されています。
• 支払い者:法人番号
• 支払いを受ける者:本人のマイナンバー(個人番号)
• 支払いを受ける者の扶養家族等の控除対象者が記載されている場合:扶養家族等の控除対象者のマイナンバー(個人番号)

3.2 本人に交付される源泉徴収票(写し)

個人番号や法人番号のマイナンバーの記載はありません。

4.マイナンバーと退職所得の源泉徴収票

4.1 税務署に提出される源泉徴収票

マイナンバーとして、以下のように記載されています。
• 支払い者:法人番号
• 支払いを受ける者:本人のマイナンバー(個人番号)
注:扶養家族の数は記載されていますが、扶養家族のマイナンバーは記載されていません。

4.2 本人に交付される源泉徴収票(写し)

個人番号や法人番号のマイナンバーの記載はありません。

5.マイナンバーと公的年金等の源泉徴収票

5.1 税務署に提出される源泉徴収票

マイナンバーとして、以下のように記載されています。
• 支払い者:法人番号
• 支払いを受ける者:本人のマイナンバー(個人番号)
• 支払いを受ける者の扶養家族等の控除対象者が記載されている場合:扶養家族等の控除対象者のマイナンバー(個人番号)

5.2 本人に交付される源泉徴収票(写し)

個人番号のマイナンバーの記載はありません。
但し、法人番号の記載はあります。

6.源泉徴収票に記載されるマイナンバーの取得手続き

平成28年分から源泉徴収票にマイナンバーが記載されています。
正しいマイナンバーの提供を受けるには、厳格な本人確認の手続き及び必要書類が必要となります。
会社側の対応例と社員側の対応例について、以下、概要と留意点を解説します。

6.1 マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:会社側の対応例

源泉徴収票に記載する社員やその扶養家族のマイナンバーを取得する上で、事業主である会社は、厳格なマイナンバーの本人確認を行い、必要書類を入手した上で、従業員である社員からマイナンバーの提供を受ける必要があります。
その為に、以下のような社内体制を整えなければなりません。
i. マイナンバー制度に関する研修会や定期的な社員研修への出席
ii. 本人確認の手順に関するマニュアル
a. マイナンバーカードと従業員情報の比較検証
b. マイナンバー通知カード及び身元を証明する運転免許証と従業員情報の比較検証
c. マイナンバーカードや通知カード以外の場合の対応方法
d. 扶養家族に関するマイナンバーの取得手順
iii. 個人情報ファイルの管理・廃棄規則の配布
iv. 休日の際の副担当者と監督者の選定等、社内体制の確立
v. マイナンバーの本人確認を外部に委託した際の監督責任
vi. 第三者である専門家による定期的な検査や監査

6.2 マイナンバーの本人確認手続き及び必要書類に関する留意点:社員側の対応

社員の側でも、適時、本人や扶養家族のマイナンバーを会社に対し提供するよう配慮すべきです。

サラリーマンを続けている間に、転勤や個人的な理由で引越しを繰り返すもことがあります。婚姻により氏名が変更する場合もあります。子女の誕生等により扶養家族の変更もあり得ます。当然、住所変更や氏名の変更或いは扶養家族の変更に際し、人事部への届け出が必要となります。
同時に、マイナンバーカードの再発行を役所に申請すべきです。
マイナンバーカードが再発行されたら、速やかに、マイナンバーの本人確認を行う担当者に更新内容を提示し、会社が管理している個人情報ファイルだけでなく、税務署に提出している源泉徴収票もアップデートされるよう配慮すべきです。

個人もマイナンバーについて理解しよう!

平成28年1月よりマイナンバー制度が税金や社会保障、災害復興に限定された形で開始されています。マイナンバー制度の開始に伴い、平成28年分から源泉徴収票にも本人及び扶養家族のマイナンバーが記載されています。
正しいマイナンバーが源泉徴収票に記載される為に、会社側の対応として、厳格なマイナンバーの本人確認手続き体制を整える必要があります。
他方、社員側としても、引越しによる住所変更や婚姻による氏名の変更或いは子女の誕生等による扶養家族の変更があった場合には、速やかに、マイナンバーカードの再発行手続きなどを行い、会社側に連絡し、会社が管理している個人情報ファイルや税務署に提出している源泉徴収票へのアップデートが行われるよう配慮すべきです。

マイナンバー制度の運用には、会社だけでなく、本人やその扶養家族も、同制度を正しく理解し、相互に協力していく姿勢が必要です。

参照文献及びサイト一覧

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