自営業者の年金はいくら?少ない?保険や免除制度・未納のデメリット

雑学

老後にお金で困りたくない

「高齢者夫婦の世帯支出は、月額約27万円」必要だと言われています。

http://npfa.or.jp/system/about.html

「退職金がない」「もらえる年金額も会社員や公務員に比べて少ない」といわれる自営業者にとって、老後資産形成は頭の痛い問題なのではないでしょうか。
人によっては、「将来もらえるかどうかもわからない年金なら自分で民間の保険に入る」と保険料未納を選択している方もいるかもしれません。
しかし、それで本当に得なのでしょうか?
老後の資産形成を考える上で今の年金制度について知識を深めることは重要なことです。
そこで自営業者が知っておきたい年金制度についてまとめました。

「自営業だと年金が少ない」は本当?

そもそも今の年金制度ってどうなっているの?

年金の構造は3階建てです。 主な年金の種類をみてみましょう。
1階部分には20歳以上のすべての日本国民が加入する国民年金(基礎年金)があり、2階部分には、会社員や公務員が加入する厚生年金があります(被用者保険)。
ここまでは公的年金として国が管理・運営しています。
3階部分には厚生年金基金や確定給付企業年金、企業型確定拠出年金といった企業年金があります。これは公的年金制度を補完し、加入者の年金額の増加をはかることを目的としています。
また、公務員であれば、年金払い退職給付制度が設けられています。こちらは2015年10月にこれまでの「共済年金」が厚生年金に一元化された際に新しく生まれたもので、会社員の企業年金にあたります。

自営業の年金は? いくらもらえるの?

「自営業者がもらえる年金額は少ない」とはよく聞かれる言葉ですが、本当なのでしょうか。
自営業者は厚生年金に加入できません。基礎年金部分の国民年金しか加入していない方も多いのではないでしょうか。国民年金は20歳から60歳までの日本に住むすべての人に加入の義務があります。20歳から60歳までの40年間の保険料すべてを納付した場合、月額6万5000円を受給できる計算となります。
平成27年度の厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、厚生年金受給者の平均月額は14万8000円となっており、ずいぶん少ないことがわかります、
しかも、同報告書によると、国民年金の受給者平均月額は平成27年度末現在で約5万5000円と発表されています。実際にもらっている自営業者の平均年金額は月平均で、すべて保険料を納付した場合に比べて約1万円低いのです。
理由は複数考えられますが、保険料免除制度を利用している人が多いことが考えられます。また、受給開始年齢は65歳なのですが、前倒しで受給しているために月額が低くなっているケースもあります。
こうしたことも「自営業者の年金は少ない」いわれるゆえんだと考えられます。
自営業者の強みは定年制度がないことですので、自分の体が動くかぎり働き続ければいいのですが、いつまでも健康であるとはかぎりません。老後の資産をよりゆとりあるものにするためにはどうすればいいのでしょうか?

自営業者の年金額を増やすには

国民年金基金、農業者年金に加入する

礎年年金を補完する制度として国民年金基金農業者年金などがあります。これは第1号被保険者独自の上乗せ年金制度で、掛金の上限は毎月6万8000円ですが全額所得控除となります。

個人型確定拠出年金に加入する

国民年金基金と並んで検討したいのが確定拠出年金です。国民年金基金同様、掛金の上限は6万8000円です。国民年金基金と併用も可能ですが、上限は6万8000円と共通です。
個人型確定拠出年金は自身の運用によって利回りが異なるのに対して、国民年金基金は確定利回りであったり、保険料の変更の仕方にも違いがありますので注意が必要です。

小規模企業共済に加入する

こちらは自営業者の退職金制度といえるものです。個人事業を廃業した際に共済金として受け取ることができます。掛金の毎月1000円~7万円までの間で選ぶことができるのですが、全額所得控除となります。受取の際に退職所得扱いにすることもできますので、勤続年数に応じて大きな控除が利用できるのも大きなポイントです。掛金の範囲内で貸付も受けられます。

法人なりして厚生年金に加入する

個人事業も法人化することで、厚生年金への加入が可能となります。
遺族への給付が手厚くなるのが大きなメリットですが、法人化することには他にメリットデメリットが数多くあります。それらを比較し慎重に決めるのがよさそうです。

保険料の未納がある場合何に困るの?

自営業者は「もらえるかどうかもわからないし、受給額は少ないし、納付したくない」という方や、「事業の経営状態が悪化して支払いが厳しい」など様々な理由で保険料に未納がある場合、どんなデメリットがあるのでしょうか。
まず、保険料を一切納付しなかった場合は当たり前ですが、40年の納付期間のうち保険料納付済期間が25年に満たない場合も将来年金はまったくもらえません(平成29年8月1日からは10年以上に短縮されました)。
それだけではなく、障害年金や遺族年金を受け取れなくなるかもしれません。
どちらも保険料納付済期間が3分の2に満たない場合や、障害年金だと初診日、遺族年金だと死亡日の前々月までの1年間に保険料の未納がある場合は受給資格がないとされています。
障害年金をもらうほどのケガや病気をした場合、多くの場合働けない状態かと思いますが、自営業者にとって働けないことは死活問題です。働けなければ、その間の収入が途絶えてしまうからです。
年金は老後の資産形成だけが目的ではありません。こうしたデメリットも知っておく必要があります。

保険料を払うのが厳しい場合はどうしたらいいの?

自営業者の年金納付猶予制度と年金免除制度を利用する

そうはいっても、保険料を払いたくても収入が低かったり、病気やケガのせいで十分働けなかったりと様々な理由で払えない場合もあります。
しかし、払えないからとあきらめる必要はありません。納付猶予や年金免除という制度がありますので、そちらを利用しましょう。
納付猶予を受けた場合は、10年以内に追納すれば将来基礎年金を全額受け取ることができますし、免除制度でも、半額は受け取ることができます。基礎年金は死亡するまで生涯支給されます。それだけで十分な老後資産となるとはいえませんが、それでも大変大きな金額です。

年金納付猶予制度と年金免除制度を利用するメリット

最大のメリットはなんといっても猶予期間中や免除期間中に障害を負った場合、障害年金が、死亡した場合は遺族年金が受け取れることです。猶予期間中も免除期間中も申請することで年金受給資格期間として算入されますので、要件を満たせば受け取ることが可能となります。
また、将来の老後資金として生涯受給できるお金です。自分が何歳まで生きるのかわからないなか、すべてのお金を自分で用意するとなると非常に大変です。年金は安定して入ってくる資産として非常に重要なものであるといえそうです。

賢く年金を

自営業者が受け取ることのできる年金額が、会社員や公務員に比べて非常に少ないことからも、年金という面では自営業者にとって非常にケアが薄いといわざるをえません。
老後のお金を考えるならば、国民年金のみに頼るのではなく、国民年基金や個人型確定拠出年金、民間保険の個人年金など国民年金以外の方法もあわせて検討する必要がありそうです。
しかし、年金制度に加入することで、障害年金や遺族年金を受け取る資格が得られます。
万が一、経済状況の悪化などで保険料を支払うことができない場合でも年金納付猶予制度や年金免除制度を利用しましょう。申請を出すことで、老齢年金に加え、障害年金や遺族年金の受給資格が得られます。
自営業であれば定年もありませんので、体が動くかぎり働きつづければ収入を得ることは可能ですが、それでもいつか働けなくなるときがきます。
自営業者老後の生活を実りあるものにするために、年金も含めた自分に合った資産形成をしっかりと検討する必要がありそうです。

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