年末調整とは?
年末調整とは、給与所得者が毎月の給与から引かれている所得税を年末に精算する仕組みです。所得税は1年間の所得総額によって決まるので、毎月の給与から引かれている額と差が生じます。そこで、年末に所得税額を確定し、過不足を精算するということです。所得税を多く払い過ぎていれば、差額が戻ってきますし、不足していれば追加で所得税を支払うことになります。その際に各個人の事情により、扶養家族がいたり、生命保険料などの支払いがあると、所得税の控除が受けられるようになっています。基本的に会社員であれば、所属する会社へ年末調整書類を提出することにより、控除を受けることができます。
年末調整の配偶者控除とは?
年末調整で受けられる控除の中に、「配偶者控除」というものがあります。では、この「配偶者控除」とは一体どんな内容なのでしょうか。簡単に言えば、配偶者(妻もしくは夫)が専業主婦やパート・アルバイト等で収入がない、もしくは少ない場合に、年末調整で申請することによって、所得税や住民税から控除を受けられる制度です。
配偶者控除を受ける条件とは?
年末調整で配偶者控除を受けるためには、以下の条件が国税庁から提示されています。
1.民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しません)
ここでいう配偶者は婚姻関係にある配偶者です。いわゆる内縁関係の方、
事実婚の方は該当しません。
2.納税者と生計を一にしていること。
「生計を一にしている」とは、必ずしも同居している必要はありません。子供の
就学や親の介護等のために別居している場合でも、生活費や学資金等の送金がさ
れている場合、「生計を一にしている」ということになります。
3.年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
よく、年収103万円以下であれば配偶者控除が受けられるという話を耳にします
が、正確には収入から所得控除等の額を差し引いた合計所得金額を基準として考
えられます。
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない
こと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
個人事業を行っている場合、青色事業専従者給与を必要経費に算入できる場合が
あります。青色事業専従者給与の支給を受けたり、白色事業専従者の対象である
場合、配偶者控除は受けることができなくなります。
配偶者控除の金額は?
配偶者控除の金額は以下の通りです。
1.一般の控除対象配偶者38万円
2.老人控除対象配偶者48万円(その年12月31日現在の年齢が70歳以上の場合)
配偶者が障害者の場合、配偶者控除の他にも障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)を受けることができます。
合計所得金額の計算方法は?
先に示した年末調整で配偶者控除を受けるための合計所得金額の計算方法を説明します。
以下にパターンをいくつか示します。
1.配偶者の年収が103万円以下
:年収-給与所得控除額65万円
103万円-65万円=38万円
2.配偶者が65歳未満で年収が公的年金のみの場合は108万円以下
:年収-公的年金等控除額70万円
108万円-70万円=38万円
3.配偶者が65歳以上で収入が公的年金のみの場合は158万円以下
:収入-公的年金等控除額120万円
158万円-120万円=38万円
年末調整書類の書き方は?(配偶者控除)
年末調整書類の書式はこのようになっています。配偶者控除は書類のA欄を記載することになります。以下に記載時の注意事項をまとめます。
1.配偶者(妻)が控除対象になるかどうか確認する。
先に記載した配偶者控除を受ける条件を満たしていることを確認してください。
2.老人控除対象配偶者又は老人扶養親族の欄
こちらも先に記載しましたが、配偶者の年齢が70歳以上の場合は、これにあたります。
配偶者控除の金額が38万円から48万円にアップするので、この欄に○を記載してください。
3.その年の所得の見積額
見積額なので、見込で大丈夫です。ただし、ここに書く金額は合計所得金額です。
収入から給与所得控除額(最低65万円)を差し引いた金額を記載してください。
4.非居住者である親族
配偶者が同居していない場合は、こちらに○を記載してください。
配偶者特別控除とは?
合計所得金額が38万円を超えてしまった場合はどうなるのでしょう。いわゆる「103万円の壁」と言われるものです。合計所得金額が38万円を超えてしまっている場合、配偶者控除の対象には該当しませんが、「配偶者特別控除」に該当する場合があります。適用条件としては、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ配偶者の合計所得金額が38万円以上76万円未満であることと示されています。配偶者特別控除は、年末調整時の申告書類が配偶者控除と異なるため注意してください。配偶者控除は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、配偶者特別控除は、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」となります。
配偶者特別控除の控除額は?
控除額は配偶者の合計所得金額に応じて変わります。以下を参考にしてください。
配偶者の合計所得金額が38万円以上40万円未満の場合:38万円
40万円以上45万円未満の場合:36万円
45万円以上50万円未満の場合:31万円
50万円以上55万円未満の場合:26万円
55万円以上60万円未満の場合:21万円
60万円以上65万円未満の場合:16万円
65万円以上70万円未満の場合:11万円
70万円以上75万円未満の場合:6万円
75万円以上80万円未満の場合:3万円
76万円以上の場合:0円
年末調整書類の書き方は?(配偶者特別控除)
配偶者特別控除を申請する際の年末調整書類は、配偶者控除の際と異なり、このような書式になっています。こちらの書類の右半分の「◆給与所得者の配偶者特別控除申告書◆」部分を記載します。以下に書き方、注意点をまとめます。
1.配偶者(妻)が対象であるか確認する
先に記載した通り、合計所得金額が38万円以上76万円未満であることが条件です。
2.あなたの本年中の合計所得金額の見積額
あなた自身の1月~12がうtまでの合計所得金額を記入します。
これは合計所得金額が1,000万円を超えるかの確認なので、概算で大丈夫です。
3.「非居住者である配偶者」「生計を一にする事実」
配偶者が同居していない場合は「非居住者である配偶者」欄に○を、同居していないが、
送金等しており同一生計となる場合は、「生計を一にする事実」欄に金額を記載します。
4.配偶者の合計所得金額(見積額)の計算
「給与所得」の行で、「収入金額等」の列には、配偶者の1月~12月の収入見込み合計を記載します。
年末調整の申請は11月~12月初旬に行う場合が多いので、確定額でなく見積額で大丈夫です。
「所得金額」の列には、「収入金額等」に記載した金額から65万円を差し引いた金額を記載します。
「配偶者の合計所得金額(①~⑦の合計額)」欄には、「所得金額」と同額を記載します。
5.配偶者特別控除額の早見表
記載した合計所得金額から、早見表で金額の範囲に該当するところの控除額を確認します。
確認した控除額を「早見表の金額」欄に記載します。
さいごに
今回は年末調整の中で配偶者控除、配偶者特別控除について取り上げました。年末調整では、この他にも、生命保険や地震保険、住宅ローン等、色々な控除を受けることができます。支払った分の税金が還付されるものなので、賢く年末調整を申告して、受けられる恩恵は最大限活用しましょう。