会計上での「現金主義」とは?|青色申告でのメリットと変更方法

雑学

現金主義とは

現金主義の概要

現金主義とは会計原則のひとつであり、発生主義と対をなすものです。会計概念としての現金主義の概要は、実際にお金の動きがあった場合に帳簿に記入する方法ということになります。

具体的な例としてクレジットカードの取引と支払いで考えてみましょう。クレジットカードで物品を購入した場合、取引が成立したタイミングと実際の引き落とし(金銭の支払い)のタイミングが異なります。この場合、現金主義は実際にお金の動きがあった場合のみを記録するので、取引の成立のタイミングではなく、引き落としのタイミングの方を記録することになります。

より具体的にすると、1月1日にクレジットカードで支払いを行った場合の引き落とし日を翌月2月15日とします。実際にお金が動いたのは2月15日に支払いが行われているので2月15日に支出として記載することになります。現金でその場で購入した場合は実際にその場でお金が動いているわけなので1月1日の支出として計上することになります。

現金主義と発生主義の違い

発生主義とは

発生主義も現金主義同様、会計原則のひとつです。発生主義は現金主義の反対で現金が動いた場合ではなく取引が成立した時点、つまり金銭の動きがなくても収益・支出が派生した時点で収益または費用として計上する方法です。先ほどのクレジットカードの例で説明すると、現金主義が引き落としのタイミングでの経常であったのに対し、発生主義は取引が成立し支出が生まれた時点で計上します。また、それだけではなく引き落とし日も動きが生まれている日になるためそのタイミングでも計上することになります。従って現金でのやり取りがあるかないかの違いで現金主義か発生主義かということが分かれるわけではありません。

収益または費用を発生する出来事が起きたということに着目し判断するかどうかということに違いがあります。そのため、先ほどのように1月1日に現金にて物品を購入した場合、現金主義・発生主義どちらも同様に1月1日の費用として計上することになります。しかし、例えば支払い内容が3ヶ月分の光熱費などであった場合、引き落としは一回であるが支払いは3回にわたって電気ガス水道を使い光熱費を発生されているので各月に費用として計上することになります。

現金主義と発生主義

現金主義会計と発生主義会計の違いとしてはその損益計算の認識の方法が違います。それは先に挙げたように費用や収益を現金の収支が起きた時点で計上するのが現金主義会計であり、現金収支という事実ではなく費用・収益が発生したという認識によって計上する方法を発生主義会計としています。

会計上の現金主義

現金主義による会計の特徴

現金主義による会計では現金収支が発生したという事実に基づいて会計を行うため、収入が収益となり、支出が費用ということになり、お金の動きをわかりやすく捉えることが可能になります。これにより、お金が入った時に収益とし、出ていった場合に費用とするため確実性の高いものになります。また現金的な裏付けがあるため安全性が高くなります。実務的な面からみても、認識がわかりやすいため記帳が容易で人的なミスを減らすことができます。

しかし、固定資産や在庫がある場合、それらを購入した時期に現金主義による会計では全額費用として計上するため、実際の収益力などを把握することが難しくなります。また同様に信用取引などが行われている場合など計上できない物が発生してきます。すべての費用および収益は発生した機関に正しく割り当てられるようにしなければならないため、現行においては現金主義による会計は特別な条件を満たした場合のみしか認められておらず、原則発生主義による会計を行うこととなっています。

発生主義による会計の特徴

発生主義に基づく会計は、取引が生じた時点で記載します。先のクレジットカードの例で言うと購入した時点では実際にはお金の動きはないため未払い金などの形で費用に計上します。その後、翌月の支払日に再度仕訳して計上を行います。発生主義による会計処理は、現金主義会計では記載できない信用取引なども記載できます。また、設備投資や在庫なども一括ではなく期間に合わせて正しく記載できるため、現行の企業においては発生主義が原則となっています。

現金主義による会計が認められるには

現金主義による会計処理は原則認められていません。それは、正確な期間における収益と費用を表すことができないからです。しかし、特定の3つ条件を満たすことで現金主義の会計処理が認められる場合があります。

条件①青色申告であること

青色申告は確定申告の種類のひとつであり、青色申告の他に白色申告があります。その違いを大まかに説明すると青色申告は手間が大きいもので、白色申告は申告の手間がほとんどないということがまず一つです。

二つ目の違いとして青色申告は納税額が少なくて済み、白色申告は節税効果はないため青色申告より納税額が高くなるという違いがあります。現金主義による会計処理を行うためには、白色申告ではなく青色申告を行う必要があります。

条件②小規模事業者であること

現金主義による会計処理を行うための条件の二つ目は小規模事業者であるということです。ここで言う小規模事業者というのは前々年度の合計所得が300万円以下というものになります。ここでいう所得は不動産所得と事業所得の合計金額となります。従って、合計所得が300万円以上の企業は現金主義による会計はできないことになっています。

条件③事前の届け出が必要

現金主義で会計処理を行う条件3つ目は事前に届けを税務署へ提出しているということになります。提出が必要な書類名は「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」です。この書類は適用を受けようとする年の3月15日までに提出する必要性があります。上記3つの条件をすべて満たして初めて現金主義による会計が可能となります。

なかなかすべての企業が満たせる条件ではなく、限られたものとなっています。しかしそれほど規模が大きくない個人事業主の様な場合、比較的満たしやすい条件であり会計処理もわかりやすくなるので選択肢の一つとも言えそうです。

青色申告での現金主義のメリット

記載が比較的容易な点

青色申告は現金主義で会計を行う際の必須条件となっており、現金主義用の青色申告決算書というものがあります。こちらを利用する際場合、他の青色申告の用紙や白色申告の用紙と比較しても記入する項目が少なく確定申告が比較的容易になるというポイントがあります。また帳簿が1冊で事足りるため、用意や記帳がしやすいということもメリットのひとつに挙げられます。

現金主義と発生主義の変更方法

現金主義による確定申告を行う際の注意点

現金主義による確定申告は比較的容易といえますが、いくつかの注意点もあります。それは現金主義による確定申告は小規模事業者しかできないため会社を大きくしようとするタイミングで現金主義から発生主義へと変更する必要性が出てきます。その際には、取引が発生したタイミングを正しく合わせる必要などが出てきてかなり混乱することもあります。そのような場合は、確定申告前に税理士などと一緒に進めていくことが確実とも言えます。

現金主義と発生主義は意味が全く違う

現金主義と発生主義をみてきましたが、どちらが優れているというわけではなく会計処理の方法がまったく違うということが分かります。しかし、現行の会計処理は発生主義が原則となっています。しかし個人事業主にとっては使いやすい現金主義。自身の今の状況とその先のビジョンを見据えて会計の方法も選んでいくことが安定した会計処理につながると言えそうです。また、自分のやり方であくまでも違法でない限りは自由に選ベルので、よく考えた上で現金主義が発生主義を選択してください。

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