そもそもNISAはどんな制度なのか?
NISAは「少額投資非課税制度」という減税制度です。
・制度を利用できる人・・・・20歳以上の日本国内居住者
・非課税の対象・・・・・・・上場株式。公募株式投資信託などの『配当』『譲渡益』
・非課税投資の上限枠・・・・新規投資で年間100万円が上限・最大500万円まで
・非課税の対象となる期間・・最長5年間(期間終了後、新たな非課税枠に移行可)
・投資可能期間・・・・・・・平成26年から平成35年までの10年間
・口座開設可能数・・・・・・1人につき1口座
NISAのメリットは3つ
1つ目は、1年間の間に新たに購入した株式や投資信託の運用益(配当金・売却益など)が非課税になることです。配当金や売却益の税金は所得税15%、住民税5%と復興所得税0.315%がかかります。
■運用益50,000円の税金は?
所得税 15% ¥7,500-
住民税 5% ¥2,500-
復興所得税 0.315% 157-
税金の合計 ¥10,157-
合計金額の¥10,157-が非課税となります。
2つ目は、NISA口座で取引した株や投資信託の運用益の『確定申告が不要』になることです。NISA口座での運用益は非課税のため確定申告の必要がないのです。確定申告と聞くと、少し面倒な気がします。非課税になるのに確定申告の必要がないのは手間がなくとても便利です。
3つ目は、NISAの制度は10年間、平成35年までです。初年度よりNISAを利用している人は10年間で1,000万円投資した分の運用益が非課税となります。運用益が大きい程、お得になります。
しかしNISA口座にもデメリットはあります
約20%の税金が非課税になるNISA口座ですが、デメリットもあります。NISAのデメリットは3つです。
●1つ目は、NISA口座を作らなければならないことです。
今持っている証券会社の口座を流用することはできません。新たにNISA専用の口座を開設する手続きしなければなりません。これは“非課税の制度を利用するため”ですが、少し面倒です。また、NISA口座を開設する証券会社を検討しなくてはなりません。NISA口座は一人一口座だけしか持てませんので、証券会社ごとにNISA口座を作ることはできません。どこか一つの証券会社にしなくてはなりません。ここも注意が必要です。
●2つ目は、配当金を非課税にする手続きをしなくてはならないことです。
株式や投資信託の配当金を受け取る時、税金は源泉徴収されるのが一般的な方法です。そのため、配当金の受取方法を変更する手続きを行います。「株式比例配当方式」という受取方法です。忘れずに手続きしましょう。
●3つ目は、「損益通算」できないことです。
「損益通算」は、株式や投資信託で資産運用を行っている人なら、「損をしたら税金が返ってくる」大事なことです。株式や投資信託は、常に利益が出るわけではありません。『損』となることもあるのです。損が出た場合は、利益と損失を通算する確定申告をするとその分納めた税金が戻ってきます。しかし、NISA口座で取引をしている分は、NISA口座で“非課税”という恩恵を受けているため、損益通算はできないという仕組みになっています。NISA口座で取引した株や投資信託などの金融商品すべてに確実に利益がでれば問題ありませんが、それはわかりません。「損益通算」ができないことを理解した上でNISA口座での資産運用を行いましょう。
NISA口座の確定申告方法
NISA口座で「株式比例配当方式」を選択して配当金を受け取っている場合は、税金が非課税となるため、『NISA口座分』の確定申告は必要ありません。
しかし、NISA口座でも確定申告が必要な場合があります。配当金受取方法を「配当金受領証方式」や「登録配当金受領口座方式」を選択し、郵便局や銀行口座で配当金を受け取っている場合です。この場合、配当金や譲渡益は課税対象になっています。確定申告を行い、非課税分の税金を取り戻しましょう。
20万円を超える配当金は確定申告が必要なのか?
よく、20万円を超える収入があると確定申告が必要という『20万円の所得』が話題になります。これは、一定の人にあてはまるもので全ての人に適用されることではありませんので注意が必要です。
■20万以下の配当金の場合、『確定申告不要』になる対象者
・サラリーマンなどの給与所得者で所得が2,000万円以下の人
・給与所得を一ヶ所だけからもらっている人
・年末調整されている人
この3つすべてに該当している人は20万円以下の所得なら確定申告が不要となります。
給与を2ヶ所以上からもらっている、年末調整がされていない、給与所得者ではない場合は20万以下の配当金・譲渡益でも確定申告が必要です。
※国税庁ホームページより抜粋
20万円を超える配当金の『確定申告』
配当金が20万円を超えた場合、各口座で確定申告がどうなるかをまとめてみました。
・NISA口座で配当金20万円を超える場合
NISA口座で非課税となっていれば、確定申告不要
・特定口座 源泉徴収有
すでに、源泉徴収で税金を支払っているので確定申告不要
・特定口座 源泉徴収なし
税金が支払われていない為、確定申告必要
・一般口座
税金が支払われていない為、確定申告必要
NISA口座と損益通算
「NISA口座は損益通算ができない」これは、NISA口座分の配当金・譲渡金が非課税でその恩恵を受けているから「損益通算」はできないというものです。NISA口座・その他証券口座で取引をしているケースごと損益通算を考えてみます。
ケース1:NISA口座のみ保有(配当金受取口座は「株式比例配当方式」)
・NISA口座
配当金 4万円・・・NISA口座なので非課税
譲渡益 5万円・・・NISA口座なので非課税
譲渡損 3万円
NISA口座のみの場合は、非課税なので損益通算はありません。
ケース2:NISA口座(配当金受取方法は「株式比例配当方式」)と一般の証券口座保有
・NISA口座
配当金 4万円・・・NISA口座なので非課税
譲渡益 5万円・・・NISA口座なので非課税
譲渡損 3万円
NISA口座は、非課税なので損益通算はありません。
・NISA口座以外の証券口座
配当金 4万円・・・住民税¥2,000- 所得税¥6,126- 合計¥8,126-
譲渡益 5万円・・・住民税¥2,500- 所得税¥7,657- 合計¥10,157-
譲渡損 3万円
配当金・譲渡益には、上記の税金が課税されます。
損益通算した場合は、利益から損益を差し引いた金額の税金を払うことになります。
損益通算後利益額 6万円・・・住民税¥3,000- 所得税¥12,189- 合計¥15,189円
損益通算すると、¥3,094-税金が安くなります。
※NISA口座は、NISA口座内での損益通算とNISA口座以外の口座との損益通算もできません。
NISA口座だからすべての確定申告が不要なわけではない
確定申告」は一年の所得を確定させ、各種控除などの申請を行い、所得税額を確定させる作業です。
NISA口座(配当金受取口座は「株式比例配当方式」)で取引していると、『確定申告は不要です』と証券会社に言われます。これは、NISA口座の配当金・譲渡益に対して『確定申告が不要』を意味しています。なので、『確定申告』そのものが不要になるわけではありません。
下記に該当する人は確定申告を行いましょう。(抜粋)
■申請することで税金が戻ってくる控除
・社会保険料控除・・・年金、社会保険料の掛金を払っている人
・医療費控除・・・・・生計を同一にしている家族を含めて、年間の医療費一定額を超える人
・生命保険控除・・・・医療保険・生命保険・介護保険を支払っている人
■生活の状況が変化した人
・会社を退職して再就職しなかった人
・年末までに家族が増えた人
・住宅を購入した住宅ローンを組んだ人
・災害や盗難にあった人
NISA口座の非課税を有効に活用するために
NISA口座の非課税を有効に活用するためには、NISA口座を開設する時から注意が必要です。また、取引においてもNISA口座のメリットを理解した取引が大事です。
・NISA口座は、一つしか持てないのでどこの証券会社でNISA口座を作るか検討する。
利便性や手数料などを考慮して決めると良いでしょう
・NISA口座を非課税とするために、配当金受取口座を「株式比例配当方式」にする
・NISA口座での購入限度額(年間100万円)・保有限度額(最大500万円まで)を理解し、売買を行う
・NISA口座は損益通算できないので、「損」を出さない取引が重要
・NISA口座の確定申告は不要だけど、その他控除の確定申告は必ず行う
NISA口座は、配当金・運用益にかかる約20%の税金が非課税となるため魅力的です。しかし、非課税になる仕組み・他の税金との関係を理解していないと、非課税の恩恵を受けることができません。NISA口座を開設・運用する時は、NISAをよく理解してから行いましょう。