年収360万円のビジネスパーソンにかかる税金を計算してみよう!
20代の平均年収は354万円。これは、2015年9月~2016年8月の1年間に、dodaエージェントサービスに登録した約27万人のデータを元に、正社員として就業しているビジネスパーソンを対象にした数字です。
ここで注意しなければならないのはこの数字が「総額」ということです。実際には、この数字から会社が税金などを徴収された金額が手取り金額となります。「あれ?私って360万円ももらっていないよね?」そうです。なぜなら、会社が税金や社会保険料を控除しているからです。そういう方におすすめなのは、自分で税金を計算してみることです。
自分で税金額を計算することによって、いかに自分が日本に貢献するかが分かるだけでなく、納税額のプロセスが理解できるからです。
「年収」の本当の意味。「収入」と「所得」の違いとはいったいなにか?
まず、前提をお話しましょう。「収入」と「所得」は同じように使われることがありますが、税法上、全く別の意味と考えましょう。「収入」とは、毎月の給与や賞与などを意味します。これは理解しやすいと思うのですが、意外と理解されていない単語が「所得」です。会社にお勤めの場合、会社から給与をもらう所得は「給与所得」といいます。
「給与所得」とは、「収入」から必要経費を差し引いた金額となります。数式であらわすと、
給与所得=収入―必要経費
となります。会社に勤めるビジネスパーソンの場合の「必要経費」とは何かというと「給与所得控除」というものです。給与所得控除の金額は、年収に応じて決定されます。これを会社に置き換えてかんがえるとわかりやすいかもしれません。ビジネスパーソンを会社の営業活動として考えると、収入が売上、所得が利益という具合になりますね。会社の場合のシンプルな損益計算はこうなります。
利益=売上―経費
そして、ここからがポイントなのですが、税金というのは「収入」ではなく「所得」にかけられるものなのです。つまり、収入がいくら多くても所得が低ければその分収めるべき税金もおさえられるのです。余談ですが、自営業者がレシートを集めて経費を多く計上しようとするのは、課税の対象となる「所得」をなるべく少なくしたいからです。所得を低くすることによって、支払うべき所得税も少なくなるという簡単な論理があるのです。
年収360万円の給与所得ははたしていくらか?
「収入」と「所得」のちがいが分かったところで、実際に年収360万円のビジネスパーソンの「所得」がいくらであるかを考えてみましょう。収入が360万円。そしてそれに対応する必要経費である「給与所得控除」がいくらであるかを把握する必要があります。国税庁のサイトから給与所得控除の一覧を見てみると、180万円超360万円以下の給与所得控除は以下のように定められています。
「収入金額×30%+180,000円」
この計算式にあてはめてみると、「給与所得控除」は以下のようになります。
3,600,000円×30%+180,000円=1,260,000円
ここでさきほどの「所得」を求める計算式である「収入」―「必要経費(給与所得控除)」にあてはめると年収360万円の「給与所得」が算出されます。
3,600,000円(収入)-1,260,000円(給与所得控除)=2,340,000円(給与所得)
つまり、年収360万円のビジネスパーソンの給与所得は約234万円だということがわかりました。所得税ではこの数字がひとつの基礎となって税金が計算されることになります。
年収360万円でも「所得控除」の金額は人によって違う。
以上で述べたように、年収360万円の給与所得者の給与所得は234万円だということが分かりました。それでは、実際にはこの場合、どれくらいの所得税を納めなければならないのでしょうか?その前に一つ重要なポイントがあります。「所得控除」というものです。じつは、この給与所得の234万円に対して課税されるわけではありません。ここが所得税の難しいところではあるのですが、給与所得から「所得控除」と呼ばれる控除が差し引かれて「課税所得」が計算されるのです。
つまり、課税所得を計算するためには以下の計算式となります。
課税所得=収入-必要経費(給与所得控除)-所得控除この「所得控除」にはいろいろな種類の控除があります。
たとえば、誰にでも該当する一律に認められる「基礎控除」というものがあり、これが38万円です。そのほかにも「所得控除」にはいろいろなケースによって認められています。たとえば、結婚して専業主婦がいる場合は「配偶者控除」、生命保険料を支払っている場合は「生命保険料控除」などがあります。このように「所得控除」はその人の状況によって金額が異なりますので、同じ年収360万円のビジネスパーソンでも、「所得控除」がどれくらいなのかは人それぞれなのです。
年収360万円はどれくらいの所得税が必要?
(1)まず「課税所得」を計算してみよう。
人によって「所得控除」の金額が違うのですが、ここで一つの簡単なモデルケースを考えてみましょう。生命保険も加入していない健康な20代の会社員の場合を想定してみましょう。会社員ですので、社会保険料を毎月4万円支払っていると仮定すると年間にして48万円の「社会保険料控除」という所得控除が発生します。単純化して所得控除の合計を「基礎控除」と「社会保険料控除」だけしかないと考えると、所得控除の合計金額はこうなります。
38万円+48万円=86万円
それを先の計算式にあてはめて考えると、以下のようになります。
3,600,000円(収入)-1,260,000円(給与所得控除)-860,000円(所得控除)=1480,000円(課税所得)
この課税所得である148万円に対して税金がかかるのです。
(2)年収360万円の税率は何パーセント?
さて、気になるのは所得税の税率です。所得税は基本的に「累進課税制度」といって、所得が上がれば上がるほど税率が高くなるシステムになっています。
国税庁のホームページから課税所得が195万円以下の場合、税率は最低の税率である5パーセントとなります。これがもし課税所得が195万円超~330万円以下になると税率は10パーセントに跳ね上がります。
(3)年収360万円の所得税は約74,000円!!
この場合のモデルケースでは、課税所得は148万円でした。その場合の所得税率も5パーセントであることが分かりました。
あとは簡単な計算です。
課税所得に所得税率を掛け合わせればいいのです。
148万円×5%=74,000円
つまり、年収360万円のビジネスパーソンの納めるべき所得税は約74,000円です。
これは年間の金額なので月になおすと6,166円ですね。
「住民税」は要注意!年収360万円でも油断大敵です。
これまで所得税について見てみました。しかし、じつは、本当に気にしなければならないのは所得税よりもむしろ住民税です。なぜ住民税に注意しなければならないのでしょうか。一つは、課税されるタイミングです。たとえば、所得税の場合は、2016年の1月から12月に生じた所得に対して2016年の間に課税されます。しかし、住民税の場合は2016年の1月から12月までの期間に発生した所得に対して翌年の2017年の4月~5月に住民税が決定されます。そして、2017年の6月からの1年間でその住民税が課税されます。
つまり、住民税の場合は課税されるタイミングが遅いのです。今年は年収360万円だったけれども、前年の年収が1000万円オーバーだったような人は要注意です。6月からの住民税が一気に跳ね上がるからですね。
年収360万円の住民税はいったいいくらくらい?
住民税については、課税所得を算出するまでは所得税と同じです。ただし、税率が全く違います。年収360万円の所得税率が5パーセントであったのに対して、住民税は約10パーセントなのです。厳密にいうと、住民税は市区町村民税(税率6パーセント)と都道府県民税(税率4パーセント)が所得割として課税され、それに加えて均等割として定額が課税されるのです。所得税とくらべると仕組みは難しいですね。
そこで、あるツールを使って年収360万円の住民税を計算してみましょう。仮に「東京都」で年齢が30歳、社会保険料が年間48万円だと仮定すると、いくらになったでしょうか?
なんと、155,500円にもなるのです。この条件だと、所得税の2倍以上の金額になりますね。もちろん、住民税は住んでいる場所によって税金額が異なってきますが、年収360万円のビジネスパーソンにとっては所得税よりも住民税のほうが高いケースが多いでしょう。だからこそ、住民税には注意する必要があります。
年収360万円では所得税と住民税だけで約23万円も税金がかかる!
このように年収360万円のビジネスパーソンをモデルケースとして考えた場合、支払う税金は所得税と住民税を合わせて約23万円だと算出されました。しかし、これはあくまでも配偶者もいなくて、生命保険料も加入していないなど諸事情を勘案したケースを想定しています。なので、税金額は個人によって金額が異なりますが、それでも年収の約パーセントが税金でもっていかれるのです。
いかがでしょうか。年収360万円でも意外と税金がかかると思われたかもしれません。自分で税金を計算することによって、いかに自分が日本に貢献しているかが分かりますね。しかも、今回は所得税と住民税だけをとりあげましたが、本来は健康保険料や年金などの社会保険料もかかるので、手取り額はもっと低くなります。
経済的に危機感を覚えてしまいそうですが、まずは税金の仕組みを知ることが自立の第一歩です。所得税と住民税の仕組みをぜひ知っておきましょう。