株主総会決議事項(定款の変更)
定款の変更は、重要事項に該当します。したがって出席株主の3分の2の賛成が必要と定められています。
定款には、会社の制度設計に関する内容が多く盛り込まれています。例えば決算を3月とするとか、取締役や監査役の定数、本社所在地、発行可能株式総数、事業の内容、株券の不発行などです。
このため、本社を移転したいときは、あらかじめ株主総会で出席株主の3分の2の賛成を得る必要がありますし、事業の内容に、新規事業を追加するときも出席株主の3分の2の賛成を得る必要があります。取締役の定数を5名から8名に拡大したいときも同様です。
ちなみに、実際の株式上場企業の株主総会では、株主全員が議決権を行使するわけではありません。とくに一般の個人株主のほとんどは議決権を行使しません。ですから、出席株主の比率が60%が割り込む企業が多く存在するのが実情です。このため、上場企業で25%の株式を保有する大株主が、実際には重要事項の拒否権を握っているケースが少なくありません。そして、上場企業の創業者が約30%の株式を保有し続ける目的として、定款変更を必ず成立させることを挙げているケースも少なくないのです。
株主総会決議事項(取締役の選任)
取締役の選任は、普通決議です。出席株主の過半数の賛成で承認を得られます。最低限の定数は3名と法令で定められており、定数については定款で定めています。そして、任期は2年と法令で定められており定款にも明記しますが、企業によっては定款のなかで任期1年と定めている企業も存在します。取締役の任期短縮は、法令で認められています。経営責任の観点から、業務執行を担う取締役に緊張感を与えるのは好ましいというのが法令の趣旨となっています。
また、社外取締役を選任する場合は、株主総会の議案のなかに、あらかじめ「この取締役候補者は会社法に定めた社外取締役候補者であります」という文言を付しておくのが一般的です。大会社の場合は、有価証券報告書を財務局に提出しますが、そのなかの役員一覧表においても社外取締役である旨の注記がされています。
なお、代表取締役の選任は、取締役会で選任されますので株主総会の決議事項ではありません。
株主総会決議事項(監査役の選任)
監査役の選任も普通決議事項です。出席株主の過半数の賛成で決議されます。しかし、監査役の選任議案を株主総会に上程する前に、会社側が監査役全員に対して、監査役の選任議案を提示して監査役の過半数の同意を得ておくことが法令で義務付けられています。つまり、現任の監査役が引退を拒否する場合には、任期満了という理由だけでは監査役を交代させるのは難しいのです。
また、監査役の任期は4年となっており、この期間を短縮することは法令上認められていません。監査役の身分をできるだけ安定させることが法令の目的となっています。監査役の身分は法律によって堅固に守られているため、オーナー経営者にとっては、監査役は手強い存在なのです。
なお、社外監査役を選任する場合は、株主総会の議案のなかに、あらかじめ「この監査役候補者は会社法に定めた社外監査役候補者であります」という文言を付しておくのが一般的です。大会社の場合は、有価証券報告書を財務局に提出しますが、そのなかの役員一覧表においても社外監査役である旨の注記がされています。
株主総会決議事項(会計監査人の選任)
会計監査人の選任は、大会社に義務付けられており、任期は1年と法令で定められています。また、会計監査人の選任議案を株主総会に上程する前に、あらかじめ監査役の過半数から同意を得ておく必要があります。これも法令で義務付けられています。
株主総会決議事項(取締役、監査役、会計監査人の解任)
株主総会では、出席株主の過半数の賛成で、取締役・監査役・会計監査人を解任することができます。したがって、オーナー創業者が50%以上の株式を保有し、社長として経営している企業では、社長が役員の人事権を持っていると言っても過言ではありません。
しかし、実際には株主総会で役員や会計監査人の解任決議案が上程されたケースはほとんどありません。役員や会計監査人を解任するには、正当な理由が必要だからです。
実際の例として、株主総会で賛成多数で解任が承認された事案があります。しかし、解任された役員が、解任される正当な理由がないと主張して、役員の立場への復帰を求める訴訟を提起したことがあります。そして裁判で審理がされた結果、株主総会の決議は無効とされ、解任された役員には会社側から損害賠償金が支払われることで決着しました。
株主総会決議事項(決算の承認)
会社法上、大会社でない場合は、決算は普通決議事項となります。出席株主の過半数の賛成が必要です。また、大会社であっても決算内容について、会計監査人から無限定適性意見を得られないなどの異例の事態が発生した場合には、株主総会での承認が必要となります。
ちなみに、大会社とは決算期末において資本金が5億円以上もしくは負債の合計額が200億円以上とされています。
株主総会決議事項(増資)
一般的な増資、つまり株価が1000円のときに1株あたり1000円で第三者割当増資を実施したいときは、取締役会の決定によって実施することができますが、株主以外の者に対して特に有利な払込金額で発行する場合には、株主総会での決議事項となります。
具体的には株価が1000円のときに、第三者に対して時価200円で増資を実施する場合は、既存株主に対して不利益を与えますので、株主総会の決議が必要です。
また、新株予約権の発行についても有利発行であれば、株主総会の決議が必要です。具体的には、株価が1000円のときに新株予約権の権利行使価格を100円と設定すれば、明らかに新株予約権を割り当てられた人物または企業は利益を得ることができますから、このような事案については既存株主の判断を仰ぐことになります。
株主総会決議事項(合併)
他の企業と合併する案件も、株主総会での決議事項となります。昨年は、石油関係の企業の合併問題が世間を賑わせました。合併ですから、株主にとっては自分が株式を保有している企業が消滅し、他社と合併して新たな新会社となるわけです。当然、合併については株主総会で株主が最終判断をくだすことになります。
株主総会報告事項(決算)
会社法上、大会社の場合は、決算は議長から株主へ報告されます。株式上場企業のほとんどは大会社ですので、上場企業の株主総会では決算は報告事項となっています。
決算の報告については「計算書類の報告」とも言います。計算書類の内容としては、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表および事業報告、さらに附属明細書が含まれます。
報告事項の報告の仕方
株主総会において報告事項とは、とくに大会社の場合は、計算書類の報告のみであるケースがほとんどです。大会社の株主総会では、まず議長を務める社長が演壇に立ち、まず報告事項について読み上げていきます。読み上げる内容は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表および事業報告、さらに附属明細書のポイントの部分を抜粋して15分間くらいは読み上げ続けるケースがほとんどです。
そして、決議事項の採決が終了したあと、監査役のひとりが演壇に立ち「監査役会は本決算の計算書類の内容について同意いたしております」と株主に報告します。これで、計算書類の報告が完了となります。
株主総会について詳しくなろう
以上のように、株主総会の基本から報告までを詳しく解説していきました。少々株主総会では、複雑な事項が用意されている現状ですが、株主総会にて上記記事を参考にしていただければ幸いです。