株主総会の招集通知|文例と期限・手続き省略の方法・添付書類

雑学

株主総会招集の際の通知期限は会社の性質によって変わる

会社法では、株主総会の招集手続きにつき、取締役会設置会社か、取締役会非設置会社かで異なった取扱いをしています。

そもそも、取締役会設置会社とは、取締役が3名以上からなる取締役会が存在し(会社法39条1項、331条4項)、取締役会が代表取締役を選定するという方法がとられる会社のことをいいます(会社法362条2項3号)。

取締役会が存在しますので、株主の規模も相当数にのぼる大規模な会社ということができるでしょう。そのため、上記のとおり、代表取締役の選定は取締役会で行うと会社法上規定されており、株主総会決議で代表取締役を選定したい場合は、例外として、定款にその旨定めない限りすることができないと規定されています。大規模な会社ですので、監査役は原則として設置しなければなりません(327条2項)。他方、取締役会非設置会社とは、取締役が1名でもよく(326条1項)、代表取締役の選定については、株主総会で決めるか、定款で定めるなどの方法によると規定されています(349条3項)。このような規定のされ方からも、取締役会非設置会社は小規模な会社であることがうかがえるでしょう。

会社法では、会社の形態を取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで分けていますが、他にも株式の譲渡制限を定めた会社と、株式の譲渡制限を定めていない会社という分け方もされます。株式の譲渡制限というのは、自身の持っている株式を第三者に譲渡することが制限されている、という意味です。

つまり、公開市場での株式の売り買いができない、ということを意味します。このような、株式の譲渡制限を定めた会社のことを、非公開会社といいます。他方、株式の譲渡制限を定めない会社のことを、公開会社といいます。公開会社は、株主が株式の売り買いを自由にすることができる会社ですので、もちろん株主の人数も多いことになります。反対に、非公開会社は、株主がほとんど入れ替わらないため、株主の人数は別として、誰が株主かは把握しやすいです。

以上の、取締役会設置会社・取締役会非設置会社、公開会社・非公開会社の性質の違いが、株主総会招集の際の通知期限と直接的にかかわってきます。

それぞれの会社の株主総会招集通知期限

取締役会設置会社の場合は、会社が公開会社か非公開会社かで異なります。公開会社における株主総会の招集通知は、総会開催日の「2週間前」までに書面を発送しなければなりません(299条)。他方、非公開会社における株主総会の招集通知は、書面で発送しなければならないことに変わりはありませんが、書面投票または電子投票を定めない場合には、「1週間前まで」に発送すればよいとされています(299条)。

ただし、非公開会社でも、書面投票または電子投票を実施する場合は、原則通り2週間前までに発送しなければなりません。取締役会非設置会社の場合は、取締役会設置会社で非公開会社の場合と同様、「1週間前」までに発送すればよいとされています(299条)。取締役会設置会社で公開会社は、株主の規模が大きいため、早めに招集通知をしておく必要があります。他方、取締役会設置会社で非公開会社と、取締役会非設置会社は、株主の規模が小さいため、株主総会の1週間前に招集通知をすればよいということになります。

株主総会 招集通知の文例

「第○回 株主総会招集ご通知」というタイトルのもと、株主総会を開催する日時・場所・会議の目的を記載します。

また、株主総会当日に出席できない株主もいるので、委任状を同封し、招集通知の紙面上で、「欠席される場合は、同封の委任状を当社あてにご提出ください」と記載しておくのが望ましいです。

「会議の目的」では、営業報告などの報告事項と、議決権を有している株主による決議を要する事項を記載します。
決議事項については、「第1号議案 ○○の件」「第2号議案 ○○の件」「第3号議案 ○○の件」と件名を書いていくのがよいです。もっとも、件名だけではどのようなことについての決議事項か株主は判断できませんので、その際はその概要書類を添付するなどをした方がよいです。
以下は、招集通知の文例になります。

平成○年○月○日株主各位 

東京都○○区○○ ○-○-○ 株式会社 ○○ 代表取締役 ○○

第○回 定時株主総会招集ご通知

拝啓 早春の候、株主の皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

さて、弊社第○回定時株主総会を下記のとおり開催いたしますことをここにご通知いたします。万障お繰り合わせの上、ご出席いただけますようお願い申し上げます。なお、当日ご出席願えない場合は、お手数ながら同封の委任状に必要事項をご記入、押印の上、ご返送くださいますようお願い申し上げます。               敬具

             記

1.日時 平成○年○月○日(○曜日) 午後○時より
2.場所 東京都○○区○○ ○-○-○ ○○ホテル 第○会議室
3.会議の目的事項 

報告事項  第○期営業報告書の報告の件 
決議事項  第1号議案 第Ο期営業報告書の件  
第2号議案 中長期経営方針の件  
第3号議案 取締役任期満了による重任の件  
第4号議案 剰余金の処分の件  
第5号議案 監査役○名選任の件

なお、報告事項および決議事項については、同封の添付書類をご参照ください。                  
           以上

株主総会の招集通知を省略・簡略化する方法

株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく開催することができます(300条)。これは、招集手続きをするにあたっては、招集通知の際の通信費など諸費用がかかってしまい、これらの費用を削減したいと株主が望んだのであれば、その通りにするという意図に基づいたものです。これは、取締役会の設置の有無や公開・非公開会社に関わらず、株式会社であればすることができます。

招集通知の際の添付書類について

上記のとおり、報告事項および決議事項については、添付書類を設けた方がいいでしょう。

報告事項については、資金調達や組織、計算、監査の4つに大別できます。

・資金調達
資金調達については、会社の株式に関する事項や、会社の新株予約権等に関する事項を整理したものを添付するといいでしょう。

・組織
会社の組織については、会社役員に関する事項、会社の会計監査人に関する事項などが想定され、これに関する書類を添付することになるでしょう。

・計算
計算については、連結計算書類、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)があげられます。

・監査
監査については、連結計算書類に係る会計監査報告書、通常の会計監査報告書、監査報告書などがあげられます。

決議事項については、株主の最大の関心である剰余金の配当や、取締役の選任、定款の一部変更などがあります。剰余金の配当では、配当財産の種類、株主に対する配当財産の割り当てに関する事項及びその総額、剰余金の配当が効力を生ずる日を記載する必要があります。

取締役の選任では、取締役候補者の氏名や略歴、会社での地位や取り組みなどを丁寧に書くと株主にも喜ばれます。

定款の一部変更では、現行の定款と変更案とを併記して、どのような理由から変更を提案するかを記載すると株主にも喜ばれるでしょう。

大企業は招集通知の添付資料に力を入れる傾向あり

最近では、大企業は、株主総会招集通知の際の添付書類に力を入れており、高価なパンフレットや雑誌のようなものがよく見られるようになってきました。また、会社の総務課のような部署で作成するのではなく、印刷会社や、株主総会等をサポートする専門会社に外注して作成してもらう会社も多くなっています。

それだけ、企業の重要なステークホルダーである株主に配慮しているという表れでしょう。

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